【京都】創建以来初の特別拝観を行う西来院(せいらいいん)! 巨大な龍のアートに蘭の庭園がみどころ
これまで長らく非公開を貫いてきた建仁寺の塔頭寺院・西来院(せいらいいん)が令和6年から春・秋の特別拝観を実施することに。蘭が咲き誇る庭園に現代アーティストが奉納した作品の数々を鑑賞できるとあって、多くの人が訪れています。今、京都で注目を集める寺院の魅力をご紹介します。
「令和の大改修」を経て初の特別拝観がスタート
広大な敷地を誇る建仁寺の北側に建つのが、今回ご紹介する西来院です。鎌倉時代に南宋から渡来した禅僧・蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が、建仁寺の住持となった際に創建しました。蘭渓道隆は、日本に禅宗を広めるために来日。鎌倉幕府の執権・北条時頼から厚い信頼を得て、鎌倉・建長寺の開山となりました。令和10年に蘭渓道隆の750年遠忌を向かえることから、令和6年より春・秋の特別拝観を実施することとなりました。
蘭渓道隆750年遠忌にあたり、境内の本堂改修工事並びに、本堂前枯山水庭園、玄関前庭園、中庭の作庭、本堂の天井画や二曲一双の屏風絵が完成。たくさんのアートに囲まれた空間は、若い世代も数多く拝観しています。
特等席で鑑賞も!生まれ変わった3つの庭園
西来院にはこれまで3つの庭園がありましたが、令和の大改修を機に再び作庭。玄関前に広がる庭園は「九華青蓮」(きゅうかしょうれん)と名付けられました。作庭を行ったのは、世界的にも有名な「足立美術館庭園」の作庭を行った中根金作氏の事務所「中根庭園研究所」。緩やかな築山に徳島から移した9つの阿波青石が配され、その様子はさながら蓮の花が開いているようです。
5月頃には、少し赤身を帯びた可憐な蘭の花が咲き、訪れた人の目を楽しませています。ちなみに庭園の植物を集めたのは、世界中を旅してさまざまな植物を収集する「プラントハンター」こと、西畠清順さん。住職を務める雲林院宗碩(そうせき)さんによると、今後は、こちらの庭園に紅葉が美しいカエデを植栽予定とのこと。秋が深まるにつれ、見事な景色を楽しめそうですね。
境内にはこの庭園を座って一望できるスペースが設けられています。静けさに包まれた境内でじっくりと時の流れを感じながら庭を眺めるのも素敵ですね。
特にこちらの椅子席は、ゆったりと腰を下ろして庭園を眺めたい人にとっての「特等席」。時間とともに少しずつ変わる景色を感じながら、ゆっくりと過ごしたいものです。
本堂前庭の枯山水庭園「峨眉乗雲」(がびじょううん)は、蘭渓道隆が修業した中国・峨眉山(がびさん)から運んだ3つの巨石が配され、中根庭園研究所、中根行宏氏、直紀氏により作庭されました。蘭渓道隆坐像が祀られた須弥壇の正面に広がるこちらの庭園は、もしかしたら蘭渓道隆自身が待ち望んでいた故郷・中国の景色なのかもしれませんね。
今回の改修で中庭も一新しました。白砂の庭園に竹が伸びる光景は、他の庭園とは違った趣です。こちらにも蘭の花が植えられ、晩春から初夏にかけて紫色の花々が咲き誇る美しい景色へと変わります。
中庭で存在感を放つこちらの石器は、樂焼の窯元・樂家出身で、彫刻家として活躍する樂雅臣(らく まさおみ)氏の手によるもの。水をたたえた正円の石器が、白砂と竹のシンプルな構成の庭園にモダンな印象を与えてくれます。
「白龍」「唐獅子」「登竜門」。アートにふれる特別な時間
庭園と共に鑑賞したいのが、多くの現代アート作品です。本堂の天井に描かれているのは、世界的に活躍する中国人アーティスト・陳漫(ちぇんまん)さんが手がけた「白龍図」。東西13m、南北6mの巨大な空間に2頭の白龍がにらみをきかす光景は、思わずのけぞってしまうほどの圧倒的な存在感です。
おなじく本堂には、陳満氏が描いた「唐獅子図屏風」も奉納されています。唐獅子とは、中国や日本に伝わる神獣のことで、陳満氏は日本滞在中にこの絵をフリーハンドで描いたのだとか。勇ましさとユーモラスな雰囲気が混じり合ったこちらの作品も必見です。
こちらは、京都が生んだロックな壁画絵師「キーヤン」こと木村英輝さんが描いた「登竜門」。中国では、竜門とよばれる急流を登りきった鯉が龍になるという言い伝えがあり、キーヤンさんは、一双の屏風に阿吽(あうん)の龍を描きました。今にも屏風から飛び出して迫り来るような大迫力の作品を、ぜひ近くで見てください!
これらのアートな作品をモチーフにした御朱印を授かれます。こちらもぜひチェックしましょう!
西来院へのアクセスは?
JR京都駅から西来院へ向かう場合は、市バス206系統または100系統に乗って、「東山安井」で下車、徒歩5分のアクセス。電車を利用する場合は、京阪祇園四条駅で降りて徒歩7分。阪急だと、京都河原町駅から徒歩10分で到着できます。
特別拝観期間については、Instagramでチェックを。現代アートや庭園に囲まれた塔頭寺院で、身も心もリフレッシュしませんか?
■西来院(せいらいいん)
住所:京都市東山区大和大路通四条下ル小松町590
TEL:非公開
拝観期間:令和6年は3月23日~12月26日。令和7年は、1月10日~3月18日の予定
拝観時間:10~17時(法務により時間等変更の場合あり)
拝観料:800円
Photo:鈴木誠一
Text:津曲克彦
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Photo:鈴木誠一
Text:津曲克彦
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