美しい生活道具を探して、奈良・高畑の古民家ギャラリー「空櫁」へ
職人が1点ずつ手作りする箒や刃物、元きこりが作る木のボウルなど。風情ある奈良・高畑(たかばたけ)集落にある「空櫁(そらみつ)」に並ぶのは、使い勝手がよく、凛とした佇まいの日本の手仕事たち。やわらかな陽射しや鳥のさえずりに癒されながら、暮らしをちょっと豊かにしてくれる一品を見つけてみませんか?
のどかな風景に癒される、築90年の一軒家ギャラリー
奈良・春日山の南側にある高畑集落。旧街道が通るのどかで穏やかな空気が流れる地に、日本各地から集めた暮らしの手仕事を紹介するお店「空櫁」があります。
てくてくと坂を上り、細い小道を曲がった奥の奥に佇む、築90年の笹垣のある大きな平屋がお店です。靴を脱いで上がる店内は、晴れた日には大きく窓が開け放たれ、心地よい風が通り抜けます。畳の間もあり、まどろみたくなるほどの気持ち良さ!
店主の五井あすかさんは、元デザイナー。あるとき、職人が作る1本の箒に出合ったことで、毎日の暮らしや生活道具に対する意識ががらりと変わったそうです。
作り手が使いやすさを追求し、フォルムを研ぎ澄まして生まれた道具たちは「はっとするほど美しく、使い手の心を豊かにしてくれる力がある」と五井さんはいいます。
日本各地から選び抜いた「志のある道具」たち
店に並ぶ商品は、どれも五井さん自身が実際に試して、使い心地やデザイン、作り手の想いに賛同したものばかり。「彼らの志や、背景にある物語も伝えたい」と、やわらかで丁寧な接客も印象的です。
神戸で4代続く「多鹿鋏製作所」が手がける家庭用はさみは、切れ味はもちろん、アンティークのような佇まいが魅力(糸・花用4860円ほか)。埼玉の「大矢製作所」の銅のおろし金は、職人がひと目ずつ刃を起こして造っていて、「驚くほどスムーズに野菜がおろせますよ」と太鼓判。
栓抜き、鍋敷き、小箒など、壁にかけて収納しておくだけでも絵になる道具たち。右端は、ほこりをぬぐう力が抜群の羽二重正絹のハタキ(1620円)。
日本各地の陶芸やガラス、木工作家たちのうつわも揃います。艶やかな朱塗り椀は、岩手の女性塗師(ぬし)田代淳さんの「てはじめ椀」。漆初心者も使いやすい価格がうれしい(8640円)。
やさしさがにじみ出る、メイドイン奈良の手仕事
もちろん、地元・奈良に根ざす実直な作り手たちの道具も充実しています。
天然竹の手元、可憐なフォルムが美しい日傘は、4代続いたご近所の傘工房「横田洋傘店」夫妻と空櫁のコラボレーションによるもの。お二人の引退により在庫は限られるそうですが、造りも丁寧なのでぜひ実際にふれてみて。
奈良の茶どころ・月ヶ瀬のお茶は、渋みがなくまろやかな味わいです。「ティーファーム井ノ倉」のかぶせ煎茶やかりがね茶、同じく月ヶ瀬の茶園「久保田農園」のハーブをブレンドした和紅茶など。
吉野「いにま陶房」の”やさしい器”シリーズ。スプーンですくいやすいフォルムで、手が不自由な方や子どもたちにもおすすめだそう。焼きものはほかに、宇陀の尾形アツシさんを扱います。
庭で自然光にかざしたり、畳の上に置いてみたりと、じっくり選んでいると時間が過ぎるのを忘れてしまいそう…。たまにはそんな贅沢な休日もよいものですよね。
text:山口紀子
photo:マツダナオキ
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。