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クラシックな「カフェ八角塔」でレトロ気分! キャンパス内にある文化財カフェ
「カフェ八角塔(かふぇはっかくとう)」は、慶應義塾大学のキャンパス内にある喫茶店。大学関係者でなくても利用できる穴場スポットとして、密かな話題を呼んでいます。歴史的建造物の中という特別なロケーションに重厚なインテリア、そしてこだわりのフード&ドリンクメニューと、三拍子揃ったほかにはない空間。自分だけの秘密にしたくなる、とっておきカフェをご紹介します。
国指定重要文化財の中にあるカフェ!
「カフェ八角塔」があるのは、慶應義塾大学の三田キャンパス内。広大な敷地内には歴史ある建物が点在しています。そのなかでもひときわ目を引く「図書館旧館」は、赤レンガ造りのゴシック様式建築。慶應義塾の創立50年を記念して、明治45年(1912)に竣工しました。
日本を代表する建築家・曾禰達蔵と中條精一郎によって設計され、大学のシンボルとして愛されています。旧字体で書かれた「慶應義塾図書館」の文字が、歴史を物語っています!
建物は関東大震災や第二次世界大戦時の空襲により大きな被害を受けますが、その度に修復されて守られてきたそう。昭和44年(1969)には国の重要文化財に指定され、昭和57年(1982)に新館が開館するまでは現役の図書館として利用されていました。
本館内部にはかつて大閲覧室や書庫、事務室などがあったそう。まるで中世ヨーロッパの教会のような建物で読書ができたなんて、とても贅沢ですね。建物向かって右手には八角塔があり、屋根の頂にあった風向計も以前の写真を元に再現されています。
優雅な空間を楽しみつつ、こだわりコーヒーでひと休み
カフェとして営業しているのは、建物1階の部屋です。図書館としてオープンした当初は雑誌室として使用され、戦後は事務室として使われていたそう。
新館が建設され図書館としての機能が移された後は、建築家・槇文彦により全面的に改装され、展示室として利用されました。
部屋の奥は八角塔につながっていて、現在はイベントスペースや展示スペースとして使われています。
カフェのコンセプトは“ネオクラシック(新古典主義)”。展示室だった当時の、レトロで高級感のある雰囲気を再現しています。天井のシャンデリアや寄木張りの床、壁紙など、細部までこだわった室内装飾が素敵です。
たとえば部屋の中央にある八角形のテーブルは、八角塔にちなんだ特注品。日本初の百貨店で、皇室や国会議事堂の家具も手掛けたという三越製作所が制作したものです。
壁紙のデザインは、オーストリアの建築家・デザイナーであるヨーゼフ・ホフマンによるもの。ホフマンはウィーン工房を主宰し、20世紀はじめのデザイン界を牽引した人物です。
客席のイスはドイツの老舗家具メーカー、トーネット社のビンテージチェア。美しい装飾に囲まれて、優雅なティータイムのスタートです!
「カフェ八角塔」で必ず味わってほしいのが、看板メニューの「コーヒー」800円。オーダーを受けてから、サイフォンで一杯ずつ丁寧に抽出しています。
コーヒー豆は、東京・蔵前にあるコーヒーとチョコレートの名店「蕪木」が、オリジナルでブレンドしたもの。香り高くすっきりとした苦味があり、フルーティな後味へと変化していくのが特徴です。
コーヒーはこの一種類のみというこだわりの味を、ぜひ体験してみてください。コーヒー豆は購入もできるので、気に入ったら自宅でも楽しむことができますよ。
目移りしそう…! 多彩なスイーツ&フードメニュー
コーヒーとともに味わいたいのは、同じく「蕪木」によるオリジナルのサブレ。香り豊かなカカオを贅沢に使用した、高カカオのショコラサブレです。サクッ、ほろっとした食感に濃厚なショコラの香り……コーヒーとのペアリングは抜群です。
季節のクリームソーダや月替わりのスイーツなど限定メニューがあるので、何度訪れても飽きることがありません。
スイーツのほかに軽食メニューもあり、ランチ利用もOKです。おすすめは、キーマカレーの「コルリ」1300円。メニュー名は、福澤諭吉が著書で「Curry(カレー)」を「コルリ」と訳し、 日本で初めて紹介した逸話に由来しています。
国産の豚肉と上州牛の挽肉を12種類のスパイスで炒め、赤ワインでコクと深みを持たせた香り豊かなひと品。ご飯はカレーとの相性を考え、お米マイスターがいる米店から直接仕入れています。
バタートーストやナポリタンなど、喫茶店おなじみのメニューも要チェックです。
カフェタイムのあとは館内を探検してみる!
カフェを含め、図書館旧館の建物内は学生や大学関係者以外も利用可能。カフェタイムを楽しんだあとは、せっかくなので館内を探検しましょう。入り口ホールの奥には2階に続く階段があり、見事なシャンデリアが見どころです。
階段の踊り場には天井に届きそうなほどの大きなステンドグラスも。この作品は図書館旧館の竣工から3年を経た大正4年(1915)に制作されたもので、ステンドグラス作家の小川三知によるもの。
高さ6.45m、幅2.61mの大作です。甲冑を身にまとった武将が白馬から降り、ペンマークをかざした女神を迎える場面を描いたもので、ラテン語で「Calamvs Gladio Fortior(ペンは剣よりも強し)」の文字が刻まれています。
オリジナルは空襲で消失してしまったものの、後に小川三知の助手の大竹龍蔵により復元されました。
かつて大閲覧室として使用されていた2階の部屋は、現在「福澤諭吉記念 慶應義塾史展示館」として公開されています。
慶應義塾の創始者である福澤諭吉の生涯と、慶應義塾の160年の歴史を紹介する歴史博物館となっており、無料で見学が可能。常設展示のほかに企画展示室もあり、年に数回特別展も開催しています。
三田キャンパス内には、図書館旧館以外にも見どころが多数。明治8年(1875)に日本最初の演説会堂として建造された三田演説館、旧島原藩邸黒門を改築して造られた旧東門などがあります。
特に図書館旧館の隣にある東館の階段は、アーチ屋根の向こうに八角塔を望む絶景スポット。キャンパス内を散策して、お気に入りの場所を探してみて!
■カフェ八角塔(かふぇはっかくとう)
住所:東京都港区三田2-15-45 慶應義塾大学三田キャンパス 図書館旧館 1F
TEL:03-5443-0377
営業時間:10~14時(13時30分LO)、15~18時(17時30分LO)
定休日:日曜・祝日、大学指定休
東京には他にも、“レトロかわいい”名建築がたくさん。
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Text:若宮早希
Photo:橋本千尋
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