
レトロな洋館! 隠れ家のような「カフェおきもと」でティータイム
「カフェおきもと」は、東京・国分寺市の住宅街にある隠れ家のようなカフェ。国の登録有形文化財にも指定されているという、歴史ある洋館が素敵です。木立に囲まれたお庭のある建物でのんびり過ごせば、ここが東京だということを忘れてしまいそう!
国登録有形文化財の「沖本家住宅」はレトロな空気感
「カフェおきもと」があるのは、JR国立駅から歩いて10分ほどの閑静な住宅街。階段を上った見晴らしのいい高台にあります。入り口にある木のアーチをくぐると、そこはまるで森の中! 600坪もの広大な敷地に、青々とした竹林や雑木林が広がっています。
木立の中の小道を進んで行くと、木造平屋建ての和館と2階建ての洋館が現れます。まるで絵本の世界に飛び込んだような光景に、ワクワクが止まりません!
カフェとして営業しているのは、アーリーアメリカン様式の洋館です。昭和8年(1933)に貿易商・土井内蔵氏の別荘として建てられました。その後、同郷のよしみで海軍少将の沖本至氏が譲り受け、娘の沖本家姉妹が長年住宅として暮らしていたそうです。隣にある和館は、沖本氏によって来客用に増築されたもの。洋館と和館は渡り廊下でつながっています。
洋館の入り口には、三角屋根のポーチが。ステンドグラスがはめ込まれたかわいいドアをあけて、いざ中へ入ります。
部屋ごとに趣が異なり、何度も通いたくなる!
館内は玄関で靴を脱いで入るようになっており、まるで友人の自宅を訪れているようなくつろいだ雰囲気。いくつかの部屋に分かれており、どの席に通されるかはその日のお楽しみだそう。
一番広い空間は、沖本家がリビングとして使っていたお部屋で、重厚な石造りの暖炉が目を引きます。家具や調度品は、住宅として使われていた時代から受け継がれているものも多いそう。ラジオやストーブ、アンティークのカップ&ソーサーなど、室内はレトロなアイテムの宝庫です。
ちなみにおひとりさまにおすすめなのは、お部屋の角にある1人用の席です。窓際に置かれた小さめのテーブルに、肘掛け付きのゆったりとしたチェア……時間を忘れてのんびり過ごせること請け合いです。
沖本家がかつてダイニングとして使っていた部屋は、大きな窓が印象的な空間。4~6人グループなら、気兼ねすることなく個室のように過ごせそうです。
海軍少将だった沖本氏がかつて使っていた大きなトランクが置かれているなど、沖本家の私物が大切に引き継がれています。
2階のお部屋には窓際のカウンター席があり、敷地内の緑を望みます。季節の草花や紅葉など、時期によって異なる景色が楽しめます。時折、鳥のさえずりも聞こえてきて、まるで森の中の別荘を訪れたような気分に!
野菜たっぷりの手作りランチがおすすめ
フードメニューは、野菜をふんだんに取り入れた手作り料理。カレーやパスタ、ドリアなど、ボリューム満点の欧風料理が揃っています。
おすすめは、「焼きハンバーグのサラダプレート」1800円。タマネギの甘みが凝縮された手作りのシャリアピンソース、国分寺産の古代米ともち米を混ぜたご飯など、細部にまでこだわりが光ります。
14時以降のティータイムなら、季節のフルーツがたっぷりのった「フレンチトースト」1280円(1枚)をぜひ。特製アパレイユソースに漬け込んだバゲットを、バターで香り豊かに焼き上げています。焼きたてアツアツのフレンチトーストをバニラアイスとともに楽しみましょう。
人から人へと引き継がれる、ストーリーのある建物
「カフェおきもと」では、音楽鑑賞会やワークショップなどのイベントも不定期で開催。イベント時は、普段非公開の和館の内部が公開されることもあるので要チェックです。
和館は入母屋造りの木造建築で、洋館のダイニングから渡り廊下でつながっています。来客用の離れとして造られたため独立した玄関はなく、代わりにガラス張りの大きなサンルームが。陽射しがたっぷり入る心地よい空間になっています。
和館内部の壁には、第二次世界大戦時に米軍の戦闘機から受けた、機関銃の弾丸の跡が残されています。洋館も和館も、ほとんど当時の姿のまま保存されており、昭和初期の貴重な建築遺産として国の登録有形文化財に指定されています。
この建物をかつての所有者である沖本家から引き継いだのは、「カフェおきもと」の店主・久保愛美さん。実は久保さんは沖本家の親族ではなく、沖本家の隣に引っ越してきた“お隣さん”だったのだそう。
沖本家と家族のように親しく交流していた久保さんは、建物を引き継いでほしいという姉妹の希望を叶える形で相続することを決めました。相続には複雑な手続きや建物の修繕などさまざまな課題があったものの、生前「この家でカフェを開きたい」と話していた姉妹の夢を叶えるべく、イチから飲食業を学んで開業までこぎつけたそう。
そんなストーリーがあったからこそ、建物自体も内部の調度品もほとんど往時の姿のまま。持ち主の思い出を引き継いだ、どこか懐かしさを覚える空間です。
現在は多くの人が訪れる憩いの場となっているため、利用の際は予約がおすすめ。前日までに電話で席の予約が可能です(80分制)。
金・土曜日限定で夜も営業しており、コース料理のディナー(5200円+サービス料10%・完全予約制)を提供しています。お祝いなどハレの日に利用すれば、特別な時間が過ごせること間違いなし。レトロな空間で、非日常感を味わってみてはいかがでしょうか?
■カフェおきもと
住所:東京都国分寺市内藤2-43-9
TEL:042-572-1234
営業時間:11~17時(金・土曜は18時~20時30分も営業 ※夜は完全予約制)
定休日:火・水・木曜
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Text:若宮早希
Photo:古根可南子、カフェおきもと
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