
【おとなのソロ部】新宿御苑「GRIN」で緑を望みつつピザとワインを味わうひとり時間
新宿駅周辺の喧騒から離れ、歩いて数分。新宿御苑を目の前に臨むイタリアンレストラン「GRIN(ぐりん)」では、2022年に惜しまれつつ閉店した「エンボカ」のレシピを継承したピザを味わうことができます。ピザといえばみんなでワイワイ食べるイメージもありますが、特別感のある「GRIN」のピザは、“味わう”ことにぜひ集中したい逸品。だからこそ、ひとりで訪れたい場所です。
大きな窓から新宿御苑を望む、モダンナチュラルな空間
東京メトロ新宿御苑駅から、歩いて1分ほど。新宿御苑を目の前に眺められる気持ちのいいロケーションに「GRIN」はあります。立地にこだわり、4年ぐらい時間をかけて見つかったのが、ここ新宿御苑をフロントに望める場所だったそう。大きな窓から中の様子を見ることができる、入りやすい外観。店内へ入ると、モダンで落ち着いた雰囲気です。
店名の「GRIN」は、英語のスラングで「思わずニヤリと笑ってしまう」という意味。思わず微笑んでしまうようなおいしい料理を味わってほしいという思いと、目の前にグリーンが眺められることから名付けられたそうです。
店の内装は、人気の飲食店やホテルなどの空間デザインを数多く手がける設計事務所「SAWS inc.」によるもの。もとは駐車場であったという物件の無機質な魅力を生かしつつも、木の温もりを感じられるモダンな空間に仕上がりました。身を置いているだけで心地よく、気持ちがおだやかに。平日は夜のみの営業ですが、土・日曜、祝日はランチタイムの営業もしています。
店内に入るとまず目に入るのが、キッチンをぐるりと囲む大きなカウンター。使われないものをかき集めて置いているという椅子はデザインがバラバラで、それぞれが個性的。画一的ではなくともひとつひとつのデザインにこだわりがあるからこそ、こんなに落ち着く空間になるのだと納得です。インテリアや建築が好きな人にとっては、こういった細部にこだわったインテリアも見逃せません。
また、カウンターとテーブルの高さをあえて同じにしているというこだわりも。それにより、テーブル席からもピザを焼いている様子を見ることができます。
大きな窓から眺める新宿御苑の景色は、まるで絵画のよう。取材当日は、しとしとと雨が降り続き、しばらくすると雪に変わりました。春の季節は桜、秋の季節は紅葉というように四季折々の姿を見ることができ、季節が変わるたびに訪れる楽しさもあります。時間帯によっても雰囲気が変わり、ディナータイムには店内にキャンドルのやさしい光が灯ります。
さりげなく置かれたキッチンツールや器にも細やかなこだわりやデザイン性があり、店内の整然とした雰囲気を作り出しています。
ひとり客に人気なのが、入り口に近いカウンターの角席。大きな窓からは新宿御苑のグリーンを眺められ、キッチン奥にあるピザ窯の様子もばっちりと見ることができます。ひとり利用の際にこの席が空いていれば、ぜひ。じっくりとワインを飲みつつピザを味わう、最高のひとり時間が過ごせます。
キッチン奥にある大きなピザ窯の炎は、まるで暖炉のよう。取材当日はどんよりとした雨模様でしたが、窓に反射するピザ窯の炎のゆらぎを見ることができて、逆に「雨の日に来てよかった」と思えるほどの雰囲気のよさでした。
カウンターでピザが焼き上がるまでをライブ感覚で楽しむ
惜しまれつつ閉店した代々木上原のピッツェリア「エンボカ」のピザレシピを継承するのは、シェフ・佐々木幸治(ささきこうじ)さん。
カウンターから一望できるキッチンでは、シェフが手際よくピザを作っている様子をライブで見ることができます。ひとりだからこそ集中してピザができる様子を眺められそうです。
ピザ生地は、オーダーが入ってから手早くこねられます。「GRIN」のピザの特徴は、モチモチともサクサクとも言いがたいちょうどいい軽やかな新食感。この食感は、ピザ生地にできるだけ必要な空気を残しつつこねているからだとか。国産小麦の粉を使用し、「エンボカ」のレシピの配合をそのまま継承しています。発酵の際は外気の温度や湿度の影響を受けやすいため、その都度塩梅を見つつ調整をし、提供時に一番おいしい状態になるようにこだわっているそうです。
今回オーダーしたのは、人気の「マルゲリータとしいたけのハーフ&ハーフ」2800円。定番のピザ「マルゲリータ」「クワトロフォルマッジ」「しいたけ」と季節限定のもので常時6種類ほどあるピザは、ハーフ&ハーフでのオーダーも可能。ひとりでも2種類の味を楽しめるとあって、飽きずに食べ進められそうです。
料理に合わせたナチュールワインや国内のクラフトビールなども豊富に取り揃えていて、新宿ゴールデン街でレモンサワーやシロップを販売している「OPEN BOOK(おーぷん ぶっく)」とコラボレーションしたレモンチェッロで作るレモンサワーも人気。ピザ生地にたっぷりと具がのっていく様子を見ながら、好きなお酒を味わうひとときに酔いしれて。
シェフが手際よくピザを焼く姿には、思わず見入ってしまいます。まるでエンターテイメントのよう! 500℃ほどのピザ釜で一気に火を入れ、2分もせずに焼き上がります。
ピザが焼ける香ばしい香りに包まれながら、暮れゆく公園の緑を眺めます。店内のBGMに流れるのは、「GRIN」店内の雰囲気に合わせて作られたプレイリスト。2000年代のUKロックの日もあれば、ジャズの日もあれば、民族音楽の日もあれば……と、その日によってさまざまだそうです。目で、耳で、鼻で。ひとりで訪れるからこそ五感を研ぎ澄ませ、店にいる雰囲気そのものを楽しむことができます。
ゆったりとお酒をいただいている間に、ピザが焼き上がりました!
鮮度が命! ジューシーなピザのうま味をゆっくりと堪能
今回いただく食事ピザは「マルゲリータとしいたけのハーフ&ハーフ」。たっぷりと具材がのっています。ふわふわとした具材がおいしそう。ボリュームがありそうですが、軽さのあるピザ生地なのでひとりでもぺろりと食べられるとのこと。早速、いただきます!
まずは「マルゲリータ」から。チーズのうま味とトマトの酸味。薄くて軽いのにもっちりした生地で、中身はサクサクです! 使われているモッツァレラチーズは、鹿児島県鹿屋市のチーズブランド「コトブキチーズ」。
次に「しいたけ」。「しいたけ」のピザで使われているシイタケは、徳島県上勝町(かみかつちょう)から直送されたものだそう。ピザのベースには、発酵したマイタケをペースト状にしたものが塗り込まれています。塩などで味付けはせず、シイタケ、チーズ、オリーブオイルのみを使用。素材の味を生かした味わいです。
見るからに肉厚なシイタケは、口にいれるとうま味たっぷり。もちもちとした具材とサクサクのピザ生地は相性抜群です。チーズとの黄金の組み合わせを、ワインで流し込む……。幸せなひとり時間です。
「GRIN」のもう一つの推しピザが、こちらの「デザートピザ」。季節のフルーツがふんだんにのせられています(フルーツ変更は不定期)。食事系のピザと同じ生地を使っていますが、耳の部分が分厚くなりすぎないように成形されているというこだわり。食事系のピザがなるべく温度の高いところで一気に焼き上げられるのに対し、ピザ窯の中の温度が低めの場所でゆっくりと焼き上げられるのがデザートピザ。そうすることで、フルーツのジューシーさを残しています。
ベースにはヨーグルトとハチミツを混ぜ合わせたものが塗られ、まわりには細かい粉砂糖がかけられています。生ハムとフルーツがのっているピザなどは見かけますが、ここまで潔くデザートのピザというのは珍しい! デザートなのに、甘すぎない。大人な味です。
イチゴの甘酸っぱさとピザの薄い生地が絶妙なハーモニーを奏でる「イチゴ」と、酸味がフレッシュに口のなかに広がる「オレンジ」。2種類を一度に味わえるって、やっぱりこのうえない幸せです。みずみずしいフルーツとクリスピーなピザ生地の対比がたまりません。温かいフルーツって、おいしい。やみつきになりそうです。
「GRIN」では、ナチュールワインも豊富に取り揃えています。店内奥にあるワインセラーには、常に80種類ほどを常備。ボトルワインを注文する場合は、ここに入ってエチケットを見つつ選ぶこともできるそうです。
気の利いたお酒が多く、食べ物とのペアリングを楽しめるのも「GRIN」の魅力。何を飲んでいいか分からないという場合は、スタッフに気軽に相談してみてください。
今回ピザに合わせて用意してもらったのは、こちらの2種類のナチュールワイン。食事ピザと合わせるのは、ライチのような華やかな香りのするオレンジワイン「シャルルフレイ マゼラシシオン」。デザートとピザと合わせるのは、洗練された印象の白ワイン「リキッドロックンロール」です。
じっくりと「GRIN」のピザを堪能することができ、大満足! これもひとりだからこそ。できれば食事系のピザとデザートピザ、両方味わえるとうれしいですが、お腹にも限界が……。ナチュールワインとデザートピザのペアリングを楽しみに、別日にまた訪れるのもいいですね。外の景色も訪れるたびに違う風情を楽しめるので、それもまた楽しみです。
ピザ以外のメニューも気になるところ。一品料理であればひとり分のポーションとして出してくれる場合もあるそうなので、気になるものがあればぜひ相談してみて。
新宿御苑のゆるやかな空気が大きな窓を通じて伝わってくる店内に、お墨付きのピザ。ゆっくりできるひとりの時間に、ぜひ訪れたいお店です。
■GRIN(ぐりん)
住所:東京都新宿区新宿1-6-3 新宿御苑フロント1F
TEL:050-1807-1260
営業時間:17~22時(21時LO)※土・日曜、祝日は11時30分~15時(14時LO)、17~22時(21時LO)
定休日:水曜、第1・第2火曜
■おすすめの利用シーン:おいしいピザを心からゆっくり味わいたいとき、おいしいワインを堪能したいとき、自然感じるカフェでおだやかに過ごしたいとき
Text:松崎愛香
Photo:斉藤純平
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