
「瀬戸内国際芸術祭2025」春会期の注目アートはコレ! 人気の常設アートも合わせてご紹介
今や世界中から約100万人が訪れる、現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。2010年に始まり、3年ごとに開催、6回目を迎える今年は過去最大の17会場で開かれます。春夏秋の3シーズンにわかれ、春会期は2025年4月18日(金)~5月25日(日)。春会期でぜひ訪れてほしい注目の「瀬戸大橋エリア」を中心に、世界的に有名な作品が集まるアート島の元祖・直島や、2025年5月末に開館する「直島新美術館」の情報も合わせてご紹介します。
Summary
【瀬戸大橋エリア(瀬居島)】「瀬戸内国際芸術祭2025」春会期の注目のエリアへ
「瀬戸内国際芸術祭2025」で春会期(2025年4月18日~5月25日)に行くなら、瀬戸大橋エリア・瀬居島へ。瀬戸大橋の香川県側の麓に広がる半島で、JR坂出駅から車で17分(JR宇多津駅から車で13分)。今回の芸術祭で初めて会場となり、春会期限定のアート作品が充実しています。
元は島でしたが、1960年代後半に臨海工業団地開発により埋め立てられ、陸続きとなった瀬居島。穏やかな海や牧歌的な島景色に、近代的な工場群が立ち並び、昭和の香りが色濃く残っています。芸術祭では瀬居島プロジェクト「SAY YES」と題し、廃校になった中学校や小学校、幼稚園など、一周約4kmの 島内の4つの集落で16人のアーティストの作品が展示されます。
まず訪れてほしいのが、8人のアーティストが複数の教室を使って作品を展開する旧瀬居中学校。
海や集落が見渡せ、風が心地よい屋上には、さまざまな形をした白い物体がたくさん…! 風船にコンクリートを詰めて制作した、早川祐太の彫刻作品「いるもの」です。本人いわく「奇天烈なものを探さなくても、当たり前にあるものの見方が変わる作品」とのこと。「猫がひなたぼっこしそうなところ」に展示されているので、ぜひ校舎内を探してみてください。
ノスタルジックな教室に、“穴”をテーマにした不思議なオブジェが並ぶ伊藤 誠の「空気穴」。「別世界とつながっている“穴”を表現し、自分の作品と瀬居島がどうつながるのかを試みました」と伊藤 誠は語っています。今回の展示は最大規模で、4つの教室に「穴」をテーマにした大小の作品が複数展示されています。
アースカラーの教室にたたずむオレンジの塊や、他のカートとは交われない“孤独な巨大カート”など、異質さに心惹かれる上村卓大の作品。“名前とかたちの有無”を自由な眼差しで眺めることをテーマにした作品はユニークで、なかには自身の子どもが作った小さな作品を拡大して作品にし、隣合う教室にそれぞれを展示したものもあります。
旧瀬居中学校での鑑賞を終えたら、徒歩すぐの旧瀬居幼稚園へ。瀬居島プロジェクト「SAY YES」全体のディレクションを担当する、中﨑 透の作品が古い幼稚園をまるごと使って展開されています。
地元の高校生から80代まで、瀬居にゆかりのある人々から聞いた39の思い出をパネルにし、それとリンクするように幼稚園にあった備品や島民から借りたものを展示。やわらかい方言となじみ深いモノが合わさった、瀬居島の物語をどるようなインスタレーション作品です。
中﨑 透いわく「工場やコンビナートを抜けると、島の集落が一気に広がります。ゆっくり散策し、今までの流れがあっての、余計なものがない島の暮らしを感じてみて。それがテーマの「SAY YES」につながっています」とのこと。アート鑑賞だけじゃなく、ぜひ場所ごと楽しんでみてください。
■瀬戸内国際芸術祭2025「瀬戸大橋エリア」瀬居島
(せとうちこくさいげいじゅつさいにせんにじゅうご せとおおはしえりあ せいじま)
住所:香川県坂出市番の州町11 旧瀬居中学校、番の州町17-5 旧瀬居幼稚園 ほか
TEL:087-813-2244(瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局)
開館時間:9時30分~17時
料金:旧瀬居中学校1000円、中﨑 透の「Say-yo, chains,what do you bindor release?」500円 ※どちらも「瀬戸内国際芸術祭2025」の共通パスポート利用可
定休日:春会期のみ公開(期間中無休) ※一部の作品は春会期以降も見学可
アクセス:JR坂出駅から車で17分(期間中は巡回シャトルバスあり)、またはJR宇多津駅から車で13分
【瀬戸大橋エリア(沙弥島)】瀬居島 から近いエリアにもアート作品があります
瀬居島から車で約9 分、瀬居島と同じく1960年代後半に埋め立てで陸続きとなったの沙弥島(しゃみじま)も「瀬戸内国際芸術祭2025」の会場です。
沙弥島で特に人気の作品「八人九脚」。瀬戸大橋記念公園内にあり、実際に座って雄大な瀬戸大橋が眺められます。ほかにも鑑賞自由の屋外作品が一つ、「瀬戸内国際芸術祭2025」春会期限定の作品が一つ(有料)。また香川県立東山魁夷せとうち美術館では、2025年6月1日まで「気配の力―拡大する日本画 岡村桂三郎|新恵美佐子」が開催されます。
■瀬戸内国際芸術祭2025「瀬戸大橋エリア」沙弥島「八人九脚」
(せとうちこくさいげいじゅつさいにせんにじゅうご せとおおはしえりあ しゃみじま はちにんきゅうきゃく)
住所:香川県坂出市番の州緑町6
TEL:087-813-2244(瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局)
時間・料金:鑑賞自由
アクセス:JR坂出駅から車で17分、またはJR宇多津駅から車で14分
【高松港エリア】島へ渡る前に高松港でアート&イベントをチェック
四国の玄関口であり、直島へのアクセスの起点となる高松港にもアート作品があるのをご存じですか。
「Liminal Air -core-」は、今やランドマークといえる常設の作品です。高さ8mのカラフルな2本の柱は、装飾の一部が鏡になっていて、周辺の景色を映し込んでいます。
そのほか、「瀬戸内国際芸術祭2025」の開催中は、ホンマタカシと国連の難民支援機関「UNHCR」との共催による展覧会や、芸術祭の案内所やグッズショップ、食の展開も予定している≪高松港プロジェクト≫も開催しています。
2025年2月には、建築家ユニット・SANAAによる設計の「香川県立アリーナ(あなぶきアリーナ香川)」もオープン。専用利用日以外は自由に入れるエリアもあるので、合わせて足を運んでみてはいかがでしょうか。
■「Liminal Air -core-」(りみなる えあ こあ)
住所:香川県高松市サンポート8-1
TEL:087-813-2244(瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局)
時間・料金:鑑賞自由
アクセス:JR高松駅から徒歩7分
【直島】“瀬戸内アート”発祥の島。港では屋外作品がお出迎え
瀬戸内でアートといえば、アートの聖地として世界中から人が集まる直島は外せません。芸術祭を開催する2025年度は常設展示以外にも見どころが多いのですが、こちらの記事では芸術祭と一緒に訪れたい、また芸術祭以外の期間でも楽しめる直島の常設展示についてご案内します。
直島の玄関口・宮浦港では、草間彌生の代表作「赤かぼちゃ」がたたずんでいます。草間彌生は「太陽の『赤い光』を宇宙の果てまで探してきて、それは直島の海の中で赤カボチャに変身してしまった」と詩の一部で語っています。中に入ったり写真を撮ったりする人も多く、今や牧歌的な港風景に溶け込んでいます。
宮浦港には、沖に浮かぶ船や島が海に浮かんで見える浮島現象をイメージした作品「直島パヴィリオン」もあります。コンセプトは27の島々からなる直島町の「28番目の島」で、 約250枚の白いメッシュでつくられています。中に入れるので、“映え写真”を撮ってみてはいかがでしょうか。
■「赤かぼちゃ」、「直島パヴィリオン」(あかかぼちゃ、なおしまぱゔぃりおん)
住所:香川県香川郡直島町宮浦港
TEL:087-892-2222 (直島町役場総務課)
時間・料金:鑑賞自由
アクセス:宮浦港からすぐ
【直島】世界的に名の知れた常設アートも見逃せない!
2010年から始まった「瀬戸内国際芸術祭」。その原点といえる、1992年に開館した「ベネッセハウス ミュージアム」にも足を運んでみてください。
「ベネッセハウス ミュージアム」は安藤忠雄による設計で、海を見渡せる高台に緑に埋没しているかのように建てられています。美術館とホテルが一体となったもので、美術館エリアは宿泊者以外でも鑑賞できます。絵画や彫刻、写真、インスタレーションなどの所蔵作品に加え、アーティストたちがその場所のために制作したサイト・スペシフィック・ワークも館内や屋外に展示されています。
「ベネッセハウス ミュージアム」の敷地内、海にせり出した細い桟橋の先に黄色いカボチャが! 草間彌生が制作した「南瓜(かぼちゃ)」で、今までの「南瓜」とは異なり、海や緑に囲まれた場所の特徴を強く意識して作られ、サイズも最大級なのだそう。直島のシンボルともいえる著名な作品です。
■ベネッセハウス ミュージアム(べねっせはうす みゅーじあむ)
住所:香川県香川郡直島町琴弾地
TEL:087-892-3223
開館時間:8~21時(最終入館20時)
料金:鑑賞料 オンライン購入1300円/窓口1500円 ※15歳以下とベネッセハウスに宿泊の人は無料
定休日:無休、メンテナンス休館あり
アクセス:バス停ベネッセハウスミュージアム下からすぐ
※屋外にある作品は鑑賞自由
※瀬戸内国際芸術祭 作品鑑賞パスポート対象施設
2004年に開館し、直島の中核施設として世界中から人々が訪れる「地中美術館」も訪れたい施設のひとつ。安藤忠雄が設計を手がけ、地下に埋設しながらも自然光が注ぐ建物も必見です。世界的にも人気の高い3人のアーティスト、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品が恒久展示されています。特に、最晩年の「睡蓮」シリーズ5点が自然光のみで鑑賞できる「クロード・モネ室」は見どころです。
■地中美術館(ちちゅうびじゅつかん)
住所:香川県香川郡直島町3449-1
TEL:087-892-3755
開館時間:10~17時(最終入館16時)
料金:鑑賞料2500円~(土・日曜、祝日は2700円~) ※オンラインチケットによる予約がおすすめ。15歳以下は無料
定休日:月曜(祝日の場合は翌日) ※詳細は公式WEBサイトを要確認
アクセス:バス停地中美術館からすぐ
※瀬戸内国際芸術祭 作品鑑賞パスポート対象施設
もっとも直島らしさを感じさせるアート作品「家プロジェクト」も外せません。古い家屋などを生かしてまるごと作品化したもので、アートと建築、地域のコラボレーションがすばらしい作品です。1998年から始まったアートプロジェクトで、2007年から民家が集まる本村地区に7つの作品が公開されています。ぜひ時間をとって、7つすべてをめぐってみてください。
「家プロジェクト」のひとつ「南寺」は、ジェームズ・タレルの作品に合わせて、かつてここに実在していたお寺の跡地に安藤忠雄が設計した建物。漆黒の闇が広がる建物内での体験型の作品です。
■家プロジェクト(いえぷろじぇくと)
住所:香川県香川郡直島町本村地区
TEL:087-892-3223(ベネッセハウス)
開館時間:角屋・石橋・はいしゃ10~12時、13時~16時30分
護王神社・碁会所10~13時、14時~16時30分
南寺10時~16時30分(最終受付 16時5分)
きんざ【3~9月】10時30分~13時、14時30分~16時30分、【10~2月】10~13時、14時30分~16時(最終入館は閉館15分前)
※詳細は開館カレンダーを要確認
鑑賞料:共通チケット(「南寺」「きんざ」除く5軒を鑑賞) オンライン 1200円/窓口 1400円 ※15歳以下は無料
ワンサイトチケット(「南寺」「きんざ」除く1軒を鑑賞) オンライン 600円/窓口 700円 ※15歳以下は無料
家プロジェクト「南寺」(予約推奨) オンライン 600円/窓口 700円 ※作品の性質上、5歳以下のお子様はご遠慮ください
家プロジェクト「きんざ」(予約推奨) オンライン 600円/窓口 700円 ※おひとりずつ内部に入り作品をご鑑賞いただきます
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
アクセス:バス停農協前から徒歩5~10分
※瀬戸内国際芸術祭 作品鑑賞パスポート対象施設(「南寺」「きんざ」以外)
【直島】2025年5月31日、「直島新美術館」が開館
2025年5月31日、直島・本村地区の高台に開館する「直島新美術館」もチェック。「ベネッセアートサイト直島」のプロジェクトにおける安藤忠雄による10番目のアート施設で、地下2階、地上1階を自然光が入る階段室がつなぎ、その両側に4つのギャラリーを配置しています。日本を含めたアジアのアーティストの作品を収集・展示し、村上 隆や蔡國強 などアジア出身の12人(組)のアーティストによる、開館を記念した展示も公開されます。
■直島新美術館(なおしましんびじゅつかん)
住所:香川県香川郡直島町3299-73
TEL:087-892-3754(福武財団)
開館時間:10時~16時30分(最終入館16時)
鑑賞料:鑑賞料 オンライン1500円、窓口1700円 ※15歳以下は無料
定休日:月曜(祝日の場合は翌日) ※不定休あり。詳細は公式WEBサイトで要確認
アクセス:バス停桃山から徒歩5分
※瀬戸内国際芸術祭 作品鑑賞パスポート対象施設
「瀬戸内国際芸術祭2025」の春会期に行きたい二つの半島と、合わせてめぐりたい高松・直島の常設展示をご紹介しました(直島新美術館は春会期以降の2025年5月31日に開館)。現代アートにプラスして、穏やかな海や牧歌的な集落の風景、島民とのコミュニケーションなど、豊かな旅時間が過ごせること間違いなし。「瀬戸内国際芸術祭2025」の会期中に訪れてみてはいかかでしょうか。
※「瀬戸内国際芸術祭2025」の鑑賞は、無料配信の公式アプリを使うと便利です。作品鑑賞パスポートが購入でき、作品や主要スポットまでの経路が検索できるほか、作品情報、島・会場に関する混雑や緊急の情報を得ることができます。
※芸術祭会期中は、主要観光施設のみに停車する、芸術祭特急バスがおすすめです。詳しくは公式WEBサイトをチェックしてください。
※直島の島内は駐車場が少ないので、レンタサイクルかバスで移動しましょう。
※ベネッセハウスミュージアム・地中美術館のアクセスに記載したバス停は、ベネッセアートサイト直島 場内無料シャトルバスのもの。(宮浦港・直島港<本村>から行く場合、直島町営バスのバス停・つつじ荘でベネッセアートサイト直島 場内無料シャトルバスに乗り換えが必要)。
Text:こばやしみもざ
Photo:大﨑俊典
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