
開業110周年記念! 「東京ステーションホテル」で英国老舗・LIBERTYとコラボした限定ルームに泊まる【すみずみ宿泊ルポ】
大正4年(1915)に開業し、2025年で110周年を迎える「東京ステーションホテル」。東京駅丸の内駅舎内にあるこのホテルは、戦災に遭いながらも、その長い歴史のなかでたくさんの旅人を迎えてきました。今回開業110周年を記念して、英国の老舗ファブリックブランド「LIBERTY」とコラボレーションした特別ルームが誕生! 「東京ステーションホテル」の格調高い客室に「LIBERTY」の気品あふれるファブリックがベストマッチし、それぞれのよさを高め合う素晴らしい空間に仕上がっています。
Summary
国の重要文化財に指定された東京駅丸の内駅舎に泊まる
全国各地へとつながる新幹線をはじめ、多くの路線の電車がひっきりなしに発着する東京の玄関口・JR東京駅。大正3年(1914)の開業時に近代建築の父・辰野金吾によって設計されたレンガ造りの丸の内駅舎は、誰もが思い浮かべることのできる東京駅のシンボルです。
東京駅開業の翌年、大正4年(1915)にその歴史を刻み始めたのが、この丸の内駅舎の建物内に宿泊できる「東京ステーションホテル」。2025年に開業から110周年を迎えます。
丸の内駅舎は、昭和20年(1945)の空襲による火災のため3階部分の多くを焼失しましたが、わずか2日後には列車の受け入れを開始しました。雨ざらしだった駅舎は2階建てにすることでわずか2年後に復旧し、ホテルの営業も6年後に再開。
2003年に国の重要文化財に指定されたのち、老朽化に伴い2007年から保存・復原工事が行われました。2012年、3階建てでドーム型の美しい屋根を冠した開業当時の姿へとよみがえり、ホテルもリニューアルオープンしました。
ホテルのメインエントランスは、南北に長い駅舎の中央よりやや南側の、バスロータリーのそばにあります。駅舎の南ドームにある丸の内南口改札のみどりの窓口の脇にサブエントランスがあるので、駅を利用する人はこのサブエントランスを使うと便利です。
メインエントランスを入ってすぐ、フロントのあるロビーフロアは、高い天井が特徴。随所にモールディングを施し、大きなマントルピースと鏡を配した優美な空間です。
フロントでチェックインをすると、ダークグリーンの素敵なユニフォーム に身を包んだゲストリレーションズのスタッフが客室へと案内してくれます。もちろんチェックインの前にホテルで荷物を預かっておいてもらうのもOK。
客室フロアへは専用エレベーターでアクセスします。駅舎は長さが335mあり、その建物内にあるホテルなだけあって廊下も圧巻の眺めです。廊下の壁には浮世絵や写真など東京駅にまつわるアートワークが107点も展示されています。そのアートワークからは時代ごとの人びとの暮らしなども垣間見ることができ、身近にありながら憧れでもあった東京駅丸の内駅舎とこのホテルの長い歴史を知ることができます。
110周年記念で誕生した限定2室の「LIBERTYルーム」
「東京ステーションホテル」では開業110周年を記念して、全部で150ある客室のうちの2室が、創業150周年を迎える英国の老舗ファブリックブランド「LIBERTY」とコラボレーションした「LIBERTYルーム」になっているんです。
2室は、翡翠の色をモチーフにした「JADE」15万4698円(1泊1室2名朝食付 ※インルームアフタヌーンティー付18万698円)と、孔雀をアイコンにした「HERA」10万1848円(1泊1室2名朝食付10万1848円 ※インルームアフタヌーンティー付12万7848円)。それぞれ雰囲気がまったく異なるデザインに仕上がっています。
客室全体で「LIBERTY」の世界観を表現するのは日本のホテルでは初めての試みとのこと。しかもそのホテルが日本における近代建築の代表格といえる「東京ステーションホテル」とは期待が高まります。
今回は、2024号室の「JADE」のお部屋をご紹介します。 客室のドアを開けると、廊下の造りからクラシックの魅力にときめきます。ホワイトで統一したシンプルなデザインながらも、モールディングの装飾が美しいアクセントに。左にある扉はクローゼットとミニバーになっています。
メインのベッドルームに入って、その完成された世界観により一層、気分が高まります! カーテンや壁紙に使われているのは、「LIBERTY」を代表する歴史的なデザインの一つであるボタニカル柄「パランポア トレイル」。エキゾチックな色合いに南国のカラフルな花々が咲き誇り、華やかでとても上品な印象です。
ベッドスローには、LIBERTY社のアーカイブにあったショールの柄「ペルシャン ボワイヤージュ」をリデザイン。「パランポア トレイル」と調和しています。 枕に添えたクッションはLIBERTYらしい小花柄の「フェザー ペタルス」、円筒形のボルスターはコンテンポラリーなデザインの「オットマンスポット」。落ち着いた茶色が客室のコーディネートのアクセントになっています。
「オットマンスポット」柄のソファは特注品! 柄はジャポニズムに影響を受けた貝殻のような曲線がモチーフです。その柄にぴったりのクッションは、日本の帯やアンティーク着物の裏地にインスパイアされた「オビ チェック」と幾何学模様の「アーカイブ ジオ」。柄同士を組み合わせたり、わずかに違う色の同系色でまとめたりしていて、コーディネートに技を感じます。 ベルベットの手触りもよく、高級感と心地よさを兼ね備えたソファにうっとり。
壁紙やカーテン、ソファ、ベッドのクッション類やフットスロー以外は、コラボレーション前の客室のままだそう。まるで当初からこのような客室が用意されていたかのような調和ぶりに、いかに「東京ステーションホテル」の客室と「LIBERTY」のファブリックの相性がよいのかがわかります。
「東京ステーションホテル」の客室でさらに特筆すべきはこのバスルーム。 白いドアを開けると、正面に洗面台、右にバスルームとトイレがあります。マーブル柄のタイル、縁付きの鏡、高級感のあるデザインの洗面台まで、ひとつひとつが丁寧に選ばれたアイテムで構成されていて、ヨーロピアンクラシックを感じる上質な空間が完成しています。
バスルームだけでもこの広さ。造り付けの大きなバスタブに、同じくらいの広さの洗い場があり、東京駅舎を使った客室のなかにこれほどの広さのバスルームがあるのかと驚くほどのぜいたく感。普段よりゆっくりとバスタイムを楽しみたくなります。
バスアメニティはフランスのフレグランスブランド「HISTOIRES de PARFUMS」と開発したオリジナルで、ホテルの創業年を冠した「Est.1915」。「LIBERTYルーム」だけでなく、スイートルーム以外の全客室に用意されています。
柑橘系のさわやかなトップノート、ミドルノートはフラワー系、ラストノートにはホワイトムスクのあたたかみを感じ、ホテルでの滞在を香りの記憶として印象づけてくれます。 そのほか歯ブラシやボディタオルといった一般的なアメニティに加え、「雪肌精」のレディースコスメセットも用意されています。
タオルはバスタオル、フェイスタオル、ハンドタオルの3種類。バスタオルは大判でたっぷりと体を包むことができます。フェイスタオルはそれほど厚みがないのが使いやすく、ハンドタオルは毛足が長めで手や口元を拭いたりするのにぴったり。
お風呂上がりに羽織るバスローブに加え、ベッドサイドの引き出しにはパジャマも入っています。柔らかいリネンのパジャマは、トップスがワンピースくらいの長さで、さらにパンツも付いています。
「LIBERTYルーム」では、このお部屋でしか利用できない「LIBERTYアフタヌーンティー」を楽しむことができるんです! ホテルオリジナルの3段トレイに1人前ずつ飾られたスイーツ&セイボリーは、このアフタヌーンティー専用のメニュー。スコーンにはジャムとクロテッドクリームが添えられた本格的なイギリス式です。
ドリンクはコーヒーと、ロンネフェルトの茶葉が4種類という充実ぶり。ゆっくりとアフタヌーンティーを楽しむことができます。
アフタヌーンティーセットは、宿泊する部屋ごとにプレイスマットとメニューのデザインが異なるそう。「JADE」はプレイスマットが「パランポア トレイル」、メニューは「オットマンスポット」になっているこだわりようです。
さらにこのプランには「LIBERTYファブリック オリジナルポーチ」も付いているんです! せっかく「LIBERTYルーム」に泊まるのであれば、アフタヌーンティー付きのプランがおすすめですよ。
江戸料理からトリュフオムレツまであれもこれも食べたい朝食ブッフェ
朝食会場は、丸の内駅舎の復原時に中央屋根裏の空間を利用して誕生したレストラン「アトリウム」。天井から下がる大きなシャンデリアが格調高く優雅な雰囲気を演出しています。約9mある天井の高さを生かしたこの大空間は、多くの人で混雑する朝食時間でもその密度を感じさせないゆとりを与えてくれます。
皇居側の壁を覆う赤レンガは創建当時のもので、関東大震災や戦災を逃れたその長い歴史を物語る風合いを感じさせます。
こちらで食べられるのが「アトリウム ブレックファストブッフェ」6200円(6時30分〜11時、10時30分LO)。壁一面に続く長いブッフェボードにホット&コールドメニューやサラダ、パンなどの洋食メニューがずらりと並び、左端には卵メニューのオープンキッチンがあります。 そのほか、中央通路脇には和朝食ステーション、さらにデザートやドリンクのコーナーもあって、ブッフェのアイテム数は100種類以上です。
サラダコーナーは、リーフが5種類とたっぷりのミニトマト、スプラウトやキャロットラペ、ツナコーンなどのトッピングが彩りよく並べられています。
ホットメニューのコーナーには温野菜やアクアパッツァのほか、台湾風牛肉の煮込みなどご飯にかけて食べるアジア風の料理などもあってバリエーション豊富です。もちろん朝食の定番であるハムやベーコン、ソーセージ類も揃っています。
パンのコーナーにも大注目です。フランスパンやハード系のパンは、ナイフでカットして自分の好きな大きさで食べられます。そのほかミニサイズのクロワッサンやデニッシュが8種類も!
「たまごサンド」も人気メニューの一つです。やや厚切りの食パンにゆで卵をつぶしたたまごサラダをたっぷりとはさんだひと口サイズなのでぜひ。
そしてもう一点、パンコーナーでおすすめしたいのが、「東京ステーションホテル」内に店舗がある「TORAYA TOKYO」のあんペーストをのせたあんバタートースト! とらや自慢のあんとバターのコラボは家でも試してみたくなる組み合わせです。
和朝食ステーションは”江戸料理”をテーマに、江戸時代の料理本にあるメニューを再現したり、江戸の名物である佃煮を豊富に揃えたりと、東京らしさを感じられる料理が並びます。刺身やとろろ、和え物などのおかず類はあらかじめ小皿に盛り付けられていて、取りやすいのがありがたい!
朝からたくさんの品数がうれしいスイーツコーナーもあります。パティシエ特製の「イチゴのショートケーキ」はいくつも食べたくなってしまいそう! ケーキ類のほか、フルーツ、焼き菓子などもありますよ。
紹介しきれないほどの品数から、まずは洋食メニューで揃えてみました。サラダはたっぷり、卵メニューはライブキッチンで「塩トリュフオムレツ」をオーダー。トリュフの芳醇な香りが幸せな気分にしてくれます。ホットメニューもひと口ずつ、そしてパンも数種類。 最初の温かい飲み物はテーブルでオーダーするシステムで、紅茶とフレッシュジュース類はドリンクコーナーにあります。
2ターン目は和食からセレクト。しらすや明太子はごはんに合うし、ひと口サイズの丼も食べたいし、江戸時代の料理本に紹介されている「雪消飯(ゆきげめし)」というおかゆと雑炊の間のような料理も気になるし……朝から嬉しいくらい迷ってしまいます。
食後にはフルーツとパティシエ特製のケーキを。きめの細かいスポンジと甘さ控えめの生クリームのショートケーキはお腹いっぱいでもおいしくいただけますよ。
「アトリウム ブレックファストブッフェ」は宿泊者限定。このブッフェを食べるためにまたこのホテルに泊まりたいと思うほど魅力的な朝食です。
ホテルから徒歩で行ける、おすすめ観光スポット3選
東京駅舎内だからJRへの乗り換えはすぐ、地下へ行けば東京メトロ丸の内線にもすぐ乗れて交通の利便性のよさは説明の必要がないほど。目の前には皇居、周辺は商業施設やブランドショップが並ぶ丸の内の通りが続き、お散歩気分で隣の有楽町・日比谷や神田へも歩いて行けます。
【ホテルから徒歩で約5分】TOKYOチューリップローズJR東京駅店
チューリップとローズをモチーフにしたスイーツを展開する店。同店の代表商品はチューリップとローズがひとつになった「チューリップローズ」。繊細なラングドシャクッキーで作られたチューリップのなかに、とろけるショコラクリームのローズが咲いた華やかなスイーツ。まるで黄金色のチューリップ、「チューリップローズフィナンシェ」も登場し、バリエーションも豊富に。
【ホテルから徒歩で約5分】桂新堂 東京駅グランスタ東京店
名古屋のえびせんべいの老舗「桂新堂」による東京駅構内のショッピングスポット「グランスタ」の店舗。国産の車えび、甘えび、芝えび、ぼたんえび、赤えびの5種類のえびを味わえる「海老づくし」をはじめ、素材本来の味わいを生かしたえびせんべいを販売している。ここでの一番人気は、東京駅限定の「パンダの旅」。パンダのイラストと東京の名所が描かれたえびせんべいが入っていて、東京みやげにぴったり。
【ホテルから徒歩約15分】注染手ぬぐいにじゆら 日本橋店
東京メトロ三越前駅A8出口から徒歩約1分のところに位置するコレド室町テラス内にある手ぬぐい専門店。手ぬぐいの販売はもちろん、手ぬぐい生地を使ったうちわや扇子、ブックカバー、服の販売も行っている。また、日本の伝統的な染めの技術である「注染」を体験することができるのも魅力。
リアルなおすすめタイムスケジュール
ホテルを有効に活用しながら過ごすおすすめのタイムスケジュールはこちら。客室でアフタヌーンティーを楽しんだり、国指定重要文化財になっているホテル内を散策したりして、創業から110年の歴史を刻む「東京ステーションホテル」を満喫しましょう。
【1日目】
10:30 ホテルに到着。ロビーで荷物を預けてから、丸の内で早めにランチ。そのあとショッピング
15:00 ホテルに戻りチェックイン
15:30 客室でLIBERTYアフタヌーンティーを楽しみながらゆっくり過ごす
17:30 JRで有楽町駅へ。銀座周辺でお買い物&食事
21:00 ホテルでバータイム
22:30 就寝
【2日目】
7:30 「アトリウム」でブレックファストブッフェ
9:00 ホテル内を散策しながら東京駅舎の歴史を見学
10:00 皇居方面へお散歩
11:00 部屋へ戻ってゆっくり身支度を整える
12:00 チェックアウトして、荷物をホテルに預けておく
12:30 JRで上野駅へ。ランチの後、美術館めぐり
16:30 東京駅へ戻って地下街でおみやげ探し
18:00 ホテルで荷物をピックアップして帰路
今回ご紹介した「LIBERTYルーム」以外にも、南北のドームが見える客室や東京駅側にあるコンパクトサイズの客室、多彩なスイートルームまで、豊富な客室タイプを揃える「東京ステーションホテル」。実際に過ごしてみて驚いたのは、この建物のすぐ隣ではひっきりなしに電車が行き来していることを忘れてしまうほど、静かな環境で過ごせること。いつもの東京駅がまったく違って見える、日本を代表する近代建築で味わう非日常の時間をぜひ体験してみてください。
■東京ステーションホテル
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
TEL:03-5220-1111
チェックイン/アウト:15時/12時
料金:1泊朝食付2名1室8万620円〜(宿泊税別)
アクセス:東京駅から徒歩すぐ
Text:山下あつこ(アトリエshiRo)
Photo:新谷敏司/東京ステーションホテル/アトリエshiRo
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。