
茶道宗和流十八代の家元が監修した茶懐石料亭「即今」で茶事体験を堪能【ご褒美の新定番】
「気軽に茶事を楽しむ」がコンセプトの茶懐石料亭「即今(そっこん)」。茶道宗和流の十八代の監修による本格的な茶室が3つあり、オリジナルの茶懐石を通して日本文化を楽しめます。なかでも初心者でも気負わずに堪能できる、自分へのご褒美におすすめのコースをご紹介します。
現代風にしつらえた茶室を舞台に、季節の茶懐石料理を堪能
東京メトロ表参道駅から徒歩約6分の場所にある「即今」は、茶道宗和流十八代・宇田川宗光氏が監修する、茶道・茶事の魅力を気軽に体験できる茶懐石料亭。お店は地下にあり、まさに大人の隠れ家のような非日常感を味わえます。
茶事の堅苦しいイメージを取り払うことをコンセプトに、「お茶でホームパーティーをするように気負わず楽しんでもらいたい」という思いからお店をオープン。
茶事では、茶室に入って炭でお湯を沸かす間に茶懐石料理やお酒を楽しみ、その後お菓子を食べた後にお茶をいただきます。通常は約4時間くらいかかりますが、「即今」では2時間ほどのコースから気軽に楽しめます。
部屋は3つあり、すべてが茶室となっています。茶室の監修も家元が行っており、本格的でありながら現代の感覚にも合うような空間作りがされています。
四季を重要とする茶道の精神を大切にしているため、お客さんが季節感を感じられるよう、家元が室礼(室内の装飾)を行っています。
一番大きくメインとなる広間が、こちらの「爤酔亭(らんすいてい)」。茶道は正座などの堅苦しいイメージがありますが、掘りごたつと畳のテーブルで和洋折衷なデザインなので、リラックスして過ごすことができます。
茶懐石は茶を飲むため食事で、ご飯・汁物・向付を基本に、煮物椀や焼き物を加えた一汁三菜の構成が基本。今回いただくランチの「一汁三菜コース(点前付)」7800円では、季節ごとに旬の食材を使い茶懐石を簡略化した内容を手軽に楽しめます。
コースの初めには、香煎(こうせん)という白湯に香りをつけた飲み物が提供されます。遠くからの来客をもてなすものだそう。今回は梅が浮かべられており、さわやかな梅の香りがふわっと漂います。
※コース内容は月ごとに変更。
次に、ご飯と味噌汁、向付(むこうづけ)が折敷(おしき)に据えられて出てきます。そのなかには昔ながらの細やかな気遣いが込められています。右側の縁に添えられた杉箸は、箸を清めるために水につけてから水気を拭き取られ、少し湿った状態です。
お椀のふたには霧吹きがされていますが、「これは誰も触っていません。あなたのために作りました。」という、給仕の準備が整った印とのこと。水で清めるという意味もあるそうです。
ご飯の椀のふたを左手で、味噌汁の椀のふたを右手で同時に外し、上下を合わせて横に置くのが茶事の慣わしなのだとか。内側の水滴が垂れず、見た目もきれいです。
お箸は、折敷に掛かっている部分を上からつまみあげ、茶椀に添えている中指と薬指の間にはさんでから箸を持ち直すと、美しい所作で料理をスタートできるのだそう。
ご飯は軟らかく甘みを感じられます。味噌汁には季節の具材が使われており、今回は海岸に生える肉厚な葉が特徴の鶴菜や、東海地方で生産される濃厚な三州味噌、落とし辛子です。シャキッとした鶴菜の食感と濃いめのしっかりした味噌が、バランスのよい味わい。
向付は、鱚(きす)をレンコンやシイタケ、防風(漢方の一種)、ゴマと和えたもの。鱚は新鮮でプリッとしていて、ゴマの風味が利いています。
向付とともに、お酒が一献振る舞われます。いただいたのは、「真人白水」という金森宗和と縁の深い飛騨高山の日本酒。すっきりとした甘さで、食事にも合います。
続いては煮物椀。華やかな絵柄が施された漆器が目をひきます。家元がひとつひとつこだわり選定した、ハイセンスな道具を手に取れるのも醍醐味の一つです。
中には、スズキの若魚であるふく子と冬瓜、青柚が。ふく子の身はふわっとしていてやさしい味わいで、さわやかな冬瓜や青柚とマッチしています。
焼き物は、夏鴨と小芋。鴨はかなり肉厚でジューシー。小芋はほくほくとした口当たりで、やわらかな甘さが口の中に広がります。
お酒やお食事が進んだタイミングで抹茶に移るのですが、食事を終えた段階で食後のお作法を教えてもらえます。まず提供された状態に食器類を戻し、お箸は左側にかけておきます。最後にお箸を少し持ち上げて折敷の上に落とし、音を立てて「食事が終わりました」という合図を亭主に知らせます。
亭主は茶事のすべてを1人で準備するため、振る舞われる側の思いやりの気持ちがこのような所作に繋がっているのだそうです。
没入感のある小間の茶室で美しいお点前を拝見
茶懐石を楽しんだ後は、いよいよ茶事のメインであるお茶に移ります。
まずはランチをいただいた「爤酔亭」にて、お菓子が振る舞われます。今回いただくのは「葛焼(くずやき)」。葛と餡を合わせたシンプルなお菓子です。ふわっとした繊細な食感と、上品な甘さが心地よいおいしさです。
お菓子をいただいた流れで、茶室「即今」へ移動。店名と同じ名を冠した茶室です。 一段上がった三畳台目の茶室に入ると、薄暗く外部と閉ざされた世界が広がり、思わず緊張を感じます。
こちらの茶室にも、季節に合わせて変わる掛け軸が。取材時には、在原業平の歌がかけてありました。
歌の内容は、桜の季節に人が浮き足立つような情景を表現したもの。現代に置き換えて想像するひとときも至福の時間。都会のなかでわびさびの美しさを楽しむ要素の一つです。
静寂のなか、亭主による薄茶のお点前を間近で拝見。ひとつひとつの所作が美しく、つい見入ってしまいます。日常から離れて五感が研ぎ澄まされるよう。
涼やかなガラスの抹茶碗に薄茶の緑がとてもさわやか。蝋燭で照らされて映し出された、揺れるガラスの影も芸術的です。
亭主への感謝の気持ちを持って、薄茶をいただきます。家元好みの銘柄を使っており、苦味が少なく飲みやすい味わい。とてもクリーミーな口当たりで、外国の方から「ミルクが入っているのか」と聞かれることもあるそうです。
茶道や茶事を知らない人でも安心して体験できる雰囲気の「即今」。お子様連れでも利用でき、ドレスコードの縛りも特にないため、気軽に参加できます。茶道の醍醐味である「茶事」を体験し、楽しさを感じてみてください。
正式な茶懐石や、格式高い濃茶まで楽しめるものなど、本格的な茶事コースの用意もさまざま。茶道体験を組み合わせたイベントなども随時開催しています。「即今」を窓口に、ぜひお茶の世界に足を踏み入れてみてくださいね。
■即今(そっこん)
住所:東京都港区南青山5-12-4 全菓連ビル 地下1F
TEL:03-6427-7787
営業時間:ランチ11時30分~15時(13時LO)
ディナー17~22時(20時LO)
※ディナーは完全予約制
予約サイト:https://www.sokkon.jp/%E3%81%94%E4%BA%88%E7%B4%84
定休日:なし
Text・Photo:河合華子(vivace)
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。