
【おとなのソロ部】ひとり時間を深く楽しむ。新スタイル書店「magmabooks」で知に浸るひととき
2025年4月9日、虎ノ門ヒルズの複合施設「グラスロック」に「magmabooks(まぐまぶっくす)」がオープン。「magmabooks」は、丸善ジュンク堂書店が手がけた、本を読む前、読んでいる間、読んだ後のすべての時間をデザインする体験型の書店。訪れる人の知的好奇心を掻き立て、創造性を刺激する新たな書店を体験しに出かけてみませんか?
Summary
【読前】「知の森 – Forest of knowledge –」に迷い込み、本と出合う
虎ノ門ヒルズに新たにできた「グラスロック」。その2階と3階にオープンしたのが「magmabooks」です。「知」と触れ合うだけでなく、生み出す場所に……、「知」が沸々と湧き上がっていく書店でありたいという願いを込めてその名がつけられました。
2階の入口を入ってみると、曲線の書棚が森のように入り組んだ「知の森 – Forest of knowledge–(ふぉれすと おぶ のーれっじ)」(以下、「知の森」)が広がります。森の音、鳥のさえずり、川のせせらぎなどのBGMが流れる森をさまよいながら、本との偶然の出合いを楽しめる場所になっています。
「知の森」は「過去」、「現在」、「未来」の3つのパートに分かれ、さらに、それぞれにいくつかのテーマに沿って選書された本を陳列。一つのテーマに対して、専門書から小説、絵本、コミックとあらゆるジャンルの本が揃います。そして、気になるパート、テーマの書棚を辿っていくと、自ずと「知の世界」に誘われていくのです。
著者は、まず「未来」パートのフラッグに書かれた「どの道を行く?」というフレーズに心が躍りました。
「未来」のパートを歩くなかで目に止まったのが「科学技術で未来を作る」というテーマです。
このテーマの書棚はいくつかの小テーマが掲げられ、著者は「限りある資源に」に興味が湧きました。そこに並んでいたのは、昆虫食や食べられる草、ヴィーガン、サステナブルなフードなどに関する本。自分の興味に対しピンポイントに刺さる本を「はい、どうぞ!」と一気に持ってきてもらったような感覚になり、隅から隅まで読んでみたい! と思ってしまうほど。読みたいと思っていた本を探すという従来の書店の目的とは異なる、知的好奇心を刺激するワクワクしたひとときを、「知の森」で過ごすことができました。
「言葉の雨」に打たれて3階の書棚エリアへ
2階と3階を繋ぐ階段の壁面には、名著からの一節が雨のように降り注ぐ「言葉の雨」が。太宰治『人間失格』より「恥の多い生涯を送って来ました。」、中原中也『山羊の歌』より「汚れちまった悲しみに今日も小雪の降りかかる」など、近代日本文学の一文が紹介されています。一文を読んで、どんな本なんだろうというイメージを膨らますことができるので、移動も楽しくなります。また、知らなかった本と出合うひとつのきっかけにもなるかもしれませんね。
3階の書棚エリアは、新刊コーナーとビジネス、アート、人文学、コミックなどのジャンルごとの棚に本がずらり。従来の書店のように目的を持って本を探すのに向いている形態ですが、パッと見渡して本の情報が目に入ってきやすい円型什器(じゅうき)を採用するなど、チャレンジングな試みもしています。
ウッドフロアとグリーンの書棚や壁は2階から木が伸びてきた森をイメージ。書棚間の通路は森のなかの小道のようです。
大きな窓の外には都心とは思えない緑豊かな風景が広がっています。そんなよい景色を望めるソファは人気の場所。休憩をするだけでなく、本を読んで過ごす人も多いといいます。
【読中・読後】2つのゾーンで構成されたラウンジで集中&緩和
3階には、有料のラウンジ「magmalounge(まぐまらうんじ)」を併設。「magmalounge」には2つのゾーンがあり、読書からのインプット、作業をするアウトプットに没入できるゾーン<FOCUS(ふぉーかす)>と集中から解き放たれるゾーン<CALM(かーむ)>に分かれています。これは集中と緩和のサイクルが人間の思考を最大化し、創造性を引き出すという考えから生まれたものです。
「magmalounge」を使用する際は、受付でチェックインを行い、使用するブースの番号のカードを受け取りましょう。支払いはチェックアウト時に行います。
入口付近には、無料のドリンクとスナック類を用意。集中力を高める効果があるブドウ糖を豊富に含んだラムネや、GABAを配合し一時的なストレスと疲労感の軽減をサポートしてくれるというドリンクなど、集中できる環境づくりが徹底されています。
オープンスペースの広がるコワーキングスペースは多くありますが、<FOCUS>は“個”に特化。半個室が30席並んでいます。集中して仕事や勉強をするのにぴったり。そして購入した「magmabooks」の本はもちろん、未購入のものも3冊まで持ち込めるので、本を読むために利用する人も多いといいます。
六角形のハニカム構造によりデスクがパーテーションで囲われているため、周りを気にすることなく作業に没入できます。さらに、より集中できる環境にするためにさまざまな企業とコラボレーションして空間を作り上げているそう。
BGMにはVIE社が提供する集中力を高めるニューローミュージックが流れ、デスクライトには本を読むときに影ができないというカネカ社のものが置かれています。
完全個室も6室あるので、自分だけの空間で集中したい場合は利用してみてください。
集中力を高めるには長時間何かを考え続けるのではなく、思考を緩和させる休息も必要。ゾーン<CALM>でオンとオフを切り替えてみましょう。
靴を脱いで室内に入ると水琴窟が。中央に置かれた「sound biotope(さうんど びおとーぷ)」の中で実際に水の滴る音を集音し、いくつものスピーカーを使って空間全体に音を響かせているのです。椅子に座って天井に映し出された「sound biotope」の水の波紋の動きを眺め、心地よいゆらぎのある音に包まれると、自然と思考と心が解きほぐされるようでした。
「TULLY'S COFFEE &TEA」とのコラボドリンクもチェック
「グラスロック」1階にある「TULLY'S COFFEE &TEA(たりーず こーひー あんど てぃー)」では、「magmabooks」とコラボレーションした店舗限定のドリンクが販売されています。メニューは「&TEA 文豪ラテ」と「&TEA 文豪ロイヤルミルクティー」の2種類。ドリンクの上に「magmabooks」の「言葉の雨」に書かれている名文がラテアートとしてプリントされています。取材時は、有島武郎の『生まれいずる悩み』(写真左)と石川啄木の『一握の砂』(写真右)のものを提供。デザインを選ぶことはできないので、提供されてからのお楽しみです(デザインは変更する場合があります)。
さまざまな使い方ができる「magmabooks」。ふらりと立ち寄って新たな本に出合うもよし、集中して作業をする日と決めて訪れるもよし、自分なりの「知と触れ合う」ひとり時間を過ごしましょう。2階には本や言葉にフィーチャーしたギャラリー「magmaspace(まぐますぺーす)」もあるので、ぜひそちらも訪れてみてくださいね。
■magmabooks(まぐまぶっくす)
住所:東京都港区虎ノ門1-22-1 グラスロック2・3F
TEL:03-6273-3873
営業時間:11~20時(magmaluongeは平日9~20時、土・日曜、祝日は10~20時)
定休日:施設の休みに準ずる
料金:magmalounge通常席(半個室席) 1800円/1時間、5000円/1日
magmalounge個室席 2100円/1時間、6000円/1日
※書店の利用は無料
■おすすめの利用シーン:新たな本と出合いたいとき、集中して本を読みたいとき、集中して作業をしたいとき
Text:河部紀子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
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