【千葉・市原】アート×小湊鉄道「古往今来・発車オーライ!」市原湖畔美術館レポート/2025年9月15日(月)まで

【千葉・市原】アート×小湊鉄道「古往今来・発車オーライ!」市原湖畔美術館レポート/2025年9月15日(月)まで

るるぶ情報版(国内)編集部 るるぶ情報版(国内)編集部
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週末、美術館に行きたい!都内の美術館も良いけど、たまにはちょっと遠出してアートを見に行きたい!そんな方におすすめしたいのが、千葉県市原市にある市原湖畔美術館です。 JR東京駅から電車で片道2時間の小トリップ。途中、千葉を代表するローカル線の小湊鐵道にも乗車し、旅情もしっかり味わえます。 市原湖畔美術館では2025年9月15日(月)まで小湊鉄道開業100周年を記念した展覧会「小湊鉄道開業100周年記念展『古往今来・発車オーライ!』」が開催中。 鉄道とアートが組み合わさるとどんな化学反応が起きるのか? レポートします!

Summary

市原湖畔美術館ってどんなところ?

市原湖畔美術館外観
撮影:遠藤匡 提供:市原湖畔美術館
市原湖畔美術館は、その名の通り高滝湖(たかたきこ)という湖のほとりに立つ現代アートの美術館です。

「瀬戸内国際芸術祭」や「大地の芸術祭」などの芸術祭の総合ディレクターを務める北川フラム氏が会長の株式会社アートフロントギャラリーが運営しており、市内で3年に一度開催されるトリエンナーレ「いちはらアート×ミックス」の中核施設にもなっています。

開館は2013年。1995年にできた「市原水と彫刻の丘」という施設をリノベーションしてオープンしました。
美術館の模型
美術館のスロープ
建物は上から見ると扇形をしています。内部は空間がコンクリートの壁と、キランとした亜鉛メッキのボードで仕切られていて、まるで迷路のような、回遊する楽しさのある空間になっていました!

駅に降りたときから展覧会は始まっている

展覧会の入口
市原湖畔美術館では、「小湊鉄道開業100周年記念展『古往今来・発車オーライ!』」が開催されています。

美術館の近くを走る小湊鉄道の魅力や歴史と、アートを掛け合わせた作品が展示されています。昔から今まで、という意味の言葉「古往今来」を冠している通り、小湊鉄道の歩んできた歴史を紐解く作品もあれば、未来の小湊鉄道を想像した作品も展示されていました。
高滝駅外観
高滝駅のホーム
さて展覧会は市原湖畔美術館の最寄りである高滝駅に降りたったときから始まっていました。

青山悟さんのジャケット
駅舎の中に吊るされているのは、背中に「FOREVER KOMINATO RAILWAY」と刺繍された小湊鉄道の駅員さんのジャケット。参加作家の青山悟さんの作品です。

駅の中に設置されたパネル
さらに駅~美術館への道中には、中﨑透さんによるパネル作品「Another Story」が設置されています。記されているのは中﨑さんが小湊鉄道の社員や、近隣住民へ行ったインタビュー。

中崎さんのルートマップ
駅の中にはパネルの設置箇所をまとめたマップが設置されているので、忘れずにゲットしましょう。

線路沿いの看板
初春の時期になると線路沿いに沢山の菜の花が咲く。シーズンには撮り鉄の方々が撮りに訪れて賑わうんだとか
早速、マップを片手にパネルを探しつつ、美術館までの約1.5kmの道のりを歩いていきます。所用時間はゆっくり歩いて20分ぐらい。

当日は天気が良く、途中坂もあってアップダウンのあるコースだったためプチハイキング気分が味わえました。

episode8のパネル
パネルの文章を読んでいると、小湊鉄道が地域の方々の心の拠り所となっているのだなと感じました。

episode5のパネル
取材したのが平日の日中だったせいか、途中で通過した神社や石碑、橋やボート置き場で地元の方とすれ違うことはほとんどありませんでした。しかし中﨑さんのパネルを通して、小湊鉄道にまつわる話を聞いたことで、そうした場所にもしっかりと人々の息遣いが感じられたような気がします。

高滝湖
神社の境内を出ると、いよいよ高滝湖(たかたきこ)が現れました。

高滝湖は人工のダム湖で、度々洪水を起こしていた養老川の治水管理と、京浜工業地帯に属する市原市の水源確保を目的として建設されました。

湖面から水上彫刻がのぞく様子
湖面を見ていると、島のように水上彫刻がポツポツと浮かんでいます。元々は陸から通路で繋がっていましたが、川から流入した土砂などで湖面が上昇し、離れ小島になってしまったんだとか。

美術館近くの岸に行くと、先端が水没した階段がありました。不思議な、他の場所ではあまり見たことがない光景で面白かったです。

市原湖畔美術館の看板
いよいよ美術館に到着です。

湖のそばにそびえる藤原式揚水機
美術館の敷地内には、黒くて大きな物見櫓のようなものが建っていました。これは藤原式揚水機という、高い所に水を汲み上げるためのポンプのような機械のレプリカ。現在は展望塔に登ることはできませんが、高さが28mもあり、下から見上げるだけで大迫力。

【中﨑透】看板から地域の歴史に思いを馳せる

中崎さんの展示スペース
では美術館の中の作品を見ていきましょう!

最初は言葉や認識のズレをテーマに作品を制作する中﨑さんの作品から。ここではご本人の作品に加えて、小湊鉄道の元会長である石川信太氏の油彩画と、千葉県出身の洋画家・篠崎輝夫氏の水彩画も展示されていて、中﨑さんキュレーションのミニ展覧会のような雰囲気。
中崎さんのライトボックス作品
また中﨑さんの代表的な作品形態である看板や、蛍光灯とカラーアクリルを用いたカラーボックスの作品も展示されていました。

小湊鉄道の看板など
さらには、実際に小湊鉄道で使用されていた切符や鋏、線路の下に敷く砂利などの資料も展示されていました。 
 
館外にあった立札と同じで、小湊鉄道と沿線の地域が歩んできた時間を感じられる展示です。 

【青山悟】ミシンで紡ぐ小湊鉄道の未来

青山悟さんの鳥観図
続いては戦前に作られた工業用ミシンを使って刺繍作品を製作する青山悟さんの展示。 
 
みどころは、地元の子供たちとワークショップで作ったという小湊鉄道の未来の鳥瞰図。子どもや動物たちがワイワイ楽しそうにしています! 
 
でもよく見てみるとダリの「記憶の固執」を思わせる溶けた時計があったり、山からは煙があがっていたり、上の方からニョキっと監視カメラが出てきていたりと、不穏さも感じる未来像になっているのが印象的でした。 
刺繍で作った切符
他にも切符を再現した作品があったりして、こんなものでも再現できてしまうのか!と驚きました。

【クワクボリョウタ】鉄道模型が創り出す幻想的な光と影

クワクボリョウタさんの作品

お次は光と影により鑑賞者自身が内面で体験を紡ぎ出すような作品を制作するクワクボリョウタさんのゾーン。暗い部屋の中に入ると、何やら光るものが床の上で動いています。 
 
しばらく暗闇の中で目を凝らしていると、光源を積んだ列車が∞型のレールを走行しているのが見えてきました。その列車が放つ光によって、レールの内側に置かれたろうとや、ざる、茶筅、セロハンテープの影が四方の壁に映り、幻想的な風景を作り出していました。 

クワクボリョウタさんの作品

流れ、移り変わっていく道具の影は山や建物のそれのように見え、知らない町の電車に乗って窓の外を眺めている時のような気持ちに。思わず内省的になる、そんな幻想的な作品でした。

【中野裕介/パラモデル】プラレールもアートになる⁉

パラモデルの作品

最後は中野裕介/パラモデル。中野さんは、林泰彦さんとともに結成したアートユニット「パラモデル」の活動を経て、現在はソロ名義の「中野裕介/パラモデル」として制作活動をされています。
 
美術館の壁にまるで蜘蛛の巣のように青い線が這っています。何かと思って近づいてみると、何とプラレールの線路!自分の中に眠っていた子ども心がくすぐられるようでした。 
 
中野さんは「模型遊び」をテーマにしたインスタレーション作品などを制作している作家さんで、プラレールを作品に用いるのが特徴です。 

パラモデルの作品

階段を下っていくと、床の上にプラレールの線路やトンネルが散らばっていたり、謎の地図が貼り出してあったり、千葉房総が舞台の『南総里見八犬伝』の文庫本が積み上げてあったりと異様な雰囲気。さらに天井からはドット絵が描かれた巨大なバナーが吊ってあったり、プロジェクターからは謎のカラフルな文字が流れ、何やら音楽のようなものも流れていて、情報量に圧倒されました。 
 
これらは資金不足で幻となった小湊鉄道の路線計画や、『南総里見八犬伝』など事実とフィクションがないまぜになったカオティックなインスタレーションなのです。 

見逃し厳禁の常設展

常設展の入口

企画展はもちろん常設展も見逃せません! 
 
常設展では市原市名誉市民であり版画家の深沢幸雄さんの作品をはじめ、市原市所蔵の作品を展示しています。 

かこさとしさんの絵本原画

常設展とはいうものの4回展示替えがあり、今会期では『だるまちゃんとてんぐちゃん』や『からすのパンやさん』などでお馴染みの、かこさとしさんの絵本原画も展示されています。なぜかこさんの作品が、と思われるかもしれませんが、これは『小湊鐵道沿線の旅 出発進行!里山トロッコ列車』(偕成社)という作品を上梓しているから。 
 
小湊鉄道では「里山の風景を守る」「自然との共存」という想いからトロッコ列車を走らせていて、そのことにかこさんが共感して描いたんだとか。 

かこさとしさんの絵本原画

絵本には列車はもちろん、沿線の人々の生活や文化が生き生きと描かれており、登場した駅を訪れたくなります!

小湊鉄道モチーフも! 注目ミュージアムグッズ

帰る前にぜひ立ち寄りたいのがミュージアムショップ。

ミュージアムショップに並んだミュージアムグッズ

こちらは美術館限定のオフィシャルロゴグッズ。白とグレーのシックな色合いがオシャレ。Tシャツやトートバッグ、缶バッジなどを取り揃えています。

ミュージアムショップに展示されたミュージアムグッズ

さらには小湊鉄道100周年記念グッズも充実!

ミュージアムショップに並んだミュージアムグッズ

なかでも目を惹いたのが「小湊鐵道キハ200形バッグ」。リアルさもありつつ、取手やファスナーが付いていてしっかり機能的で欲しくなりました。 
 
小湊鉄道という入口がありつつ、沿線地域の暮らしや文化を中心に据えた内容で、だからこそ鉄道に興味がある人でも、無かった人でも楽しめる展覧会になっていたように思います。 
 
ぜひ次の週末は市原湖畔美術館を訪れてみてくださいね! 

Text:村上黎
Photo:遠藤匡、村上黎


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