
新感覚な植物園「BOTANICA MUSEUM」で五感を使って自然×アートを体験
千葉県・稲毛で27年間愛された「花の美術館」が、約3年間の改装期間を経て「BOTANICA MUSEUM(ぼたにか みゅーじあむ)」としてリニューアルオープン。“自然という奇跡を思い出す場所”をコンセプトに掲げた、芸術性にあふれる館内の様子や併設するレストランのおすすめメニューをご紹介します。
植物園の概念が覆る自然とアートの融合
JR稲毛駅からバスで約15分、稲毛海浜公園内に「BOTANICA MUSEUM」はあります。
もともとは1995年に開催された「第12回全国都市緑化ちばフェア」のテーマ館として開設され「花の美術館」として運営していた本施設。2022年から約3年の大規模な改装工事を経て、2025年3月に「BOTANICA MUSEUM」としてリニューアルオープンしました。
プロデュースを手掛けたのはフラワーアーティストのHIKARU SEINOさん。海外のファッションショーに携わったり、スペインのガウディ建築展にマエストロとして招かれレクチャーを行ったりしているそうです。
コンセプトは“自然という奇跡を思い出す場所”。HIKARU SEINOさんの感性を基に自然のなかから植物にフォーカスして、私たちの生活や心を豊かにするヒントを考えられるようなミュージアムを目指しているそうです。
「BOTANICA MUSEUM」には五感を使って植物の鑑賞が楽しめる仕掛けがたくさん。本館へ向かう途中の前庭にも、さっそく視覚を刺激するユニークなオブジェが飾られています。
自然の神秘の象徴である青リンゴは「BOTANICA MUSEUM」のシンボル。オブジェは高さが約2メートルほどあり、圧倒的な存在感を放っていました。
前庭はシンメトリーに花壇や噴水が配置されていて、フランス式庭園を彷彿とさせる美しさです。
取材時には、ラベンダーやコキアが咲いていました。今年度(2025年)は春にチューリップが咲き、秋にはケイトウ、冬にはビオラが咲くそうで、季節ごとに違った景色を楽しめます。
数々の植物に歓迎されながら歩を進めると、本館の入り口に到着しました。向かって右側がミュージアム、左側が併設レストランの入り口になっています。
まずはミュージアムからチェックしていきます。
ミュージアムの館内は、天井が高くガラス張りで、自然光がたっぷりと入って開放感が抜群。チケットカウンターの横にもアート花品がお出迎えしています。
入館したら、まずは有人カウンターでチケットを購入しましょう。
「BOTANICA MUSEUM」は、昼の部と夜の部(金〜日曜・祝日のみ)の運営があり、入館時間によってチケットの絵柄が異なります。写真映えする華やかなチケットは、どちらも揃えたくなってしまいますね。
カウンターの横にはロッカー(※100円返却式)があります。館内は広いため、荷物が多い人はここへ預けて身軽に鑑賞するのがおすすめです。
イマジネーションあふれる5つの展示物
「BOTANICA MUSEUM」の館内はアトリウム、ボタニカリウム(温室)、ガーデン、ワークショップ、レストランの大きく5つに分かれています。
館内すべてを通して五感で自然の魅力を感じられるような空間を演出していて、植物やアート作品で「視覚」、ミュージアムに流れるBGMで「聴覚」、香りに重きを置いたアート作品で「嗅覚」、ワークショップで「触覚」、レストランで「味覚」を表現しています。
まずは自然と芸術が融合したアート作品5つが楽しめるアトリウムから鑑賞していきましょう。
入場してまず最初に目に飛び込んでくるのは花を拡張したアート作品『MICRO KIDS(みくろ きっず)』。
“子どもの頃に感じていた、大きくて広い驚きに満ちた世界を思い出せるように”という意図で作られた作品で、本物のようなリアルで大きな花々がゲストを出迎えてくれます。
手を伸ばしても届かないほどのジャイアントフラワーを見ていると、まるで自分が小さくなったような気分になります。
立体的かつ繊細に再現された花は、実物体では見えないディテールまでじっくり鑑賞することができました。
館内の中央でカラフルに美しく咲き誇っているこちらの木は、現代の多様性や無限の可能性、さまざまな考えがあることを可視化した『MIRACLE TREE(みらくる つりー)』。
1万本以上の生花を館内でドライフラワーにして作られていて、館内の象徴的なオブジェになっています。
隙間無く咲き誇るドライフラワーは見る角度によって表情が異なり、ずっと眺めていたくなるほど美しい作品でした。
館内をさらに進むと、地球上の気候「砂漠・乾燥地帯」、「寒帯」、「熱帯・亜熱帯」「温帯」、「亜寒帯」を表現したクリーチャー『BOTANICALIEN(ぼたにかりあん)』に出会いました。
植物と人間の原点を表しているこのアート作品。ドライフラワーで覆われた上半身から、人の足が生えている未知の生物のような見た目は少し不気味な雰囲気で、今にも動き出しそうな妙なリアルさを感じました。
『MOSS MOSS(もす もす)』は、自然環境の維持における苔の重要性を地球の血管として表現した作品です。高さは約6メートルに及び、苔がコンクリートの壁を掴んでいるような迫力があり、展示物のなかでも圧倒的な存在感を放っています。
苔の上には、まるで実のように「BOTANICA MUSEUM」を象徴する大小の青リンゴが並んでいます。
アトリウムの一番奥の部屋に進むと『BOTA Hz(ぼた へるつ)』が展示されています。
鏡張りで異空間な雰囲気が漂う部屋の中央には、植物や花で作られた木のように大きいオブジェがあり、ブルーライトに照らされていて幻想的。部屋の中では、癒やしの周波数として知られている528Hzの風が木々を揺らす音が響き、所々にピアノや現代的な電子音が混ざり合って聴覚を刺激します。
館内全体が植物や花々のボタニカルな香りに包まれていますが、この作品の付近は香り変えているそうで、視覚や聴覚だけでなく嗅覚を研ぎ澄まされる体験ができました。
各作品の前には、展示物をキャラクターのようにとらえた生態の説明紹介があり、これを読むことでよりイマジネーションあふれる世界観に没入することができます。
二次元コードを読み込めば、プロデューサーのHIKARU SEINOさんによる詳しい作品詳細をチェックすることもできるので、ぜひ合わせてチェックしてくださいね。
アトリウムで5つのアート作品を楽しんだ後は、隣接しているボタニカリウムに移動していきましょう!
歴史が詰まったリニューアル前の内装をあえてそのまま残したというボタニカリウム。中央に人工滝があり水の流れる音とともに、まるで南国に旅行へ来たような気分で熱帯植物の鑑賞が楽しめます。
オーガスタやハイビスカスなど温かい地域でしか見ることができない珍しい熱帯植物がたくさん咲いています。
ボタニカリウムの中には吊り橋風のブリッジなどもあり、まるでジャングルを散策しているようなワクワクした気分になりました。
「BOTANICA MUSEUM」ではリニューアルオープン後の新たな取り組みとして、金〜日曜・祝日限定で、17〜21時の夜間営業も開催しています。
館内全体がライトに照らされ幻想的な演出に包まれる夜間営業は、昼の部とはまた違った角度で自然の魅力を感じることができます。ぜひ昼と夜を合わせて体験してみてくださいね。
花と触れ合うワークショップも必見
館内の「GANON BOTANICA LAB(がのん ぼたにか らぼ)」では、「HANA ASOBI(はな あそび)」というワークショップが開催されています。
ワークショップでは「生花」2200円と「ドライフラワー」3300円で、好きな花を3輪選び、世界に一つだけのオリジナルのブーケを作る体験ができます。予約は不要で、来館の記念におみやげとして持って帰る人も多いのだとか。
「生花」、「ドライフラワー」ともに所要時間は約30分で、火〜木曜は11〜15時、金〜日曜・祝日は昼の部が11〜15時、夜の部が17時30分〜20時まで受け付けしています。
ショップ内では大小さまざまなかわいらしい花瓶が販売されているので、お家に帰ってからも思い出をきれいに飾ることができそうですね。
またワークショップとは別に、お花と人がひとつになった撮影を体験できる「HANANINGEN(はなにんげん)」も開催しています。
ホームページから予約が必須で、フォトスタジオでフォトセッションを行う「HANANINGEN」5500円〜、屋外のガーデンや熱帯植物に囲まれながら撮影を行う「HANANINGEN SAMPO」1万1000円〜、通常のHANANINGENより花の量が多く多様なデザインと個性を表現できるコース「ART HANANINGEN」5万5000円〜の3つのコースがあります。
基本のサイズや形を基に、フローリストがひとりひとりに寄り添った花飾りを作ってくれるコンテンツで、一生の思い出となる素敵な写真を残すことができそうです。
館内にはギフトショップもあります。アート作品をモチーフにしたバッグ、Tシャツ、ポストカードなどのオリジナルグッズは来館記念に購入するのにぴったり。
併設レストランで味覚も満たされる
ミュージアムで「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」の4つの感覚を研ぎ澄ましたあとに立ち寄りたいのが、併設レストランです。
レストランでは、五感の一つ「味覚」を刺激することをテーマにしています。
店内は4人掛けテーブルが11席、テラスに4人掛けテーブルが6席あり広々。ガラス張りになっているので、中庭に咲く四季折々の植物を鑑賞しながら食事を楽しむことができます。
今回は「フラワーガーデンパスタ(ジェノベーゼ)」、「スイーツアンサンブル セプテット 〜7つの小さなギフト〜」、「青リンゴスカッシュ」をいただきました。
ます最初にご紹介するのは、パスタの上にエディブルフラワー(食用花)をあしらった華やかな「フラワーガーデンパスタ」。味はジェノベーゼ、トマトの2種類から選べて、今回はジェノベーゼをいただきました。
アトリウムに展示されていたアート作品「MOSS MOSS」と「MIRACLE TREE」をイメージして作られた、ホウレンソウを練り込んだタリアテッレに国産のバジルとグリーンオリーブのジェノベーゼソースを合わせた一品。タリアテッレがモチモチとしていて、濃厚なソースとよく絡みます。
タリアテッレの上には、バラ・ハイビスカス・ローズマリー・ラベンダーを粉末にしたシェフ特製のドライフラワーパウダーがかかっていて、口に入れると花の香りが広がり、しっかりと花の風味も感じることができました。
ドリンクは「BOTANICA MUSEUM」のトレードマークになっている青リンゴをイメージした「青リンゴスカッシュ」をチョイス。少しだけ酸味のあるさっぱりとした味わいでほのかに後味が甘く、パスタやスイーツとも相性抜群です。
レストラン唯一のデザートメニュー「スイーツアンサンブル セプテット 〜7つの小さなギフト〜」は、一皿で7つの味覚が楽しめるスイーツ。
それぞれケーキに味覚の特徴となるアクセントが利いていて、カヌレは塩味、リンゴのムースは脂肪み、ガトーショコラは辛み、レアチーズケーキは酸味、抹茶ブラウニーはうま味、ショートケーキは甘み、オペラは苦みを表現しています。
食べる順番は決まっていないので、気になるケーキから好みの順番で食べましょう。
うま味を表現した抹茶ブラウニー×味噌、辛みを表現したガトーショコラ×柚子コショウなど、ほかでは見かけない意外な組み合わせのケーキが多く、とくに驚いたのが聞き慣れない“脂肪み(しぼみ)”を表現したリンゴのムースです。
“脂肪み”は第六の味覚といわれているそうで、名前の通り脂肪(油)を感じ取る味覚のことだそう。
一見、イクラを黄色くしたような粒状のトッピングはなんとオリーブオイル。噛むとプチッと弾けてオリーブオイルの豊かな香りがじわっと口の中に広がります。ケーキがより濃厚に感じ、ぜいたく感が増すような感覚になりました。
「スイーツアンサンブル セプテット 〜7つの小さなギフト〜」には、それぞれの味の特徴を記載した説明シートがついてきます。
シートを見ながら一品ずつ味わうのもいいですが、あえて見ずに食べて何味のケーキかを当てるという食べ方もおもしろいかもしれません。
ここでしか食べられないユニークなメニューで、鑑賞の最後を締めくくりましょう。
五感を使って楽しめる「BOTANICA MUSEUM」は、植物園と美術館が融合したようなみどころ満載の空間で、非現実的な体験ができるスポットです。郊外ですが、公共交通機関でのアクセスも便利。「BOTANICA MUSEUM」で五感を研ぎ澄ます新感覚な体験をしてみてはいかが?
■BOTANICA MUSEUM(ぼたにか みゅーじあむ)
住所:千葉県千葉市美浜区高浜7-2-4
TEL:043-277-8776
営業時間:火〜木曜10~16時、金〜日曜・祝日10〜16時(昼の部)、17~21時(夜の部)※入館は30分前まで
定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
料金:昼の部は大人(中学生以上) 1000円→オープン価格600円、子供(4歳〜小学生) 500円→オープン価格300円、夜の部は大人2000円→オープン価格1200円、子ども1000円→オープン価格600円※3歳以下は無料
■併設レストラン
住所:千葉県千葉市美浜区高浜7-2-4 BOTANICA MUSEUM内
TEL:070-8822-3861
営業時間:火〜木曜11~16時、17〜21時、金〜日曜・祝日11〜 20時30分※閉店30分前LO
定休日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
Text&Photo:藤原早菜(vivace)
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