
【おとなのソロ部】心と体をととのえる、代官山の癒やし空間「寺カフェ代官山」
東京・代官山にあるちょっと変わったカフェ「寺カフェ代官山(てらかふぇだいかんやま)」。おしゃれな街にたたずむのはその店名のとおり“お寺のカフェ”です。1日の始まりにぴったりの体にやさしい朝粥、自分を見つめる写経体験、そして、ほっと心が緩むお坊さんとのおしゃべりなど……、今注目の“心のよりどころ”になっています。
代官山にある心の“駆け込み寺”
東京・東急代官山駅から徒歩4分の場所にある「寺カフェ代官山(てらかふぇだいかんやま)」は、神奈川県川崎市の浄土真宗本願寺派「信行寺(しんぎょうじ)」が運営するユニークなカフェです。きっかけは、「(世間にとって)お寺には敷居の高いイメージがあり、今の時代、待っていては誰も来ない、それではこちらから出かけよう」という思いから。”現代人の駆け込み寺”をテーマに、誰もが気軽に立ち寄れる場として誕生したそうです。
広々とした店内は一見、一般的なカフェのよう。しかし、浄土真宗の御本尊である阿弥陀如来像が置かれるなど、随所にお寺の要素が散りばめられています。こちらで読経をすることもあるそうです。
「寺カフェ代官山」の最大の特徴は、「信行寺」の僧侶が駐在していること(平日は11~18時、土・日曜、祝日は15時~)。僧侶駐在時間には、仏教文化を身近に感じられるさまざまな体験をすることができます。今回は三浦性暁(みうらしょうきょう)僧侶に対応していただきました。
一日の始まりに滋味あふれる朝粥を
仏教にはお粥には10の功徳があるという意味の「粥有十利(しゅうゆうじり)」という言葉があります。その功徳は、「色(しき)=顔色や肌の色艶をよくする」「力(りき)=体力・気力が増す」「寿(じゅ)=寿命を延ばす」「詞清辯(ししょうべん)=頭の働きがよくなり、言葉が清くさわやかになる」などとされています。
「寺カフェ代官山」では、そんな心身にとって恵みのあるお粥を「寺カフェの朝粥」として提供しています(平日11~12時のみ、前日16時までに要予約)。胃腸に負担をかけずに水分と栄養分を体に届けてくれること、体を温める効果のおかげで免疫力アップにつながること、お粥に含まれる糖分が脳と体を活性化してくれることなど、朝粥には健康的な効果がたくさん! 1日のスタートにぴったりの食事なんです。
お粥は入店してから店内で土鍋を使って炊かれます。30分ほどかかるのでゆったりとした気持ちで待ちましょう。炊き上がると僧侶が1杯ずつ盛ってくれますよ。
お粥のほかにも、「サバ」、「出汁巻玉子とろろ昆布かけ」、「紀州の昔ながらの梅干し」など季節によって異なる8種類のおかずと、満月塩、だしのあん、お味噌汁、甘味がついてきます。お粥はやさしい味わいなので、満月塩で塩気を調整したり、おかずやあんをかけて味変したりしてみてください。もちろんおかずはそのまま食べてもOKです。
お坊さんと話せば不思議と心が軽くなる
お粥を食べた後は、僧侶と気軽に話せる「お坊さんと語ろう」を体験してみては? 悩み相談のほか、仏教の考え方を教えてもらう、日々のモヤモヤを聞いてもらうなど何でもOK。堅苦しさはなく、まるで友人と話すような温かさが魅力です。
実際に多い相談事は、職場や家庭での人間関係。しかし、悩みに「答える」ことはしないのだとか。まずは話すことを自分のなかで整理してもらいます。それに対して仏教的な教えからヒントになることを伝えて、悩みの本質に自分自身で気付く手伝いをしているのだそう。
著者が人間関係の悩みを打ち明けると、「人間は苛立つようにできています。怒りは煩悩の一つ。相手をなんとかしたいという欲があるのに聞いてくれない。でも、私たちは思うようにならない世界を生きています。私たちは不完全、みんな理想の自分ではありません。多くのことは自分の責任ですが、相手が悪いと思ってしまう。誰かのせいにしてもしょうがないのです」と三浦僧侶。無理に何かをするのではなく、現状を認めることが大事だと気付くと、モヤモヤしていた心がスーッと落ち着いていきました。
写経体験で静かに自分と向き合う
「寺カフェ代官山」では、誰でも気軽にできる写経体験も人気。写経初心者にも分かりやすい説明があり、道具もすべて用意されているので、手ぶらで参加できます。
写経とは、仏教の経文を一文字一文字書き写すこと。もともとはお釈迦さまの教えを書き写して広めるために始まったものですが、後に印刷技術が発達して書き写す必要がなくなったそうです。それでも写経することに功徳があると説かれるようになり、修行の意味合いが強くなったといいます。
写経についてや書き方などのひと通りの説明の後、「ペン字書きのように筆を寝かせず、まっすぐ下ろして、筆圧をかけずに筆先で書くことを意識してください」と三浦僧侶がアドバイスをしてくれました。
「雑念を払って精神を集中させなければ」と意気込むも、いざやってみると気を抜いた瞬間に力が入ってうまく書けなかったり、別のことを考えてしまったり……。それを三浦僧侶に伝えると「我が心が騒いでいる、集中できない自分がいることに気付けることがいいんですよ」とのこと。思うようにいかない自分に気付くことが浄土真宗での写経なのだそうです。1時間30分ほどで写し終わりますが、自分の心地よいペースで進めてくださいね。
カフェでありながら、仏教の学びや心の対話ができる「寺カフェ代官山」は、静けさとやさしさに満ちた場所。日々の慌ただしさを少し手放し、自分自身と向き合う時間をくれるこの空間は、まさに現代の“心のよりどころ”です。代官山に訪れたら、ちょっと寄り道してみませんか?
■寺カフェ代官山(てらかふぇだいかんやま)
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-33-15 EN代官山ビル1F
TEL:03-6455-3276
営業時間:11~22時(20時LO)
定休日:なし
■おすすめの利用シーン:仏教文化を身近に感じたいとき、誰かに悩みを聞いてほしいとき、健康的に1日をスタートしたいとき
Text:河部紀子(editorial team Flone)
Photo:日高奈々子
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