
【大阪レトロ建築】「日本銀行大阪支店」を見学! 名建築や日本銀行の歴史に感嘆
大阪・中之島の地で 中央銀行として日々業務を行う「日本銀行大阪支店」。その旧館は、築120年以上の歴史をもつ貴重な近代建築で、内部見学できるツアーも行われています。格式ある外観や普段なかなか見ることのない旧館の内部、大人も子どもも楽しめる体験型展示の魅力を紹介します。
「日本銀行大阪支店」旧館は辰野金吾が手がけた名建築
「日本銀行大阪支店」は、東京に「日本銀行本店」が設立された69日後、明治15年(1882)年12月に開設されました。明治36年(1903)、2度目の移転の際に中之島に建設されたのが現在の旧館です。
設計は、「日本銀行本店」の旧館や東京駅丸の内駅舎を手がけた建築家・辰野金吾。ベルギー国立銀行などをモデルにしたネオバロック様式の格式ある洋風建築は、今もなお「日本銀行大阪支店」の顔ともいえる存在です。
建築から約80年経ったころには、老朽化と地盤沈下のため壊される予定でしたが、大阪市民や文化庁からの保存希望を受けて、昭和55年(1980)から2年間かけ、旧館の改築工事と、新館の建築が行われました。
外壁は花崗石と内側のレンガ壁を残しつつ補強。戦時中に空襲を避けるために塗った薄墨や汚れなどで薄黒くなっていたのを落とし過ぎないようにしながら、新館との色味を調整したそう。
現在見られる外壁や屋根などは、往時の姿を保っているのです。
目を引くのはドーム型の屋根。その両脇には三角屋根があり、緑青が見事!かつては三角屋根の下が吹き抜けのロビーだったため、ガラスを用いて自然光を取り入れていたそう。新館を建てる際には、屋根や窓回りに銅板を用いて、旧館との調和が図られました。
玄関ポーチは、角柱と丸柱の両方が用いられているのが特徴です。
柱頭には、優美な渦巻き模様が特徴的なイオニア式の装飾が!
正面玄関には鉄扉が取り付けられていますが、通常は閉まっており、開けられることはないそう。
実際は、正面玄関を進むとすぐ2階までの吹き抜けになっており、その先は中庭に通じるコンコースになっています。
さらに旧館の内部も復元・保存されているほか、「日本銀行大阪支店」の業務や歴史を知ることができる広報ルームも備えています。新館の営業室と普段は入れない旧館内を、コースに従って見学できるツアーも受付中です。ここからは、そのコースに沿って館内を紹介していきましょう。
「日本銀行大阪支店」のみどころ①旧館 趣たっぷりの記念室
「日本銀行大阪支店」内の見学ツアーでは、まず日本銀行の機能や役割を解説するDVDを鑑賞した後、新館の営業室へ。営業室は、防犯のため柱が全くない見通しのよい広い空間です。日ごろなかなか見ることのない業務の様子を実際に見学できます。
続いて、旧館の内部へ。明治時代の部材を使用して再現した記念室は、歴代支店長が応接室として使用していただけあって、重厚感のある造りでうっとり。ドーム型屋根の真下に位置する部屋で、見上げるとドーム天井と12枚のステンドグラスが!
レトロな淡い色合いのステンドグラスの間には、4枚の木製レリーフが配置されています。上半分には伝説上の鳥・鳳凰が、下半分には目玉のようなマークで知られる日本銀行の行章が彫刻されていて、4枚すべての模様が異なるそう。
壁をくりぬいて作られたアルコーブ(飾り棚)は、17世紀のフランスで流行したというホタテ貝をモチーフにした上部の装飾が美しい!
扉の上部に施された彫刻は、草花がモチーフ。ステンドグラスの内側の四角いガラスは開閉できるようになっています。
マントルピースは、かつては扉の中にパイプがあり、蒸気を通すことで部屋を暖めていたそう。
室内に配されたチェアや花を置くために使われた台は、120年以上前のもので、当時の高度な技術に惚れ惚れするような繊細な彫刻が見もの!チェアは実際にふれることができるので、感触を確かめながら、往時に思いを馳せてみてください。
「日本銀行大阪支店」のみどころ②旧館 クラシックな階段室
続いて、階段室を見学。建設当時は、御堂筋に面する正面玄関の奥に続いていた内玄関と階段を、当時の部材を再使用しながら復元しています。
階段は柱を用いていないのが特徴。正面から見ると、美しい弧を描くアーチによって重量を分散させて支える構造が一目瞭然!
専門家からの評価も高いというディテールのデザインも必見です。
階段の手摺や、部屋全体を支える階段室の柱は、腐りにくくて木目が美しい欅(けやき)で作られています。手摺はバラ、柱の柱頭飾りは古代ギリシア建築のひとつであるコリント式の彫刻で、植物がモチーフに。
繊細な飾り欄間や、銀行の地図記号になっている分銅をあしらったステンドグラス、第二次世界大戦後に製作されたというシャンデリアなど、美しい設え(しつらえ)の数々には目を奪われます。
「日本銀行大阪支店」のみどころ③旧館 見てさわって学べる広報ルーム
階段室を堪能した後は、広報ルームへ。
資料展示コーナーでは、開業当時の新聞記事や手書きの帳簿などを展示して「日本銀行大阪支店」の歴史を紹介するほか、パネルや写真などを用いて日本銀行の業務や役割について、分かりやすく解説しています。
さらに、一万円券十束封(1億円)の重さや、新しい日本銀行券(お札)の偽造防止技術が体験できるコーナーも!
損傷した日本銀行券の模擬鑑定や、思わず驚く撮影スポットもあり、大人も楽しめる社会科見学のようです。
日本の経済・建築文化を象徴する名建築が残る「日本銀行大阪支店」。格式と歴史をもつ旧館はもちろん、新館や広報ルームも巡れる見学ツアーでは、見る感動と知る楽しさが詰まった貴重な時間が過ごせます。
しかも充実の内容ながら無料。見学希望日の90~14日前までに、見学予約サイトから先着順で受け付けているので、ぜひ申し込んでみてください。
■日本銀行大阪支店(にっぽんぎんこうおおさかしてん)
住所:大阪府大阪市北区中之島2-1-45
TEL:06-6206-7742(日本銀行大阪支店営業課見学担当、平日9~17時)
見学日時:火・水・木曜の10~11時、13時30分~14時30分(祝日、年末年始、行事などのため支障のある日〈回〉を除く)※要事前予約
見学人数:1~15名まで(小学4年以上 ※小学生は保護者または引率者の同伴が必要)
料金:無料
予約受付:見学希望日の90~14日前までに日本銀行大阪支店見学予約サイトにて先着順で受付
アクセス:OsakaMetro・京阪淀屋橋駅7番出口から徒歩3分
Text:平林みわ(ピース)
Photo:大﨑俊典
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