【新潟県長岡市】発酵の町・摂田屋の注目スポット5選! 柿の種のルーツにも迫る
江戸時代から酒、味噌、醤油の老舗が数多く残る長岡市郊外の摂田屋(せったや)が、近年、静かなブームとなっています。かつて多くの人が行き交った気配が色濃く残る旧三国街道の周辺に、蔵や古民家を改装した発酵食やスイーツの食事処も点在し、訪れる人の心をつかんでいます。近くにはあの柿の種の発祥の地も! おいしく楽しく散策してみましょう。
「旧機那サフラン酒本舗」で絢爛豪華な鏝絵蔵に驚く
長岡市の摂田屋には、国の有形文化財に登録されたものを含め、歴史ある蔵や建物が並ぶゆかしい家並が続いています。「旧機那(きゅうきな)サフラン酒本舗」の鏝絵蔵もそのひとつ。明治・大正期に薬草酒「機那サフラン酒」で財を成した吉澤仁太郎(よしざわにたろう)が、惜しみなく私財を投じて建てた蔵です。特徴は、蔵とは思えないほど多い17もの窓すべてに見事な鏝絵(こてえ)の装飾が施されていること。絵柄は鳳凰(ほうおう)や麒麟(きりん)などの霊獣、恵比寿や大黒天といった七福神など多岐にわたります。躍動感溢れる構図や立体感から目が離せません。
蔵の東面には、鳳凰、麒麟(きりん)、玄武(げんぶ)といった霊獣が描かれています。鮮やかな青色は、貴重なラピスラズリからとったウルトラマリンを使用しており、眩しいほど鮮やか。冬は雪雲に閉ざされる長岡人の青空への希求のようにも見えてきます。破風(はふ)部の2頭の龍の鏝絵(こてえ)は、朝日に照らされると、いっそうくっきり姿が浮かび上がるそう。この見事な鏝絵を手掛けたのは河上伊吉(かわかみいきち)。破風装飾の左端には、左官の伊吉を表す「佐伊(さい)」のサインを見ることができます。
サフラン酒本舗の看板を掲げた主屋から鏝絵蔵の中に入り、見学することができます。
主屋と接続しているので外部からは見えませんが、蔵の入口にも見事な鏝絵が! しかも大黒天、恵比寿、鶴、亀の縁起物尽くし。内部には機那サフラン酒の歴史が展示されています。明治の実業家が夢を託した鏝絵蔵のめくるめく仁太郎ワールド! 鏝絵蔵はじめ敷地内に点在する12の建物は、平成18年(2006)に国の登録有形文化財に登録されています。
※なお鏝絵蔵は同じ敷地内にある次述の「摂田屋6番街 醗酵ミュージアム米蔵」の営業時間内であれば、いつでも見学可。入場は無料です。
「摂田屋6番街 醗酵ミュージアム米蔵」でランチ&ショッピング
鏝絵蔵の対面に立つのは「摂田屋6番街発酵ミュージアム・米蔵」。リニューアルした吉澤仁太郎宅の米蔵を活用して2024年12月6日にオープンしました。「おむすびカフェ 6SUBI(むすび)」、発酵みやげの売店、丁寧な案内が受けられる摂田屋観光案内所などが入っています。ひと息つきつつ、町歩きの計画を立てましょう。
「おむすびカフェ6SUBI」では、米も塩も具も新潟にこだわった握りたてのおむすび、ドリンクやスイーツを味わうことができます。具は発酵食材を活かした新感覚のものばかり。どれを食べよう……目移りしてしまいます。
味噌、醤油、酒などの発酵食だけでなく、地元作家の手になる器やかわいい雑貨が並ぶショップコーナーも、どれも欲しくなってしまう充実の品揃えです。
眼福口福のひとときでした。ちなみに鏝絵蔵も摂田屋6番街発酵ミュージアム・米蔵も、かつての機那サフラン酒本舗にあり、敷地内には庭園や離れ(外観のみ見学可)もあります。摂田屋6番街発酵ミュージアム・米蔵の営業時間内なら自由に見学することができます。
■摂田屋6番街発酵ミュージアム・米蔵(せったやろくばんがいはっこうみゅーじあむ こめぐら)
住所:新潟県長岡市摂田屋4-6-33
TEL: 0258-86-8545
料金:入場無料
営業時間:9~17時(おむすびカフェ6SUBIは10~16時)
定休日:火曜(祝日の場合は翌平日)
アクセス:JR宮内駅から徒歩約10分
旧三国街道をまったりおさんぽ
次のスポットまでは旧三国街道の散策を経て向かいましょう。雁木(がんぎ)通りを南下すると、「星六(ほしろく)」の看板が見えてきました。明治時代から続く老舗の手作り味噌専門店で、無農薬・無添加、国産原料100%にこだわり、杉桶で長期熟成させた味噌は、濃厚な旨味とコクで知られています。
雁木通りから1本裏側に入ると、かつての面影を彷彿させる旧三国街道です。
しばらく行くと「越のむらさき」の看板が見えてきました。天保2年(1831)創業で、昔ながらの天然醸造にこだわり、ゆっくりと熟成させることで生まれる上質な旨味に定評があります。店舗前の「辻地蔵(つじじぞう)」は文化3年(1806)に祀られたもので、台座には「右ハ江戸、左ハ山道」と刻まれています。おおぜいの人が行き交った古い街道であることが伝わってきます。
「越のむらさき」の対面には、親子のキツネ、笑顔のキツネなどたくさんのかわいらしいキツネが祀られた竹駒稲荷があります。「竹駒稲荷(たけこまいなり)」と「辻地蔵」は、毎年8月下旬に感謝の祭が行われているそうです。
「LIS摂田屋」の発酵ドリンクでブレイク
旧三国街道に別れを告げて元の雁木通りへ歩を向けると、ほどなく立派な門柱が見えてきました。ゆったりとした敷地には、3つの建物が立っています。ここは長岡市にある明治35年(1902)創業の老舗和菓子店・江口だんごの摂田屋店。敷地に入るといちばん手前にある蔵造りのコンクリートの建物が「LIS摂田屋」。奥の2棟が「江口だんご摂田屋店」です。
昭和5年(1930)建造の、地上2階・地下1階の鉄筋コンクリート造りの蔵をリノベーションしたもので、モダンな中にも懐かしさを感じさせます。
1階 醸造リキュールと地域商品
和洋のアンティークを感じさせる落ち着いた店内に、新感覚の日本酒リキュールや、ゲーム感覚で試飲を楽しめるセットなどが揃い、日本酒に敷居の高さを感じている初心者にも親しみやすい商品が揃っています。
2F 本と暮らしの作品展
2階では、店主が厳選した本の販売や地域の作家やアーティストの展示などのイベントを行っています。地元の人ならクスっと笑ってしまうローカルな看板をモチーフにした製品、四季の美しい風景の中を旅するたびねこシリーズなど、長岡らしさを凝縮した雑貨や本が揃います。
LISとはLOCAL IDENTITY STOREの略。まさに長岡・新潟のアイデンティティを、おしゃれな発酵飲料やポップな楽しさと共に伝えてくれる「LIS摂田屋」です。
■LIS摂田屋(りすせったや)
住所:新潟県長岡市摂田屋4-8-28(江口だんご摂田屋店敷地内)
TEL:070-2151-0351
営業時間:10~17時
定休日:火曜
アクセス:JR宮内駅から徒歩約7分
「江口だんご摂田屋店」で醤油おはぎや焼き立て団子を味わう
数寄屋造りの建物は、2022年7月22日にオープンした「江口だんご摂田屋店」。前出の「越のむらさき」創業一家の自宅があった場所で、店舗の建物は創業家が使用していた古民家を再生したものです。実演販売コーナーの前には桜の古木があり、開花時期には「花も団子も」楽しめるという贅沢さです。
総けやきの数寄屋造りの面影を残しつつ、建物がもつ美しさを最大限に活かしています。もとから美しい庭園に面していたため、その風景をお客さまに楽しんでもらいたいと、縁部分を一段掘り下げる工夫をしています。
看板メニューは焼き立て団子のセット。箸休めは自家製の糀漬け、茶は村上の粕雪煎茶(はくせつせんちゃ)。器も美しく目からも楽しめます。その他、パフェやお汁粉、夏はかき氷など甘味メニューが充実しています。
摂田屋店限定販売なのは、醤油味の珍しい「摂田屋赤飯」270g590円、ご飯に越のむらさきの醤油で隠し味をした「摂田屋おはぎ」。おはぎの旨味のある甘じょっぱさは多くの人に支持されています。
実演コーナーでは焼きたてみたらしだんごやおはぎをテイクアウトすることができます。「焼きたてみたらしだんご」2本250円、「摂田屋おはぎ」1個250円。
摂田屋の蔵元の酒を加えた2種のどらやきも評判です。ひとつは機那サフラン酒風味の「サフランどらやき」、左は天保13年(1842)創業の長谷川酒造の酒を生地に練り込んだ「どらやき」。いずれも摂田屋の味です。
甘味ではありませんが、だんごセットで味わっておいしさに驚いてしまったお茶もおみやげにしました。新潟県の最北部にある村上は、冬はすっぽり雪に埋もれる最北のお茶処。その村上の冨士美園が江口だんごとタッグを組んで手掛けたこのお茶は、摂田屋の酒蔵の酒粕が肥料。雪の毛布と酒粕の栄養が育んだ、ほんのり甘味のある深い味わいです。
「江口だんご摂田屋店」は、和菓子のおいしさを追求する真摯な努力に加え、摂田屋の発酵食文化とやわらかくつながり、新たな価値を創出しているようです。つながりあって変化する。まさに発酵そのもののよう。
本店も旧長岡藩の家老職の屋敷や、日本有数の豪雪地・十日町の農家を再生したものです。長い時をかけて新潟の地に育まれたものの本質的な美しさや強さを次世代に伝える試みです。すべてLOCAL IDENTITYを軸にした姿勢に貫かれていました。
■江口だんご摂田屋店(えぐちだんごせったやてん)
住所:新潟県長岡市摂田屋4-8-28
TEL:0258-39-9173
営業時間:9時30分~18時、実演販売10時~16時30分、喫茶10~17時
定休日:火曜
アクセス:JR宮内駅から徒歩約7分
「新潟 柿の種発祥の地」へ
最後に訪れたのは「江口だんご摂田屋店」から1.3km、車で3分のところにある浪花屋製菓の「新潟 柿の種発祥の地」。浪花屋製菓は、今では米菓の一ジャンルとなった柿の種を最初に開発したところと聞き、訪ねてみました。
「新潟・長岡 柿の種発祥の地」は、柿の種誕生100周年を記念して、浪花屋製菓の工場がある敷地内に2024年10月1日にオープン。レトロな建物の扉を開くと、柿の種ワールドが広がっていました。
創業者の妻がうっかり踏んでしまい小判型の金型が歪んだことからこの形になったという柿の種のルーツ、現在の製造工程、新潟県民にはなじみ深い歴代CMなどの展示があります。また創業者の今井與三郎(いまいよさぶろう)は、今や全国の豪雪地で使われている消雪パイプの考案者であるという驚きの情報も。柿の種だけでなく消雪パイプの発祥の地でもあったのですね。
失敗を成功のもとということわざ通りに、煎餅でもおかきでもない「柿の種」という不動の一分野が米菓界に確立されたことがわかりました。浪花屋製菓の柿の種がおいしかったことが人気の理由であるのはもちろんのこと、登録商標を取らなかったことで多くのメーカーが柿の種の名で商品を製造販売できたというのも大きな要因。なんという太っ腹でしょうか。
試食コーナーでは元祖柿の種、大辛口柿の種、大粒ゴールド、ソフト柿の種と、そのほか新製品など1種の試食ができます。好みの味を見つけておみやげにしてみましょう。
みやげコーナーには、懐かしい缶入りの柿の種各種が揃うのはもちろん、目が釘付けになってしまうほど楽しい、柿の種をモチーフにした雑貨もたくさん並んでいます。
敷地内には成種神社(なるたねじんじゃ)があります。これは柿の種発祥逸話にちなみ、失敗を成功に変えるという願いを込めたパワースポット。これはお参りせねば!
■新潟・長岡 柿の種発祥の地(にいがた ながおか かきのたねはっしょうのち)
住所:新潟県長岡市摂田屋町2680
TEL:0258-86-7033
営業時間:10時~16時
定休日:年末年始
アクセス:関越自動車道長岡ICから7.3km、約20分
長岡市摂田屋。長い歴史をもつ多くの醸造蔵が、受け継がれた発酵の技を日々の仕事の中で次世代につなぎ、確固たる地域性が生きていました。
Text:松尾裕美
Photo:村岡栄治
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