【美術ライターが選ぶ1月のアート展】現代アートにデザイン。いろんなテーマで楽しむ「アート」の基本

横浜美術館「横浜美術館リニューアルオープン記念展 いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」より 林典子《sawasawato》(部分)2013年-ongoing 個人蔵

【美術ライターが選ぶ1月のアート展】現代アートにデザイン。いろんなテーマで楽しむ「アート」の基本

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美術ライターの浦島茂世さんがおすすめする、1月のアート展。この冬は、興味深い視点で「アート」の基本的な知識を学べ、視野を広げることができる、かつ美しいものに出会える展覧会が多く開催されています。そのなかから、現代アートやデザイン、そして国際関係について学べて楽しい展覧会をピックアップしました。

Summary

現代アートの「いま」を知る| 森美術館/「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」

「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」展示風景
「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」展示風景
「六本木クロッシング」は、「森美術館(もりびじゅつかん)」が3年に一度開催する、現代アートシーンを総覧する定点観測的な展覧会。8回目となる「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」が、2026年3月29日(日)まで開催中です。今回は、「時間」をテーマに、「森美術館」のキュレーターに加えて国際的に活躍するアジアのゲストキュレーター2名を迎え、日本で活動するアーティスト、および日本にルーツがあり海外で活動するアーティスト全21組を紹介します。

毎回、驚きに満ちた作品ばかりが登場する「六本木クロッシング」ですが、今回はさまざまなメディアの作品が並んでいるのが特長。絵画や彫刻、映像だけでなく、工芸や手芸作品、コミュニティプロジェクトなども作品として並びます。現代アートって、本当に自由なんだな、ということを実感します。
和田礼次郎《MITTAG》2025年 展示風景  「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」
和田礼次郎《MITTAG》2025年 展示風景 「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」
たとえば、和田礼治郎の《MITTAG》は、ガラスのなかにブランデーが注がれた作品。ブランデーの水面は、窓の向こうにある地平線と重なるように作られています。ちなみに、MITTAGとはドイツ語で正午のことだそうです。
A.A.Murakami《水中の月》2025年 展示風景  「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」
A.A.Murakami《水中の月》2025年 展示風景 「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」
村上あずさとアレキサンダー・グローブスによるユニットA.A.Murakamiによる《水中の月》は、樹木のような彫刻から、シャボン玉が生まれ落ち、水面ではずんだり、転がったり、弾けたりするインスタレーション。シャボン玉生成における複雑な動作はAIが制御しています。白いシャボン玉がぽよんぽよんと跳ねる様子は、新しい生物のようでずっと見ていられそう。
ズガ・コーサク+クリ・エイト《地下鉄出口 1a》 2025年 展示風景 「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」
ズガ・コーサク+クリ・エイト《地下鉄出口 1a》 2025年 展示風景 「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」

現代アートのアーティストたちは、世の中の動きを敏感に察知し、自分たちの作品に反映させていきます。作品を通して、アーティストが何を考えているのか、どのようなことを問題に思っているのか、どのような未来を目指しているのか、などを考えながら見ていくと、現代アートだけでなく、いま私たちが生きている社会についても考えることができる、とても刺激的な展覧会です。

■森美術館/「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」
会期:開催中~3月29日(日)
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
休館日:なし
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
入場料:平日/一般2000円(オンライン1800円)、大高生1400円(オンライン1300円)、中学生以下無料、シニア(65歳以上)1700円(オンライン1500円)
土日休日/一般2200円(オンライン2000円)、大高生1500円(オンライン1400円)、中学生以下無料、シニア(65歳以上)1900円(オンライン1700円)
開館時間:10~22時(入場は閉館30分前まで)※火曜のみ17時まで
アクセス:東京メトロ日比谷線六本木駅1Cから徒歩3分、東映地下鉄大江戸線六本木駅から3出口徒歩6分

日本と韓国が歩んだ80年を美術でたどる| 横浜美術館/「横浜美術館リニューアルオープン記念展 いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」

中村政人《トコヤマーク/ソウル》1992年 個人蔵
中村政人《トコヤマーク/ソウル》1992年 個人蔵
リニューアルオープンし、立て続けに興味深い展覧会を開催している「横浜美術館(よこはまびじゅつかん)」。2026年3月22日まで開催中の「いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」は、韓国の国立現代美術館との約3年間のリサーチと準備期間を経て開催される展覧会です。韓国の国立現代美術館の所蔵品や、この展覧会のために作られた新作を含む約160点を通して、1965年の日韓国交正常化から60年となる節目に合わせ、1945年以降、80年にわたる日本と韓国の美術とその関係を紐解いていきます。

冒頭に展開されるのは、日韓両国で近年再評価が進んでいる曺良奎(チョ・ヤンギュ)の作品。曺は労働者として働きながら、その実感をもとにした絵画を制作する1950年代に活躍した画家です。その活躍を期待されていたものの、1959年12月から始まった帰国事業で朝鮮民主主義人民共和国へ渡ります。その後、1968年以降現在にいたるまで、その消息は掴めていません。
展示風景より曺良奎の作品
展示風景より曺良奎の作品
フォトジャーナリストの林典子による《sawasawato》は、帰国事業で夫とともに朝鮮民主主義人民共和国に渡った日本人妻のインタビューやポートレイトを元にした作品です。登場する女性たちの多くは、現在まで一度も帰国していません。
林典子《sawasawato》(部分)2013年-ongoing 個人蔵
林典子《sawasawato》(部分)2013年-ongoing 個人蔵
このような状況もありながらも、日本と韓国は1965年に国交を正式に樹立します。以後、日本、韓国双方でも同時代の美術を紹介する展覧会が展開されるようになり、少しずつお互いに刺激をしあう関係が生まれるようになりました。展覧会では、この動きを丁寧に追っていきます。

展示風景より
展示風景より
展示風景より
展示風景より
そして、1995年に韓国では光州ビエンナーレが、2001年に日本では横浜トリエンナーレが開幕。それぞれの国で、新世代の作家たちが台頭していきます。1990年に弘益大学大学院に入学した中村政人は、同地でチェ・ジョンファやイ・ブルらが属していたグループのメンバーとつながりをもつようになります。そして、92年にソウルで村上隆と「中村と村上」展を開催。日韓の現代アートを通した関係はより一層密になっていくのです。

展示風景より 中村政人の作品
展示風景より 中村政人の作品
このほか、この展覧会では日本にもゆかりが深い韓国人アーティスト、ナムジュン・パイクや、現代の作品まで幅広く展示します。さまざまな作品を見ていると、日本と韓国は似ているところもたくさんあるし、明確に異なるところも同じくらいたくさんあると感じました。共通点や相違点を意識しながら、作品そのものもじっくり見ていくと、お隣の国、韓国についてより身近に感じられる展覧会です。

■横浜美術館/「横浜美術館リニューアルオープン記念展 いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」
会期:開催中~3月22日(日)
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
休館日:木曜、12月29日(月)~2025年1月3日(土)
TEL:045-221-0300
入場料:平日/一般2000円、大学生1600円、中高生1000円、小学生以下無料、ペア券(一般2枚)3600円
開館時間:10~18時(入館は閉館30分前まで)
アクセス:みなとみらい線みなとみらい駅3番出口から徒歩3分

6人の巨匠が「デザインの先生」に! | 21_21 DESIGN SIGHT/企画展「デザインの先生」

21_21 DESIGN SIGHT 企画展「デザインの先生」 展示風景より
21_21 DESIGN SIGHT 企画展「デザインの先生」 展示風景より
六本木の「東京ミッドタウン」にある「21_21 DESIGN SIGHT(トゥーワン・トゥーワン・デザインサイト)」で3月8日まで開催中の企画展「デザインの先生」は、デザインを通して世の中に様々な影響を与えた6人の巨匠たちを“デザインの先生”として紹介する展覧会です。

 この展覧会で紹介するのは、ブルーノ・ムナーリ、マックス・ビル、アキッレ・カスティリオーニ、オトル・アイヒャー、エンツォ・マーリ、ディーター・ラムスの6名。彼らはそれぞれが時代の最先端を走り、その活動をもって社会を新しく切り開いたという共通点があります。展覧会では、彼らの軌跡を改めて振り返っていきます。

ブルーノ・ムナーリの絵本
ブルーノ・ムナーリの絵本
ブルーノ・ムナーリはイタリア生まれのデザイナー。アーティスト、絵本作家、教育者としても精力的に活動していました。彼は数多くの絵本を発表し、世界各地で子どもたちのために、自ら考え、発見できる力をつけるワークショップを行っていました。展覧会では彼が手掛けたプロダクトのほか、絵本や知育玩具も展示します。
アキッレ・カスティリオーニによるデザイン製品
アキッレ・カスティリオーニによるデザイン製品
「あるものごとについて、どのような形にするのか、解決するのか(プロジェクト)について、筋道を立てて考え、そして実践すること」をイタリア語で「プロジェッタツィオーネ」と呼びます。照明のデザインで知られるイタリア人デザイナー、アキッレ・カスティリオーニは、このプロジェッタツィオーネの概念に基づき、デザインを手掛けました。彼のデザインはときには奇抜に見えることもありますが、使う人のことを考えて作った理にかなったものでした。
オトル・アイヒャーによるグラフィック作品(撮影:木奥恵三)
オトル・アイヒャーによるグラフィック作品(撮影:木奥恵三)
オトル・アイヒャーはドイツを代表するグラフィックデザイナー、そしてタイポグラファー(フォントのデザイナー)。彼は、1972年に開催されたミュンヘンオリンピックのデザイン・コミッショナーに就任、ピクトグラムも活用したデザインは国際的に評価されました。

また、ルフトハンザ航空など数々の企業ロゴやCI(企業が掲げる理念や文化など、その企業らしさを可視化させたもの)などを手掛けています。また、ドイツにかつてあった、ドイツのデザインに強く影響を及ぼしたウルム造形大学の創設者の一人としても知られています。
ディーター・ラムスによるプロダクト製品
ディーター・ラムスによるプロダクト製品
エンツォ・マーリによるデザイン製品
このほか、マックス・ビルやエンツォ・マーリ、ディーター・ラムスといった、世界的デザイナーを「デザインの先生」として紹介。デザインの世界で、独自の道を切り開いていった巨匠の足跡をたどることで、デザインだけでなく、私たちが未来をどのように考えるべきかもわかってきそうな展覧会です。

■21_21 DESIGN SIGHT/企画展「デザインの先生」
会期:開催中~2026年3月8日(日)
住所:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
休館日:火曜
TEL:03-3475-2121
入場料:一般1600円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
開館時間:10~19時(入場は閉館30分前まで)
アクセス:都営地下鉄大江戸線六本木駅、東京メトロ日比谷線六本木駅から徒歩5分

「新しいことを知る」ことを楽しむ

それぞれの展覧会は、現代アートやデザイン、日韓関係とジャンルはバラバラですが、その分野を詳しい人にはより深く、初心者の人にはわかりやすく感じる共通点があると思います。ただ、ポイントがひとつ。「キャプションを読むことはできるだけ後回し」に。

知らない分野の作品を見ると、作品を見るまえに解説キャプションを読みこんでしまい、作品そのものをしっかり見ずに終わってしまうことも多々あります。

 だから、まずはキャプションを読まずに作品そのものと対峙してみてください。そして、そのときに浮かんだ感想や疑問を忘れずにしておく。そのあとにキャプションを読み、疑問が解決しなかったら家で調べる。これのスタイルを身につけると、一つの展覧会をじっくりゆっくり楽しめるようになりますよ。


Text&Photo:浦島茂世

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