【おとなのソロ部】都心の非日常空間で心をととのえる。東京・五反田の「薬師寺東京別院」で写経体験

【おとなのソロ部】都心の非日常空間で心をととのえる。東京・五反田の「薬師寺東京別院」で写経体験

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東京・五反田のビルの合間にある「薬師寺東京別院(やくしじとうきょうべついん)」は、都会にいながらにして、日常の延長で気軽に写経ができるお寺として知られています。写経は宗派や年齢を問わず誰でも参加でき、特別な準備も不要。毛筆でも鉛筆でも書けるスタイルで、お手本の上に用紙を重ね、なぞるだけで取り組めるので、初めての人でも安心です。

Summary

写経を身近に。「薬師寺東京別院」の「お写経」

「薬師寺東京別院」の外観

五反田の街並みに溶け込むように佇む「薬師寺東京別院」。1300年以上の歴史を誇る奈良「薬師寺」を本山とする別院として、都心に暮らす人々にも仏教の教えと祈りの時間を届けたいという思いから開かれました。

JR山手線・都営浅草線・東急池上線 五反田駅から徒歩約7分とアクセスが良く、ビルが立ち並ぶエリアにありながら、一歩境内に入ると空気がすっと静まります。

好胤和上像

境内に入ると、好胤和上像(こういんわじょうぞう)と書かれた像があります。奈良「薬師寺」の復興を成し遂げ、「薬師寺東京別院」の創建と発展にも尽力した高田好胤和上(たかだこういんわじょう)を偲(しの)んで安置されているものです。

写経場の入り口

奈良「薬師寺」は、病気平癒や心身の安寧を願う「薬師如来(やくしにょらい)」を本尊とするお寺。古くから、人々が写経を通して願いや感謝を文字に託してきた歴史があります。「薬師寺東京別院」でもその精神は受け継がれ、写経は特別な修行ではなく、日常の中で心を整えるための時間として大切にされています。

写経の申込用紙

写経をするには、まず受付で申込用紙に記入します。「薬師寺東京別院」では、書き写す経典によって写経の内容や所要時間、納経料が異なります。

初めての人におすすめなのが、「般若心経(はんにゃしんぎょう)」。一巻2000円で比較的文字数が少なく、1時間~1時間30分ほどで取り組めるため、写経体験の入口として選ばれることが多いそうです。よりじっくり向き合いたい人には、薬師如来の教えが説かれた「薬師経」(一巻4000円)や、法相宗の思想にふれられる「唯識三十頌(ゆいしきさんじゅうじゅ)」(一巻5000円)という選択肢もあります。

所要時間は内容によって異なりますが、持ち帰るか再度訪れるかして、日を分けて書き進めることもできます。その日の予定や気持ちに合わせて無理なく選びましょう。

写経について説明する手元
写経について説明する手元

写経が初めてという場合も、僧侶やスタッフから進め方や心構えについて丁寧な説明があるので、ご安心を。

輪袈裟

お写経を始める前には、身業(しんごう)・口業(くごう)・意業(いごう)の三つの行い=三業(さんごう)を清める作法があります。まず、輪袈裟(わげさ)(僧侶が着装する袈裟を簡易化したもの)を首にかけ、気持ちを整えます。

道場に入る際は象の形をした香炉「香象」をまたぐ
道場に入る際は象の形をした香炉「香象」をまたぐ
「香象」をまたぐことでお香の煙を体にまとい身を清められる
「香象」をまたぐことでお香の煙を体にまとい身を清められる
丁子

道場の入口に用意された「丁子(ちょうじ)」を口に含み、体内を清めます。そのまま口に含んで写経を行うのがならわしですが、難しい場合はその場で捨てても問題ありません。三業を清めたら、いよいよ写経の時間が始まります。

ソロおすすめPoint
写経前の所作は、ひとりだからこそ落ち着いて取り組める時間。香象をまたぐタイミングや輪袈裟のかけ方、丁子についても、その都度丁寧な説明があり、周囲と歩調を合わせる必要はありません。静かな空気のなかで自分のペースを保ちながら所作を行うことで、気持ちが自然と内側へ向いていきます。


心を落ち着かせ、いざ写経スタート

写経場の様子

「薬師寺東京別院」の写経場は、都心のお寺とは思えないほどゆったりとした空間。広々とした室内に写経用の机が整然と並び、席数は十分に確保されているため、混み合う時間帯でも落ち着いて取り組めます。

隣との距離がほどよく取られていて、周囲を気にせず自分の世界に集中できるのが印象的。天井が高く、空気がすっと通るような静けさのなか、筆を運ぶ時間が流れていきます。ひとりで参加しても居心地がよく、「静かに過ごす場所」としての配慮が行き届いた写経場です。

机に置かれた写経作法について書いた紙を一読
机に置かれている、写経作法について書かれた紙を一読
墨をする様子

席についたら、背筋を伸ばして姿勢を正し、静かに墨をすります。硯に墨がふれる音に意識を向けていると、自然と気持ちが切り替わり、背中がすっと伸びるのを感じるはず。まわりに人がいても不思議と気にならず、ひとりの世界に没頭できる。集中の時間が、ここから始まります。

写経は鉛筆でもOK

筆が苦手という人も心配いりません。「薬師寺東京別院」の写経は、鉛筆での写経もOK。自分に合った道具を選べるので、無理なく、落ち着いて写経に向き合えます。

まっさらな紙を重ね合わせて写経を開始
まっさらな紙を重ね合わせて写経を開始
写経をし始める様子

最初の一筆には、その日の気持ちが表れるもの。紙にふれた瞬間にふっと心が静まり、自然と写経の世界へ引き込まれていきます。

書き進めるうちに筆使いが慣れていく
書き進めるうちに筆使いが慣れていく
同時に心が休まっていくのを感じつつ……
同時に心が休まっていくのを感じつつ……
写経を進める様子

書き進めるうちに、周囲の音や気配は少しずつ意識から外れていき、自然と自分自身と向き合う感覚に。考えごとを手放し、ただ文字を書くことだけに集中する…。そんな、無心の時間が流れていきます。

手に墨がつかないよう、筆置きの下に紙を差し込みスライドさせながら書き進められる
手に墨がつかないよう、筆置きの下に紙を差し込みスライドさせながら書き進められる
途中まで進めた写経用紙

一筆一筆、文字を重ねていくうちに、ざわついていた気持ちが少しずつ静まり、心が澄んでいくのを感じます。決して手早く終わるものではありませんが、時間をかけて向き合うからこそ、その過程そのものが大切な体験に。終えたころには、不思議と肩の力が抜け、頭の中もすっきり。忙しい日常の合間に、あえて立ち止まる。写経には、そんな贅沢な余韻があります。

ソロおすすめPoint
誰かと会話する必要もなく、周囲を気にせず、自分のペースで一文字一文字に向き合えます。時間がかかっても急かされることはなく、集中が途切れたら手を止めても大丈夫。ひとり時間を大切にしたい人や、頭の中をリセットしたいときにぴったりです。


書き終えたら奉納と祈りの時間

納経する仏前

写経を書き終えたら、そっと筆を置き、合掌して一礼します。続いて、お写経用紙を手に仏前へ向かい、書き終えたお写経を納める「納経盆(のうきょうぼん)」に静かに納めます。

納経盆は、仏前のすぐそばに置かれています。奈良「薬師寺」は、天武天皇が皇后の病気平癒を願って建立した寺で、夫婦愛の象徴ともいわれています。薬師如来の両脇には、昼と夜を分かたず人々を見守る日光菩薩・月光菩薩が寄り添い、三尊で救いの手を差し伸べます。

用紙を香煙に薫じてから納経を
用紙を香煙に薫じてから納経を
納経盆

仏様の正面に座ったら、あらためて一礼。心の中で願いごとを唱え、これまでの時間への感謝を伝えましょう。使った道具はそのままにして席を立ち、輪袈裟を返却。道場を出る際には、もう一度その空間に向かって一礼します。始まりと同じように丁寧な所作で締めくくることで、写経の時間が深く心に刻まれます。

時間が足りない場合は自宅で続きを書き、後日郵送することも可能
時間が足りない場合は自宅で続きを書き、後日郵送することも可能

「薬師寺東京別院」の写経は単なる体験ではなく、奈良の本山へと祈りがつながる行為。書き上げた写経は奉納され、奈良「薬師寺」本山で永代に供養されるとされています。都会で綴った一文字一文字が、はるか奈良の地へと届く。そういったつながりを感じられるのも、この写経の大きな特徴です。

ソロおすすめPoint
写経は、始まりから締めくくりまで、自分のペースで自分と向き合える時間。時間内に書ききれなくても無理に急ぐ必要はなく、持ち帰って自宅で続きを書ける柔軟さも、心に余裕を与えてくれます。考えごとを手放し、今の自分と静かに向き合う。そんな時間を大切にしたいからこそ、ひとりで訪れるのが心地いい体験となります。


都会の真ん中にありながら、静けさと向き合える「薬師寺東京別院」の写経。所作のひとつひとつに意味があり、文字を書き進めるうちに、心が自然と整っていくのを感じられます。時間をかけて向き合った分だけ、終えたあとの余韻も深く残るはず。忙しい日常の合間に、ふっと立ち止まりたくなったら、ぜひ訪れてみて。

■薬師寺東京別院(やくしじとうきょうべついん)
住所:東京都品川区東五反田5-15-17
電話:03-3443-1620
営業時間:9時30~17時
定休日:無休

ソロMemo
■取材時のソロ率:90%(月曜の朝) 思考を手放して心を整えたいとき、静かな時間を過ごしたいとき、自分を見つめ直したいとき

おひとり東京ガイド

●この記事は『おひとり東京ガイド』に掲載した記事を一部抜粋して作成しています。


Text:松崎愛香
Photo:斉藤純平

●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
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