前もってやるべきことはある?ヨーロッパを旅するなら知っておきたい出入域システムEES
欧州連合(EU)加盟国をはじめ、ヨーロッパ諸国への入国審査にあたり、2025年10月12日から運用が開始された出入域システムEES。私たち旅行者が前もって準備することはあるのでしょうか。実際にフィンランドを旅した『るるぶ』ライターの体験談とともにご紹介します。
EES(Entry/Exit System)とは?

EESとはEntry/Exit System、つまり出入域システムのこと。日本人をはじめ、短期滞在する欧州連合(以下EU)域外国の国民を対象に段階的に運用が開始されており、2026年4月10日までには全面的に実施される予定です。
EESが活用されるのは、同システムを導入している以下のヨーロッパ諸国との国境を通過するとき。入国時と出国時のパスポートコントロールにてEESが適用されます。
(2026年3月時点)
どんな渡航者がEESに該当するの?
EESはEU域外国の国民で、次の条件に該当する場合に適用されます。 なお、EESにおいて、「EU域外国の国民」とは、EU加盟国またはアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスの国籍を持たない渡航者を指します。
●EESを使用している欧州諸国を旅行する際に短期滞在ビザが必要な場合
または
●EESを使用している欧州諸国に短期滞在する際にビザが不要な場合
日本人はEU域外国の国民に該当しますので、短期滞在でヨーロッパを訪れる際は、渡航者の出入国または入国拒否の情報をEESに登録されるようになります。
ここでいう「短期滞在」とは、180日の期間内における最長90日間のこと。EESを導入しているすべての欧州諸国で1つの期間として計算されます。
ちなみに、許可された滞在期間を超えて滞在した場合は「オーバーステイ」とみなされます。オーバーステイ者となった場合、 EES を導入している欧州各国の国内法に基づき、領域内からの退去だけでなく、罰金や拘留などペナルティが科せられることがあります。今後 EU へ再入域できなくなる可能性もありますので、くれぐれもご注意を。
EES導入によって、何が変わる?
①入国審査が近代的かつ効率的になる
渡航者の入域・出域の記録はデジタルへとシステムが切り替わるため、入国審査にかかる時間の短縮と、入管職員の業務効率の向上が見込まれています。現段階では行われているパスポートへの押印も、今後は省略されていくかもしれません。
②国境通過がより簡単かつスピーディーになる
専用アプリ(詳しくは後述)を使って、必要な情報がセルフで入力できるサービスも導入されていく予定です。こうすることで国境での待ち時間の大幅短縮が期待できます。
③非正規滞在移住の防止
すでに他国ではおなじみですが、ヨーロッパでも指紋や顔認証データの登録が採用されます。データを活用し、シェンゲン圏への入域・出域追跡を支援するほか、オーバーステイや偽の身分証明書の使用、ビザなし渡航制度の不正利用なども水際で防げるようになります。
④シェンゲン圏の安全強化
EESに登録された渡航者のデータは、各国の治安維持にも役立てられます。国境管理官や警察当局に渡航者に関する重要な情報へのアクセスを提供し、安全保障上のリスクの特定や、重大犯罪やテロとの闘いを支援する目的があります。
【ライターの実体験ルポ】入国審査ではどんなことが行われた?

EESは渡航者の個人データを収集・活用するシステムですので、空港などの入国審査では当然、泊まる場所や滞在日数なども細かく聞かれます。審査官とのやりとりを円滑に進めるために、少し準備をするだけでラクになると実感したので、入国時の流れをご紹介したいと思います。
注:下記は2026年3月、フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港で体験した内容です。
1)パスポートと搭乗券を持って、All Passportsの列に並ぶ
ヘルシンキ到着後は空港の表示に従って、Border Control(入国審査)へ。レーンは2つに分かれており、日本在住の日本国籍の人はAll Passportsのほうに並びます。この列に並んでいる時間を利用し、手元にパスポートと自分が乗ってきた飛行機の搭乗券を準備します。さらに、帽子やマスク、サングラスなどを外しておくとバタつかずに済みます。
2)入国審査官からの質問に答える
順番が来たら、案内された入国審査ブースへ向かい、パスポートと搭乗券を提示します。パスポートの情報以外は口頭でいくつか質問されるので、英語で答えます。ここでつまずくと審査にかかる時間が長くなる可能性が。審査官は簡単な英語で聞いてくれるので、焦らず、聞かれたことを答えていきましょう。
→Sightseeing(観光)など一言で。
②どの国へ行くのか(例:Which country are you going?)
→ヨーロッパ周遊の場合、訪れる予定の国をすべて申告。私の場合、日帰りで行く予定だったエストニアも伝えました。
③泊まる場所(例:Where do you stay?)
→ホテルの名前を伝えればOK。
④いつ・どこから帰るのか(例:When are you leaving? From where?)
→帰国する日(日本便の出発日)と出発地を伝えます。念のため、eチケット控えを提出しました。
3)生体認証データ(顔画像と指紋)の登録
ひととおりの質問が済んだら、指紋の採取。目の前に四角い端末があるので、指のイラストに合わせるように右手の4本指(親指以外)を置きます。 その後は顔写真。「Look at the camera (カメラを見て)」と言われるので、メガネを付けている人は外します。顔の高さまでカメラが下りてくるので、じっとレンズを見て待っているだけでOK。
4)パスポートなどが戻ってきたら終了
スタンプが押されて入国審査は終了。パスポートなどを返してもらい、ゲートが開いたら進めます。将来的にはスタンプがなくなるようなことも聞きましたが、2026年3月時点ではまだ押印がありました。
【これは絶対やって!】EESのために、渡航前に準備しておくコト
出入国カードなど事前に記入しておく書類がないぶん、すべての旅行者は審査官に聞かれたことを口頭で説明できる準備が必要です。英語が苦手な人にとっては大きな壁だと思いますので、焦らず答えられるようにしておきたいところです。
そして、下記の2点はプリントアウトしておくことを強くおすすめします。スマホに保存しておくより、紙で提出できるほうがスピーディーな審査につながります。
・宿泊先が記載された書類(旅行会社の旅程表、ホテルの予約確約メールなど)
・帰国便のeチケット控え(帰国日を証明できるもの)
審査官もゆっくり英語で質問してくれるので、気負う必要はありません。が、万が一聞き取れなかったら、適当に答えないことが大事です。Sorry? やPardon?などと言って、もう一度聞き返しましょう。それでもわからなかったら書類を提出して、審査官にチェックしてもらってください。
ちなみに出国審査は、最終目的地を口頭で確認されるくらい(To Tokyo?Japan?などと聞かれる)。パスポートと搭乗券を提示して、指紋データの照合が完了するとスタンプが押され、審査が終わります。特に準備する必要はありません。
専用アプリTRAVEL to EUROPEも導入予定あり

面倒な口頭試問が事前登録でラクになるアプリも開発・順次導入されています。 私がフィンランドへ行った2026年3月時点では、スウェーデンとポルトガルしか導入開始されていませんでしたが、今後は利用できる国がどんどん増えてくると思われます。 なお、EESは出入国の管理システム(ビザではありません!)ですので、渡航者が事前登録にお金を払うことは絶対にありません。必ず公式アプリTRAVEL to EUROPEで手続きをしてください。
EESについてもっと詳しく知りたい人は、渡航前にEUのホームページ(https://travel-europe.europa.eu/ja/ees )を一読するといいでしょう。
さらに、2026年四半期より導入開始が予定されているヨーロッパ版ETAS「欧州渡航情報認証システム(ETIAS)」が加わると、 EESとETIASの両輪で渡航者が本格的にデジタル管理されていくことになります。ETIASはEESと手続きが異なりますので、導入されたらまた体験レポートをアップしたいと思います。
TEXT&PHOTO:森本有紀
PHOTO:PIXTA
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