【東京・小平市】小さな書店で草花の世界へ旅をするようなひとときを。「植物の本屋 草舟あんとす号」
東京・小平市にある「植物の本屋 草舟あんとす号(しょくぶつのほんや くさふねあんとすごう)」は、園芸書から小説、絵本、植物療法、美術書まで、植物にまつわるあらゆる本を集めた小さなお店。育てるための知識だけでなく、文化や歴史、物語などを通して植物との距離を縮めてくれる一冊に出合えます。植物が好きな人はもちろん、これから植物と親しくなりたい人も、足を運んでみませんか。
植物と人をつなぐオンリーワンの書店

植物の装飾が施された門扉をくぐると現れるのは、緑に囲まれた小さな敷地「Holy Garden」。フラワーショップや焼き菓子店が並ぶその一角に、小さな植物専門書店「植物の本屋 草舟あんとす号」はあります。
もともとハーブ・ガーデンで働いていたオーナーの宮岡絵里(みやおかえり)さん。イギリスの児童文学『秘密の花園』に出合ったことも開業のきっかけのひとつでした。植物と人との関わりが、宮岡さんの理想とする形で描かれた物語に魅了され、このような作品と専門書を一緒に扱う書店があったらいいなと思うように。しかし、園芸書にとどまらず幅広い植物関連書を揃えた書店はなかなか見つからず、それならいつか自分で開こうと志したといいます。
植物が好きな人が集まる場所で店を開きたいと思っていたところ、紹介されたのが「Holy Garden」でした。築20年ほどのかわいらしい三角屋根のガーデンハウスを活用した建物には、以前からフラワーショップが入り、宮岡さんは最高の場所だと感じたのだそうです。

店名の「草舟」は所在地の小川町から連想した「舟」と植物を表す「草」を組み合わせたもの。「あんとす(anthos)」はギリシャ語で「花」を意味し、「花を積んだ草の舟」というイメージが込められています。ロゴはイラストレーターのフランスガムさんによるもの。本と花を入れたいと依頼したところ、お店から「バラっぽい感じがする」と着想を受け、本のページにバラをあしらった愛らしいロゴが誕生しました。

6坪ほどの店内には、約750冊の書籍が並び、そのジャンルは、小説、絵本、植物学、園芸、農業、レシピ、植物療法、美術など、多岐にわたります。隣駅の東大和市駅には東京都薬用植物園があるため植物園の帰りに寄る人も多く、園芸関係者や樹木医、フラワーアレンジメントの先生など植物のプロもよく訪れるそう。
植物好き、植物に精通した人に向けた本ばかりではなく、初心者でも気軽に手に取れるものもたくさんあります。植物の育て方だけでなく伝説なども共有したい、植物と親しくなるきっかけにしてほしいと宮岡さんが本をセレクト。今後は海外で発行された植物の本も充実させたいといいます。

一般的な書籍のほか、植物関連のZINE(自主制作冊子)も充実。パークレンジャーによる暮らしエッセイ、樹木医の建築家による植物と暮らす緑建築のすすめや、紅茶の茶葉の喫煙を考察した本、絵詩集、イラストブックなど、ユニークな内容が多く、興味をそそられる一冊に出合えるかもしれません。
思わず手に取りたくなる植物雑貨
「草舟あんとす号」では、本以外に植物をモチーフにしたアイテムも扱っています。壁にかけられているのは、植物水彩画家の行田美香(ぎょうたみか)さんによる、古い植物図鑑のような雰囲気をもつ植物画ポスター。
9世紀頃、フランク王国のカール大帝が庭づくりの指針として書いた植物リストをもとに、実際に修道院で育てられていた植物を描いたポストカードもあります。野菜、フルーツ、ハーブなど、植物を愛でるとともに、歴史に思いをはせることができそうです。

こちらはポップアップアート作家の武田裕美(たけだひろみ)さんが手がけた作品「Welcome back to your Holy Garden」。カルーセル型なので、Holy Garden内の3店や本やお菓子、お花のある裏庭が飛び出し、360度ぐるりと眺められます。

フランスガムさんによるオリジナルの包装紙「賛美花」も販売。店内には原画が飾られ、同じように額に入れてインテリアとしても楽しめます。
店内では作家の作品展示を年に4~5回開催していて、さまざまな形で植物の世界を堪能できます。取材時には、以前フランスガムさんが個展を開いた際のイラストやカードなどが並んだコーナーもありました。
蒔きどきの無農薬の種も扱っています。取材時には、ジェノヴェーゼ バジル、ピクルス キュウリ、レッド ロシアン ケール、ナスタチウム ミックスなどがありました。簡単な説明、種蒔き時期と収穫時期、栽培のポイント、食べ方などが書かれているので、初めてでもトライしやすそう。種と本を一緒に購入し、植物を育てる体験と知識の吸収ができるのは「草舟あんとす号」ならではのポイントです。
花咲くラッピングで特別な一冊を贈る

自分のために購入するだけでなく、本を贈り物としても使ってほしいと、宮岡さんはラッピングにも力を入れています。武田裕美さんがデザイン、手作業で仕上げたギフトバッグは、「ポピーの咲く野道」をイメージし、さまざまな花や蝶がモチーフに。花びらをそっとつまむと封筒の蓋部分が開く仕掛けになっていて、B5サイズ以内の本を入れることができます。

薄い本には、イギリスのテキスタイルデザイナー、ウィリアム・モリスの図案など、花柄のレターブックから1枚選んで入れてもらう「スタンダードラッピング」を。大切な人にぴったりの一冊を見つけたら、ぜひラッピングにもこだわってみてください。美しい花のラッピングを施された植物の本は喜ばれること間違いなしです。
緑あふれる庭で過ごす豊かな時間



庭にはテーブルが置かれているので、購入したばかりの本を読むことも可能。焼き菓子店でテイクアウトしたお菓子を食べながら読書をしたり、四季折々の草花の鑑賞をしたり、心安らぐ時間を過ごせます。今後は、庭でのピクニックを楽しむ企画なども考えているというので、訪れる楽しみが増えそうです。

ちょこんと置かれたカゴは、家庭菜園などで自家採取した種を分かち合う「Share Seeds Project」として、自由に種を置き、受け取ることができる交換コーナー。「草舟あんとす号」で売られている種は、どれも自家採種できるので、たくさん採れたら交換コーナーに持ってきて、循環させてみてはいかがですか。
本を読む、グッズを選ぶ、種を育てる、草花を愛でる。そんな植物とのさまざまな関わり方を提案してくれる「植物の本屋 草舟あんとす号」。店内に並ぶ本や作品、種のひとつひとつからは、宮岡さんの植物への深い愛情が伝わってきます。お気に入りの一冊を探したり、庭でひと息ついたりしながら、自分らしい植物との付き合い方を見つけてみましょう。
■植物の本屋 草舟あんとす号
(しょくぶつのほんや くさふねあんとすごう)
住所:東京都小平市小川町2-2051
TEL:080-1330-5452
営業時間:12~17時(展示会開催時は~18時)
定休日:水・木曜
Text:河部紀子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。




