台湾を伝える編集者に聞く! 街の日常をのぞく台北2泊3日の旅【るるぶ取材班の旅の裏側】
「次の休み、どこ行こう?」週末の国内旅から憧れの海外旅まで、旅の計画は最高の癒やし。でも実際に考え始めると悩むことも…。そんな旅好きの背中を押す連載「るるぶ取材班の旅の裏側」。『るるぶ』『ララチッタ』などのガイドブック制作に携わる“旅のプロ”を直撃! 取材中のオフ日やプライベートの旅スタイルを聞きました。この記事を読めば、あなたの旅がちょっとアップデートされるかも!? 今回は台湾の旅のプロ、編集者・鈴木さんの台北旅をご紹介します。
編集者・鈴木めぐみさんに聞く。旅のプロが通い続ける台湾の魅力
第3回のゲストは、20年以上にわたり本の編集に携わり、台湾の文化を紹介するユニット「HaoChi Books(ハオチーブックス)」としても活動する鈴木めぐみさんです。これまで台湾を訪れた回数は30回以上。そんな鈴木さんに、鈴木さん流の台北2泊3日の旅を教えてもらいました。
すずき めぐみ。編集者歴20年以上。
書籍編集を中心に、過去には料理本専門書店の運営に携わった経験もある。台湾文化を紹介するユニット「HaoChi Books」では、台湾のテント生地を使ったブックカバーの販売や、ZINE(自主制作本)の制作を行う。首都圏の台湾料理店にも詳しく、『るるぶ台湾 in TOKYO』では物件選定から取材まで担当。
編集部:鈴木さんが初めて台湾を訪れたのは、いつですか?
鈴木さん(以下、鈴木):2001年11月です。台北で日本語教師をしていた、小学校時代からの友人を訪ねたのがきっかけでした。当時はヨーロッパやアメリカに関心が向いていて、台湾はそれほど意識していなかったんです。
編集部:実際に行ってみて、印象が変わったのでしょうか。
鈴木:友人が住んでいたのが観光地から少し離れた下町で、建物の前の通りでは、夕方になると夜市が始まるんです。食べ物や生活用品を売る店が並び、人が集まってきて、朝になるとお店も人も消えている。その様子がすごくおもしろくて。「ここなら一人でも来られる」と思い、その後は一人でも何度も訪れるようになりました。多い時期は2カ月に一度くらい。通算では30回以上になると思います。
編集部:何度も訪れたくなる、台湾や台北の魅力とは?
鈴木:まず日本から近く、一人でも比較的歩きやすいこと。食事も自分に合っています。台北はMRT(地下鉄)が便利ですが、一駅くらいなら歩いて移動できる距離感なんですよね。路地に入れば気になる店が見つかるし、古い街並みが残る一方で、新しい店も次々に生まれている。街の新陳代謝が早いので、行くたびに発見があります。
編集部:「台湾に来た」と実感する瞬間はどんなときですか?
鈴木:初日の夜市ですね。夕方になると屋台の準備が始まり、湿気や熱気、いろいろな食べ物のにおいが混ざって、人がわらわらと集まってくる。そこで臭豆腐を食べながら台湾ビールを飲むと、「台湾に来たな」と思います。
鈴木流「台北2泊3日」の旅プランを公開! 私的必訪スポットはココ
【1日目|夜市と生活百貨で、台北モードへ】
夕方、台北に到着
チェックイン後はすぐ街へ
寧夏夜市または華西街観光夜市で夜ごはん
勝立生活百貨、小北百貨、光南大批發などをのぞく
わりと早く切り上げてホテルで軽く部屋飲み
編集部:到着初日は、まず夜市へ。「寧夏夜市(ニンシアイエシー)」と「華西街観光夜市(ファーシージエグァングァンイエシー)」を挙げていただきました。
鈴木:どちらへ行くかは、泊まる場所によって決めます。「寧夏夜市」は中心部にあって行きやすいので、台北が初めての人にもおすすめ。「華西街観光夜市」のある龍山寺周辺は、もう少し下町らしい空気を感じられます。
「士林夜市(シーリンイエシー)」も有名ですが、私はよく泊まる宿から立ち寄りやすい寧夏や龍山寺周辺を選ぶことが多いですね。
編集部:食べるものは事前に調べますか?
鈴木:決めているのは臭豆腐くらいです(笑)。台湾ビールと合わせるのが定番。ほかは、行列や店先の様子を見て、その場で決めます。夜市は店の入れ替わりが速いので、同じ店を目指すより、その日の雰囲気で選ぶ方が楽しいですね。
編集部:食後は、生活用品店をのぞきながらホテルへ戻るんですね。
鈴木:日本でいう「ドン・キホーテ」のような店なのですが、台湾らしいビニールサンダルやステンレスのレンゲ、調味料、酒、カラフルな茄芷袋(台湾漁師網バッグ)など、地元の人が日常で使う品を眺めます。観光客向けのおみやげ店より、こういう生活用品店の方がつい長居してしまいます。
編集部:到着日は、ホテルでゆっくり過ごすんですね。
鈴木:ホテルへ戻ったら、日本から持参したウイスキーを、現地で買ったソーダで割ってハイボールに。台湾のテレビをつけて眺めながら、初日は早めに切り上げます。
青島飯糰で朝ごはん(テイクアウト店)
迪化街を散策
蜂大咖啡でひと休み
屏東双園火鍋で友だちと夜ごはん
Bar Way Homeでおしゃべり
編集部:2日目の朝は、台北駅近くの「青島飯糰(チンダオファントゥアン)」へ。テイクアウト専門の店なんですね。
鈴木:油條や肉でんぶ、高菜などをもち米で包んだ台湾式おにぎりのお店で、朝の短い時間だけ営業しています。取材で知ったお店です。
編集部:白米と黒米を選べるそうですが、鈴木さんの定番は?
鈴木:黒米にすることが多いです。かなりボリュームがあるので、ホテルへ持ち帰ったり、近くに公園があればそこで食べたりします。コンビニで台湾茶やフルーツジュースを買い足すのも楽しみですね。
編集部:有名な鹹豆漿(シェンドゥジャン)店ではなく、飯糰(ファントゥアン)を選ぶところが鈴木さんらしいですね。
鈴木:鹹豆漿も好きですが、長い行列には無理に並びません。食べたければ、街を歩いて見つけた名もなき店へ入ります。その方が発見があって、今はおもしろいと感じています。
編集部:朝食後は、乾物や漢方、布地の問屋が並ぶ「迪化街(ディーホアジエ)」へ。何度も訪れている場所ですよね。
鈴木:昔ながらの問屋街ですが、古い建物を生かしたカフェやワインバー、若い人が始めた小さな店も増えています。
編集部:昔ながらの商店と、新しい店が同じ街に混在しているのが魅力ですか?
鈴木:そうですね。店の入れ替わりが速いので、行くたびに新しい発見があります。古いものが残りながら、新しいものも入ってくる。その混ざり方がおもしろいですね。
編集部:街歩きの休憩には、西門町の老舗「蜂大咖啡(フォンダーカーフェイ)」へ。新しいカフェではなく、こちらを選ぶのはなぜですか?
鈴木:コーヒーが特別というより、雰囲気ですね。昔ながらの喫茶店のような空気が残っています。入り口のガラス容器に並ぶ焼き菓子にも、長く続く店ならではの風情があります。
編集部:夜は「屏東双園火鍋(ピンドン シュアンユェンフォゥゴォ)」へ。現地の友人に連れて行ってもらったそうですね。
鈴木:昨年、友人に連れて行ってもらって、すごくおいしかった店です。台湾南部から新鮮な牛肉を運び、注文するとその場で切ってくれます。
編集部:一人旅では、なかなか火鍋を選びにくいですものね。
鈴木:一人鍋の店もありますが、こういう鍋は友人たちと食べるのがいいですね。具材は冷蔵ケースから好きなものを選び、タレもゴマやパクチーなどを使って自分で作ります。
編集部:食後は、同じ友人に案内してもらった「Bar Way Home(バー ウェイ ホーム)」へ。
鈴木:現地の若い人でとてもにぎわっていて、ワインをボトルで開けている人も多かったです。食事中にはあまり飲まない印象がありましたが、バーではワインを楽しむ人も多く、台北の今の酒文化を感じました。
編集部:現地の友人と一緒だからこそ、今の台北の食や酒の楽しみ方が見えてくるんですね。
鈴木:自分で検索するだけでは、こういう店にはなかなかたどり着けません。友人が最近おいしかった店や、気になっている場所へ連れて行ってくれる。その人たちが今どこで食べて、どこで飲んでいるのかを知るのも、旅の楽しみです。
城中市場で朝ごはん
PX MART、誠品生活、新光三越などでおみやげ探し
台北駅で台鐵便當を買って空港へ
桃園空港から帰国
編集部:帰国日の朝は、台北駅に近い「城中市場(チョンジョンシーチャン)」へ。どんなふうに楽しみますか?
鈴木:食堂や麺店、衣料品店などが並ぶ街なかの市場なので、ぶらぶら歩きながら、気になる店で汁なし麺などをさっと食べます。
編集部:その後は、「PX MART」や「誠品生活(チェンピンシェンフォー)」、「新光三越(シングァンサンユエ)」などでおみやげ探しですね。
鈴木:台湾では、汁なしタイプの袋麺をよく買います。ゴマペースト入りのタレなど種類が豊富で、食べ比べるのも楽しいです。
青唐辛子を醤油ベースの調味液に漬けた台湾の保存食で、ピリ辛の味わいが麺やご飯によく合う
鈴木:ラー油や沙茶醤、XO醤、剥皮辣椒(ボーピィーラージャオ)など、ご飯や麺に合うものもチェックします。普段使いの商品はスーパー、少し高級な麺やパッケージのきれいなものは百貨店、というように見比べます。
編集部:最後は、台北駅で「台鐵便當(たいてつべんとう)」を買って空港へ。何度も台湾を訪れている鈴木さんですが、駅弁を買って帰国便に乗るために空港に向かったのは初めてとのこと。
鈴木:これまであまり食べたことがなかったのですが、台北駅で買って桃園空港のフリースペースで食べてみたら、おいしくて。空港内の食事より手頃ですし、混雑を避けてゆっくり食べられるのもよかったです。「旅の締めに台鐵便當、いいね」と思いました。
無理せずノープランで「街の日常にふれる」のが私の旅スタイル
右)今では思い出の品になったメモ帳。昔は店名を手書きしては、タクシー運転手に見せていたのだとか
編集部:今回の行程は、事前に細かく決めるというより、その場で選ぶ余白が多いですね。
鈴木:年々ノープランになっています。若いころは深夜発のLCCに乗って、到着したらすぐ動いていましたが、今は移動だけでも疲れるので(笑)。予定を詰め込むと、旅の記憶も薄くなってしまう気がするんです。
編集部:現地の友人と会う日時だけは決めて、あとは自由にその場で決める、という感じですか?
鈴木:航空券とホテル、友人と会う約束など、動かせない予定だけ決めておき、あとは天気や体調、宿泊する場所に合わせて考える。ホテルも、翌朝に列車で地方へ向かうなら台北駅周辺、バーを楽しむなら夜に移動しやすいエリアというように、旅の目的に合わせて選びます。
編集部:ホテル選びにも変化がありますか?
鈴木:少し広めの部屋を予約して、ホテルで過ごす時間を楽しむことも増えました。外に出続けるのではなく、早めに戻って部屋で飲んだり、買ったものを広げたり。ホテルでも自分のペースで過ごせると、旅はぐんと楽になります。
編集部:長時間の街歩きを無理なく楽しむために、持ち物にも工夫がありますね。
鈴木:できるだけ軽く、使いたいものをすぐ取り出せることを大事にしています。取材でも普段の旅でも、リュックよりトートバッグ派。貴重品は、軽量なサコッシュに入れて持ち歩きます。大好きなハイボール用のウイスキーはスキットルで持参すれば、現地で探す手間や出費も抑えられます。薄くて軽いカディタオルは、ホテルで枕カバー代わりに使ったり、瓶入りのみやげ品を包んだり。長期滞在では、スタッフサックも洗濯物の仕分けに便利です。無理なく歩き、ホテルではきちんと休むための道具ですね。
編集部:最後に、読者にひとつだけ試してほしい旅の楽しみ方を挙げるなら?
鈴木:歩いていて気になった店に、自分の勘を信じて入ってみてほしいです。ネットで検索すれば、口コミや評価が先に見える時代ですが、あえてそれを見ずに選んでみる。店の人が親切だったり、自分にはすごくおいしく感じられたりすると、「私はこの店が好き」という自分だけの評価が生まれます。そんな名もなき店を探す楽しさも、ぜひ味わってほしいですね。
・スキットル(部屋飲み用)
※酒類の持ち込みは、利用航空会社や渡航先の規定を確認してください
・ジッパー付きビニール袋やラップ
・サコッシュ
・いつも使っている大きなトートバッグ
・長時間散策しても疲れにくいスニーカー
・入浴剤
・部屋用サンダル
・カディタオル(防寒・日除け・枕カバー・緩衝材などフル活用)
・スタッフサック(洗濯物など濡れていても持ち歩ける)
絶対に行きたい場所を一つか二つ決めたら、そのほかは街を歩きながら考える。予定どおりに進まないことを失敗と思わず、偶然見つけた店や、ホテルでゆっくり過ごす時間まで楽しむ。旅を知り尽くしたプロの台北旅は、意外なほど肩の力が抜けていました。
ガイドブックの“行間”にあるようなお話、いかがでしたか? さて、次はどの街のガイドブックの“中の人”に会いに行きましょうか。お楽しみに!
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Text:山田裕子(editorial team Flone)
Photo:鈴木めぐみ(HaoChi Books)、斉藤純平(editorial team Flone)




