【那須】殺生石|火山ガスと伝説の地を散策できる人気観光スポット|栃木
硫黄の香りが漂い、ゴツゴツとした岩が広がる「殺生石(せっしょうせき)」は、荒涼とした景色と九尾の狐伝説が残る那須を代表する名所のひとつです。まるで別世界に迷い込んだような岩場には、「殺生石」をはじめ「教傳地獄(きょうでんじごく)」、「千体地蔵」などみどころが点在。この記事では、実際に歩いてみて感じた魅力だけでなく、混雑具合やおすすめの巡り方などもご紹介します。
まるでこの世の果て!?「殺生石」とは?

「殺生石」とは、那須の火山活動によって生まれた荒涼とした景観のなかに、九尾の狐(きゅうびのきつね)伝説が残る史跡です。散策路を歩きはじめると、大小の岩があちらこちらに連なり、独特の景色が目に飛び込んできます。

地表から噴き出す硫黄ガスなどの影響で植物が育ちにくいため、周囲には岩肌がむき出しになった場所も多く、緑豊かな那須の山々とはひと味違った雰囲気。所どころで硫黄の香りも感じられ、独特の風景とともに火山の息吹を身近に体感できます。

周辺には、かつて温泉成分から「湯の花」を採取していた場所も。江戸時代には、噴出口に茅をかぶせて湯の花を集め、農民が米の代わりに年貢として納めていたというから驚きです。
「殺生石」散策で押さえておきたいポイントは次の通りです。
・硫黄の香りが漂う、火山地帯ならではの景観
・「九尾の狐」が化けたと伝わる巨大な殺生石
・湯の花採取場跡など、周辺にもみどころがたくさん
自然、歴史、伝説が重なり合うことこそ、「殺生石」ならではの魅力と言えるでしょう。
「殺生石」は今どうなっている?現在とみどころ

「殺生石」を訪れたら、まず注目したいのが、現在の石の姿。その歴史と変化を知ると、目の前の景色がより印象的に見えてきます。
ハイライトである「殺生石」は、九尾の狐が姿を変えたものと伝わる巨石。しめ縄が結ばれた姿は周囲でもひときわ存在感があり、古くから「毒気を放ち、近づく生き物の命を奪う」と語り継がれてきました。

そんな「殺生石」に大きな変化が起きたのが2022年3月。以前から入っていた亀裂によって、石が二つに割れてしまったのです。この出来事から「狐がついに逃げた!?」と大きな話題になったのも印象的でした。現在は割れた状態のまま保存されており、散策路からその姿を間近に見ることができますよ。
九尾の狐伝説を知ってから訪れれば、石が割れた出来事もまた違って見えるはず。伝説と現実が重なる、今だからこそ見ておきたい「殺生石」の姿です。
狐が化けた岩がある!?「九尾の狐伝説」とは?

ここで、「九尾の狐伝説」とは一体どのような話なのか、おさらいしておきましょう。昔、中国やインドで悪事を重ねた九尾の狐は、美しい女性「玉藻の前(たまものまえ)」に化けて日本へ渡り、鳥羽院に仕えたと伝わります。しかし陰陽師・安倍泰成(あべのやすなり)に正体を見破られると那須へ逃亡したそうです。

しかし、那須でも悪事を続けた狐は、朝廷から命を受けた上総介広常(かずさのすけひろつね)と三浦介義純(みうらのすけよしずみ)らに追われ、ついには討たれることに。そしてその姿は毒気を放つ巨大な石へと変わりました。後に玄翁和尚(げんのうおしょう)がこの石に向かって一喝すると、石は三つに割れ、狐の霊は去ったものの、毒気は残った。その石こそが、現在の「殺生石」だと伝えられているのです。
散歩道を歩いて、非日常を体感

散策路を歩いていると、岩場のなかに突然お地蔵さまが現れたり、昔の人々の暮らしを伝える場所があったり。景色だけでなく、ひとつひとつに物語があり、歩くたびに「これは何だろう?」と足を止めたくなります。特に注目のみどころは次の3つです。
・教傳地獄と教傳地蔵
・たくさんのお地蔵さまが並ぶ千体地蔵
・松尾芭蕉が訪れた殺生石と、その句碑

よく知られているのが「教傳地獄」です。母親への仕打ちを悔いなかった僧・教傳(きょうでん)が那須温泉を訪れた際、火や熱湯が噴き出して命を落としたという伝承が残ります。現在は、その教傳を供養する「教傳地蔵」が立ち、親不孝への戒めを伝えています。

さらに進むと、旅の安全などを願って奉納された「千体地蔵」がズラリ。荒々しい岩場のなかにたくさんのお地蔵さまが並ぶ姿は、この世のものとは思えない不思議な光景です。

そして、松尾芭蕉ゆかりの場所としても知られています。『おくのほそ道』の旅で、弟子の曽良(そら)とともに「殺生石」を訪れ、当時の景色を「石の毒気いまだ滅びず」と記しました。さらに「石の香や 夏草あかく 露あつし」と詠み、その句碑も残されています。
そのほか、蛇への恩返しにまつわる伝説が残る「盲蛇石(めくらへびいし)」など、散策路にはみどころが盛りだくさんです。
所要時間はどれくらい?混雑具合とおすすめの巡り方をチェック

「殺生石」だけなら一周約30分、周辺のみどころも一緒に訪ねるなら所要時間は1時間前後を目安にすると、ゆっくり楽しめます。入場料はかからず、周辺を自由に散策できるのもうれしいところですね。

「殺生石」は散策路の奥にあるので、先に殺生石を見てから散策路を戻り、教傳地獄や千体地蔵などを巡るルートがおすすめ。もちろん、周辺のみどころから先に巡って、最後に殺生石へ向かう逆回りでも楽しめますよ。
なお、行楽シーズンや連休は人が多くなり、周辺の駐車場や散策路が混雑する可能性があるので余裕を持って訪れるようにしましょう。
アクセス方法は?温泉と合わせて楽しんで

「殺生石」へは、東北自動車道那須ICから車で約30分。公共交通機関ならJR黒磯駅から関東自動車バスの那須湯本方面行きなどを利用して約40分の「那須湯本」で下車すれば、歩いて5分ほどでアクセスできます。
せっかくなら、「殺生石」だけでなく周辺もセットで楽しみたいところ。すぐ近くには「那須温泉神社」があり、さらに歩けば歴史ある共同浴場「鹿の湯」もあります。硫黄の香りに包まれた「殺生石」を歩いたあと、温泉でひと息つく、という那須らしい過ごし方もできますよ。
まとめ
九尾の狐伝説だけでなく、硫黄が生み出す荒々しい景観や、そこに残るさまざまな伝承まで楽しめるのが「殺生石」の魅力です。巨石を見て、散策路を歩き、地蔵や石にまつわる物語を知るほど、「ただの岩場」ではない「殺生石」のおもしろさが見えてきます。那須温泉と組み合わせて、ゆっくり散策してみてはいかがでしょう。
■殺生石(せっしょうせき)
住所:栃木県那須郡那須町湯本182
TEL:0287-72-6918(那須町観光商工課)
料金・時間・定休日:散策自由
Text:松井夏美(むしか)
Photo:氏家岳寛
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。




