本の読めるカフェ「fuzkue」が守る、静かで安心できる“2.5時間”
誰にも邪魔されない時間。読書に集中できる場所。ノイズがないけれど、独りじゃない空間。これらの条件がそろった店は、ありそうでないものです。“本の読める店”をコンセプトとしたカフェ「fuzkue(ふづくえ)」は、そんな場所を求める人に安心できる時間を約束する場所。店と空間にいる人々が創り出す、安らかな静けさを体験してみましょう。
落ち着きと静けさが守られた店内、その理由は説明書の中に
木製の本棚と窓に面したカウンター、落ち着いた一人がけのソファ。店に入った瞬間、「あ、一人用の席ばかりだ」と気がつきます。fuzkueには、対面して座る席がありません。
カウンターの一席に座り、メニューを…と手を伸ばすと、重厚感と読み応えのありそうな説明書が。
「どうしたら落ち着いて本を読める空間を創れるか」を考え続けた店長の答えが、順序立てながらも、にじみ出る熱意や時折のユーモアを交えて綴られています。その内容は店内でのお楽しみ。ひとつの読み物として楽しませてくれます。
注文をしてから店内を見渡し、改めてひと息。色合い、置かれた小物、家具の一つひとつが統一され、“静けさ”と調和しています。同じ空間にいる客同士が、お互いの時間を尊重しあって過ごせる場所だということが伝わってきます。
店長が考え抜いた答えと人生が詰まった空間
fuzkueでは時間を気にせず本を楽しむための食事や飲み物を用意しています。「タラとタケノコのココナッツカレー」1000円は、五穀米と野菜が中心のヘルシーな味わいが楽しめる、店長手作りのオリジナルカレー。
食後には、オレンジの香りとチョコリキュールの甘苦さが楽しめるホットオレンジショコラ850円を。静かな空間で外を眺めながら飲む甘いお酒は、至上の休息を与えてくれます。
「別に、本を読む必要はないんですよ。義務にしたくはない。僕は好きですけど、っていうだけです」と控えめに語る店長の阿久津隆さん。
店内に並ぶ本は、店長の私物ですが自由に読むことができます。ページをめくると、大切な言葉には線が。一冊一冊を大切にしてきた店長の時間が伝わってきます。
「お客さんには気持ちよく過ごしてほしいですね。パブリックとプライベートの“間(あわい)”のような場所を目指しています」と店長。押し付けないこだわりが、fuzkue独特の居心地の良さを創り上げているのです。
何時間いたっていい、その安心感がもたらす居心地の良さ
深くソファに腰かけ、読書。ふと目をあげると、それぞれのお客さんが一人の時間を慈しんでいました。fuzkueのお客さんの平均滞在時間は“2.5時間”だそう。一人で静かなときを楽しむのに必要な時間を、改めて感じる数字です。
コーヒーを淹れる音や、ページをめくる音。都会のノイズから遮断される安心感に、心の芯から癒されました。
時間を気にすることなく本が読める環境をお客様が意識できるよう、席料が注文量で変動する独特の料金設定をしているところもfuzkueの魅力。お酒で、お茶で、食事で。静かな時を演出する幅広い選択肢が、過ごし方の自由度を高めます。
「ひとつの趣味として読書を守りたい」という店長の願いが詰まったfuzkueは、同時に店を楽しむお客さん一人ひとりの心や時間を守っています。喧騒に疲れた心に、fuzkueというぬくもりある静けさをプレゼントしてみては。
※席料については店内説明書にて詳細あり
text:宿木雪樹
- 掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。