お料理上手への第一歩。“マイ包丁”を探しに老舗の鍛冶屋さんへ
日本有数の刃物の産地として知られている大阪・堺にある、老舗の鍛冶屋さん「佐助」。そろそろ自分の包丁がほしいな、と思っているお料理女子におすすめしたい、本格的な刃物が揃うお店です。こだわりの包丁を使えば、料理がもっと楽しくなるはず!運命の1本を探しに、ぜひ出かけてみてください。
創業は慶応3年。伝統の技を受け継ぐ鍛冶屋さん
大正時代に建てられたノスタルジックな日本家屋。耳を澄ませば、奥からかなづちを打つ音が聞こえてきます。
南海電車浅香山駅から徒歩約3分、昔ながらの町の一角に「佐助」はあります。慶応3年に鋏(はさみ)鍛治「佐助」を創業し、代々、植木鋏、盆栽鋏、小枝切りなどを中心に、包丁や小刀を制作してきた老舗の鍛冶屋さんです。
こちらは、象嵌仕上げの植木鋏。漆の焼付けに、椿の花の金細工が美しい花鋏は、パリのルーブル美術館でも展示されました。
現在の職人は5代目・平川康弘さん
現在、のれんを守っているのは5代目の平川康弘さん。日本有数の刃物の産地として知られている堺で、国内で唯一、国指定の「鋏(はさみ)の伝統工芸士」に認定されている鋏鍛治職人です。
「佐助」の包丁は、切れ味のよさと耐久性を兼ね備えるために、硬い鋼を2枚の柔らかい地金で挟んでいます。この3枚の鉄を熱して叩き、また熱しては叩きを繰り返し、鍛造していきます。
「鍛造とは、文字通り、鉄を鍛えること。叩くほどに、鉄の密度が高くなり、より強くなっていくんです」と平川さん。
炭は、岩手県から取り寄せる松炭。「松炭は軽くて、火力がいいんです」と言葉少なに語りながら、左手に鋼を、右手にかなづちを、左足はフイゴでかまどに風を送って作業を進めていきます。その姿は、まさに全身全霊で鉄に気持ちを込めているよう。
「途中で水に浸けて叩くのは、鋼をしめていくためなんですよ」そう教えてくれたのは、奥様の富子さん。分厚かった鋼は次第に薄くなり、包丁のフォルムになっていきます。そのあとは、別の作業部屋で研ぎの作業へと移行します。
まずは「文化包丁」か「ペティナイフ」を
できあがった包丁は、すっとしていて凛々しいなかに、手作りの温もりも感じられます。まず揃えたいのは、使用頻度の高い「文化包丁」か「ペティナイフ」。
「生活のための道具だから、使い続けることが大事」と平川さん。「佐助」の包丁は鋼でできているので、ステンレス包丁などとは違って使わないと錆が出ます。お手入れも、ほかの素材比べたら少し大変ですが、丁寧に面倒を見てあげることで自分の手に馴染み、いい包丁になっていくそう。
時代を経た建物のなか、使い込まれた道具の並ぶ空間を見ると、良いものができあがる場所であることを実感します。こだわりの包丁を選びに、ぜひ一度工房で、平川さんの作業を見て、お話を聞いてみてくださいね。
※訪問前に電話にて要連絡
text:いなだみほ
photo:野本幸子
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