
【おとなのソロ部】渋谷「森の図書室」で物語に登場する料理と読書を楽しむ
本を読みたいのに、ついスマホを開いて動画を見てしまう……。その罪悪感、今年こそ卒業しませんか? 渋谷駅すぐ近くに、物語の世界へすっと引き込まれる隠れ家ブックカフェ「森の図書室(もりのとしょしつ)」を発見。ひとり客が多い静かな空間で、本に登場する料理やドリンクを味わいながら、ひとり読書時間にどっぷり浸ってきました。
本好きに愛され続けるブックカフェ「森の図書室」
渋谷駅ハチ公口から徒歩1分。街の喧騒を抜け、少し歩いた先に現れるのが、ブックカフェ「森の図書室」が入居するビルです。2014年に渋谷にオープンし、2021年により駅近な場所へ移転。渋谷で10年以上続いているカフェは珍しく、この店の根強い人気がうかがえます。
「森の図書室」は、積極的に宣伝をしていないため、知る人ぞ知る隠れ家のような存在。オーナーや常連客が大切にしているのは、静かで落ち着いた空間を守ること。その思いが、この心地よい雰囲気を保つ秘密かもしれません。店内には、ひとり時間を大切にしたい人にぴったりの穏やかな空気が流れています。
静かな読書空間ではありますが、おしゃべりもOK! お酒や軽食も楽しめるため、ひとりで訪れたときはもちろん、友人と一緒に来た際には会話も楽しめます。また、Wi-Fiや電源を無料で利用できるためパソコン作業やリモートワークも可能。とはいえ利用者は大人が中心。節度をわきまえたお客さんが多いため、周囲を気にせず安心してひとり時間に没頭できます。
おひとりさまの来店が多い時間帯をスタッフさんに尋ねると、「いつもひとり客の方がいるので、特にピークはありませんよ」との答えが。ランチやディナータイムに、2~3人のグループ客が増える程度で、実際、訪れるお客さんの多くがひとりでの来店で、女性がやや多い傾向にあるそう。誰でも気軽に足を運べる、落ち着いた雰囲気が魅力です。
気になる料金システムと座席の種類をチェック!
「森の図書室」の料金体制は、とても柔軟で利用者にやさしいものになっています。まず、後払い制を採用していて、利用時間を事前に決める必要がありません。時間制限のあるシェアラウンジとは違って、気軽に利用できるのが大きなポイントです。
店内では、フリー読書やフリーWi-Fi、フリー電源、そしてフリードリンクが提供されており、渋谷駅近の立地でありながら、1時間1100円という驚きのコストパフォーマンスを誇ります。ドリンクはカフェのようにスタッフに注文して、席まで持ってきてもらえるシステムです。
さらに、お酒好きなおひとりさまには朗報! フリーアルコールもソフトドリンク同様、杯数制限なしで楽しめるんです。ただし、グラスが空いたら次の注文をするというシステムなので、節度をもって楽しむことができます。フリーアルコールには生ビールも1杯まで含まれているので、最初の一杯にぴったりですよ。
また、店内は座席の種類も豊富で、利用シーンに合わせて選ぶことができます。カウンター席や2人がけテーブル、4人がけテーブル、さらに奥にはソファ席もあり、ひとりでもグループでも快適に過ごせます。
店内はスポットライトとダウンライトがうまく配置されており、朝でも昼でもまるでバーのような落ち着いた雰囲気です。読書に必要な明るさもしっかり確保されているので、安心して本に没頭できます。窓がないため、天気や時間を気にせず、静かな環境で過ごせるのも大きなメリットですね。
選択肢がたくさん! どの方法で本を選ぶ?
本棚が視界に広がるカウンター席を確保したら、いよいよ本を選んでみましょう! 「森の図書室」の本棚には、単行本や文庫本、絵本、漫画とさまざまなジャンルの本が並んでいます。内容も小説からビジネス書、歴史書まで幅広く、どれを手に取るか迷ってしまいます。
選書はオーナーが行うことが多く、個人的なお気に入りから、読み継がれるべき古典、メディアで話題沸騰の新刊まで揃っているので、本棚をじっくり眺めているだけで、あっという間に時間が過ぎていきます。
そんな迷える読書好きのあなたには、店が用意する本との出合いの提案を活用してみてください。まず注目したいのが、ドリンクの下に敷かれたコースター。表面には本のタイトルが、裏面には作家名とおすすめコメントが記載されています。
店内にある「コースター本」のコーナーから本をピックアップする仕組みで、開店当初からイチオシ本が20冊以上揃っています。これは、一期一会の読書体験を楽しむのにぴったりですよ。
もし、コースター本をすでに読了してしまっていたら、スタッフさんにおすすめを聞いてみましょう。取材時に伺ったスタッフさんのおすすめはこちらの3冊です。写真左から右へ、簡単にご紹介します。
1冊目は、ミステリーやヒューマンドラマを得意とする作家の小説『ぼくのメジャースプーン』(辻村深月/講談社文庫、写真左)。オーナーが特に好きな一冊で、読後の感想が人それぞれ異なるため、まるで性格診断をするかのように楽しめる一作だとか。あなたは、どんな感想を抱くのでしょうか?
2冊目は、オーナーもスタッフも全員がイチオシという児童文学の名作『モモ』(ミヒャエル・エンデ、大島かおり/岩波書店、写真中央)。時間という普遍的なテーマが描かれたこの作品は、大人になってからも深く心に響きます。年齢や性別を問わず、多くの人にオススメできる一冊です。
そして3冊目は、書店員さんが選ぶ「本屋大賞」2023年の受賞作『汝、星のごとく』(凪良ゆう/講談社、写真右)。スタッフさんによると、本屋大賞は書店員さんの女性比率が高いためか、女性作家の傑作に出合えるきっかけになるそうです。この視点を知ると、より一層本選びが楽しくなりますね。
本に登場する料理とお酒と読書を楽しむソロ時間
どの本を読もうか悩んでいたら、お腹が空いてきました。「森の図書室」では、フリードリンクやフリーアルコールプランに550円を追加すると、「本に登場する食べ物セット」を注文できます。トーストやホットチーズサンド、キッシュにシフォンケーキ、カステラ、チョコレートケーキ……どの本に登場する料理か、想像できますか?
今回選んだのは、ジブリ映画でも有名な『天空の城ラピュタ』に登場する「ラピュタトースト」。主人公の少年・パズーが少女・シータに作ってあげた、目玉焼きがのったあのトーストです。
名シーンを思い出しながらひと口頬張ると、バターがしっかり染みたパンと目玉焼きのジューシーな味わいが口いっぱいに広がります。まるで、不安な気持ちだったシータがこのトーストで元気をもらったように、こちらのお腹も心も満たされていきました。
一緒にいただくドリンクは、スタッフさんおすすめの「シャーリーテンプル」。ザクロシロップとジンジャーエールを合わせたノンアルカクテルです。ほんのり甘酸っぱい一杯が、バターたっぷりのトーストと相性抜群でした。
食後は、せっかくなのでアルコールメニューも注文。選んだのは、スタッフさんおすすめの「ティフィンアイスティー」。こちらもフリーアルコールプランに含まれるドリンクです。紅茶のリキュール・ティフィンをウーロン茶で割った、香り豊かなティーカクテル。アイスティーと間違えてしまいそうなほど飲みやすく、強いお酒が得意でない人にもぴったり。ページをめくるたびにひと口ずつ味わえば、ほどよいほろ酔い気分でひとり読書に没頭できました。
フリーアルコールプラン(1時間1650円、3時間3300円、1日4400円)なら、ほかにも本に登場するスペシャルカクテルも楽しむことができます。仕事帰りに立ち寄ってお酒と読書を楽しんでみてくださいね。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆/集英社新書)というタイトルが話題になるほど、本を読む時間のなさに悩む人は多いもの。例えば、毎週水曜日は定時で仕事を切り上げ、「森の図書室」でディナーとお酒、そして読書を楽しむ夜にしてみる。そんな自分だけのぜいたくなルーティンも素敵ですね。
■おすすめの利用シーン:読書したいとき、新しい本と出合いたいとき、軽い食事がしたいとき、お酒を楽しみたいとき、カフェでゆっくりしたいとき
Text:山田裕子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平
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