奈良でロシアを体感!本場のレシピが生きる、本格派ボルシチランチ
近鉄奈良駅南側の商店街を抜け、町屋の並ぶ奈良町の一角にある「ボリクコーヒー」。ボルシチランチやかわいいスイーツ、センスある雑貨にリピーターも多いんです。店主・井岡美保さんは、ロシアのガイドブックや書籍を多数執筆。おいしい&かわいいに加え、井岡さんの笑顔にも会いにゆきたくなる、心あたたまるカフェです。
本場のボルシチはビーツづかいが主流
日本で「ボルシチ」というと、トマトベースの少し酸味のあるスープをイメージします。井岡さんによると、本場のボルシチは「トマトは使わないし、そんなに酸っぱくもない」ビーツが主体の牛だしスープのこと。こちらのセットは、9月くらいから提供される温かいボルシチ。刻んだ牛肉やにんにくも入っているので、ぽかぽか体があったまります。
一方こちらは、春夏に提供される冷製バージョン。ロシアでも、気温が高くなってくると、冷たいボルシチを食べることが一般的なのだとか。この日は、ビーツポタージュ。じゃがいもやヨーグルトなども入って、ピンク色がかわいいですね。余計な調味をせず、ビーツ本来の甘みをいかした、ほんのり甘めのスープです。 「日本ではあまり知られていませんが、ロシアの野菜はとてもおいしいんです。オーガニック野菜などの農業も盛んです」と井岡さん。
おいしいボルシチランチのほか、店内ではロシアをはじめ、ヨーロッパの雑貨や食器なども販売しています。買い付けに行く井岡さんはもともと旅行好きで、イギリスやフランス、東欧などを回るうちにロシアにも足を伸ばし、なんと、16年間で40回も訪問しています。
SNSなどなかった時代。友人たちが旅行に行く際、「おすすめの場所を教えて」といわれることが増え、いっそのこと…と、都市別にミニブック、いまでいうリトルプレスをつくって販売。某雑誌に掲載されたことがきっかけで、出版社から雑貨本出版の話がまいこみ、いまでは著者本は9冊にも及びます。
スイーツもかわいくて、手づくりのおいしさが じんわりと
ボルシチランチに加えてスイーツも、かわいさとシンプルなおいしさにファンも多いのです。定番の人気商品、キャラメルとくるみのケーキは、ナッツホリックなら間違いなく気に入るはず。ざくざく香ばしいナッツ感に甘さ控えめのヌガーで、自家焙煎珈琲との相性も◎。
定番人気のキャロットケーキ。にんじんのシュレッドとくるみの刻んだものがたっぷり。ほんのりシナモンが香ります。むっちり生地が詰まって重たそうに見えますが、いえいえ、まったく!たべてみるとその軽やかさに驚きました。クリームチーズのフロストが、全体の味のバランスを整えています。
だんなさまが営む町屋カフェ「カナカナ」で、自家焙煎するコーヒー。渋みをほとんど感じず、さらりと飲みやすく、どんなスイーツにも合います。
ボリクコーヒーでは、ランチを食べたあと「デザート追加します」の人が続出。「いま食べなきゃ損する!」と思わせる甘い魅惑に勝てないのです。夏にはパフェやアイス系メニューも人気ですが、秋には、わらび餅入りの和栗モンブランが期間限定で登場予定。また、冬の金曜日限定で、ピロシキも販売するとのこと。 ひとつと選べないスイーツの数々、気づけば幸せな満腹感に浸っていることでしょう。
センスあふれる雑貨とギャラリーで、乙女心&買い物欲が揺れうごく
井岡さんが買い付けてきた雑貨のほかに、併設するギャラリーでは、ボリクコーヒーの雰囲気にとてもよく合う作家の作品たちがならびます。だいたい3週間ごとに変わるそうですが、取材時は、イラストレーターの田槙奈緒(たまきなお)さんの個展が開かれていました。
クレヨンと絵具を塗り重ねてスクラッチで模様を描く技法のイラスト。動物や植物、女の子をモチーフにしたものが多く、描き込まれたラインや色づかいに目を奪われます。独特の世界観がボリクコーヒーや井岡さんとの雰囲気にもよく合っていて、それぞれの魅力が乗算されています。
井岡さんは、「ロシアは食べ物もおいしいし、雑貨もかわいい、人はとてもフレンドリーであたたかい。そういったよさはあまり日本には伝わっていないように思うんです。“笑顔は友達のもの”という言葉があります。勘違いされやすいのですが、見ず知らずの人に笑顔の安売りをしないだけで、気心が知れると、いつも明るい人たちなんです。そういったことも含め、ロシアのよさを伝えていきたいですね」と、ずっとチャーミングな笑顔で話してくれました。
ボルシチとスイーツ、雑貨に囲まれ、幸せな時間をもたらしてくれるボリクコーヒー。なによりも、井岡さんの笑顔に会いに「ならに行こう」。そう思える、かわいいにあふれたカフェです。
text:よしおかまさこ(ウエストプラン)
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