奈良の町屋カフェでのんびり過ごす。本×カレーの大人な時間
近鉄奈良駅北側の「きたまち」にあるカレーのおいしいブックカフェ「ミジンコブンコ」。築100年ほどは経つという町屋をリノベして、2013年にオープン以来、地元の人やリピーターが多く訪れます。ゆるりとした雰囲気のなかでいただく、ぴりりとスパイシーなカレーで、個性あふれる魅力的なカフェです。
南インドやスリランカを軸にしたオリジナルのスパイスカレー
瓦屋根の日本家屋のトビラを開けると、手前に広い土間と奥行きある空間、そしてきれいに整列された本が目に飛び込んできます。そう、ここは紛れもなくブックカフェ。店主の人見修司さんが6年前にオープン。「本とカレーのお店」と標榜しているだけのことはあって、こちらでのおすすめはオリジナルのスパイスカレーです。
もともと大のカレー好きだった人見さんが、スパイスの調合を独学で極め、オリジナルカレーができあがりました。いまは30種類ほどのスパイスを常備。メインのカレーは、定番の辛口「チキンカリィ」と甘口「キーマカリィ」のほか、その日の気候や店主の気分しだいでレシピが変わる中辛の「気まぐれカリィ」から選べます。この日チョイスした気まぐれは「ポークカリィ」。厚切りポークは柔らかく、それによく合う黒胡椒がたっぷり入って香りよく、辛さもほどよいスパイシーさ。 「ミジンコプレート」には野菜や豆のおかず4種がセットになっています。真ん中にターメリックライス、手前にカレールゥが盛られ、左から時計周りに4種のおかずと漬物が添えられていて、とっても豪華! このおかずたちも、季節などによって内容は変わります。取材したこの日は残暑も厳しく、「後口さっぱりしてほしい」、との店主の気遣いで、きゅうりやへちまを使ったものも。しゃきしゃき食感で涼やかになりました。
「ぐちゃぐちゃに混ぜ、何種類かのおかずと合わせて食べてください」と人見さん。各おかずとも辛み、酸味、甘み、食感が違っていて、カレーと食べ合わせたときのバランスが考えられた丁寧な手仕事に、感服。どんなおかずと合わせても、最終的にはカレーがひとまとめにしてくれ、さっぱりとした辛さと旨味の心地よい後口をもたらしてくれます。 スープももちろん手作り。この日は5種類ほどの野菜をじっくり煮込んだポタージュ。一見濃厚に見えますが、あっさり!カレーとの相性は言わずもがな、良し、です。
思いをカタチに…理系研究者からの転身
以前、生物学の研究職として毎日多忙を極めていた人見さん。当時から本が好きで、古本市などで出店していました。「衣食住」を軸にした生き方を考えるようになり、建築の専門学校に通い、建築家のもと修行。そして、ご縁あってこの地で本を主体としたカフェを開くことに。
読書をゆっくり楽しみたい人が多くなることを想定し、一人席を多く配置。一人席用に配したカウンターテーブルは、人見さんのお手製。さすがの大工仕事です。これから年数をかけていい色に変化していきそう。
二人などの少人数席や、秘密基地的な奥まった席なども。アンティーク家具や雑貨たちもセンスとこだわりがあふれていて、うっとり落ち着く空間に。思わず長居してしまいます。
どこに座っても新しい本との出会いが待ち受ける
店内の壁面やテーブルのうえ、ラックなどに並べられた本は、絵本や学術書、実用書に小説など、多岐にわたっています。特にカテゴリーなどを設けず、あえてランダムに配置しています。「どこの席に座っても、発見を持ってもらえるように」。自分の枠を超えた新しい出会いがあるはず。
人見さんの奥さま手作りのスイーツもはずせません。こちらはオープン当初からの人気「りんごのケーキ」。バターなどの乳製品の代わりにこめ油を使用。生のリンゴを混ぜ込んでいるので、しゃっきり食感が残りジューシーです。シナモンもたっぷり入っているので風味よく。ふんわり生地にとてもしっとりとした満足高いケーキです。 ほかには、季節によって変わるチーズケーキやお豆腐のブラウニー、4枚も重ねたパンケーキなども。季節ごとに仕込む自家製シロップのドリンク各種もそろっていて、ティタイムも充実しています。
せわしない毎日に疲れたとき、ちょっと落ち着いて考え事をしたいとき、そして何より、おいしいカレーやスイーツをいただきたいときに、訪れたいスポットです。ただただ、自分のためだけに時間が使えることの喜びを感じられます。 なお、人見さんは、毎月5日、15日、25日に「初宮五縁市」を主宰。野菜やスイーツなど近隣店舗などが集まって、地元の暮らしに欠かせない“市”となっています。そのほかイベント出店も多いので、カフェを訪れる前にはホームページなどで確認を。
text:よしおかまさこ(ウエストプラン)
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