空いている今がねらい目!冬の京都「石庭めぐり」
近頃、枯山水セットやスイーツなどでも話題になって、ひそかな人気の「石庭」。京都にも美しい石庭がみられる寺院が数多くあります。特に冬から早春にかけて、凛とした空気の中眺める石庭は格別。2020年の事始めに京都で「石庭めぐり」をしてみませんか?
Summary
石庭の楽しみ方
“石庭”というとみなさんどんなイメージですか?「難しそう」という意見もちらほら聞こえてきそうですが、個人的には「砂紋が美しい!」というだけでもいいと思います。もちろん、配された石の意味や作庭家の意図、禅の心など、知っていれば見方も変わってより楽しめると思いますが、「美しさ」をとっかかりにして、まずは枯山水庭園(石庭)に足を運んでみましょう!廊下に腰かけ、石庭を眺めるだけで、なんだか心がスッとする。そんな体験ができるはずです。
また、石庭を見るには曇りや雨の日が最適なんだそう。影などが出ることがなく、石も砂もしっとりとしていて落ち着いた感じでベスト。せっかく京都に来たけど、雨!なんてときは石庭めぐりへぜひ!
ちょこっとレクチャー、砂紋と石の種類
とはいえ、「砂紋と石の種類」の基本的なことをサラッとご紹介。
砂紋とは水の流れを砂で表したもので、まっすぐな線の「流れ紋」、波々の「さざなみ紋」、半円を幾重にも重ねた「青海波」、グルグル巻きの「渦巻紋」、縦横の線で表す「市松紋」などさまざまな表現方法があります。これらを組み合わせて川や大海原などを表現しているんですね。面白い!
さらに石。2つ以上の石を組み合わせ鶴や亀を表現した「鶴亀島」、平たい石を置いて左右に石を配した「橋石組」、中央に高い石を置いて手前左右に低い石を置く「三尊石」など組み合わせでいろいろなものを表現しています。
どの石が何を表しているのか、初心者には難しいというのが正直なところ。それでも三尊石や橋石組などは特徴があるので比較的わかりやすいですよ。ほら、橋が架かった川に見えてきませんか?
趣の異なる4つの石庭が楽しめる「大徳寺龍源院」
さっそくおすすめの石庭をご紹介しましょう!
まずは「大徳寺龍源院(りょうげんいん)」。書院前に1つと方丈を囲むように3つの庭があってそれぞれ趣の異なる石庭が見られます。
こちらは“阿吽の石庭”とよばれる書院前の「滹沱底(こだてい)」。
ここでの注目は庭の左右にある、阿吽を表現した石。この石、豊臣秀吉が建てた聚楽第の遺構なのだそう。そういわれるとなんだかありがたいものを拝見している気になってきます。
方丈前庭に広がる「一枝坦(いっしだん)」はまさに大海原といった感じの石庭。横に美しく引かれた砂紋が穏やかな感じがして心安らぐ、そんな庭でした。方丈の縁側に腰かけてゆっくり鑑賞してみて。
代わって北側の「龍吟庭(りょうぎんてい)」は苔で大海原を、石組で陸地を表現した庭で、このお寺で唯一、室町時代の作。長い廊下を進んだ先の角から眺めるのがベストスポット!庭全体や一番高い石「須弥山(しゅみせん)」が斜めに立っているところなどが見られます。
最後に日本最小の石庭といわれる「東滴壺(とうてきこ)」。一滴の波紋から大海原をイメージさせる石庭で、2020年1月10日からスタートする「そうだ 京都、行こう。」のキャンペーンのポスターにもなっている必見の石庭。小さいながらにもインパクトのある石庭でした。
方丈をぐるりと回るだけで、大小さまざま趣の異なる庭が見られるお寺。初心者の私でも充分楽しめました!
■大徳寺龍源院
住所:京都市北区紫野大徳寺町82-1
アクセス:市バス「大徳寺前」下車徒歩約5分
TEL:075-491-7635
拝観時間:9時~16時20分(受付終了)※法要時は拝観不可
拝観料:350円
波打つ砂紋が美しすぎる!「大徳寺瑞峯院」
見るなり、おもわず「素敵!」とつぶやいてしまったほどの砂紋の美しさを感じた方丈前庭の「独坐庭(どくざてい)」。奥の蓬莱山(一番高い石)から広がる半島、その先にポツンとある小島に、荒々しい波が打ち寄せる…。これは誰が見てもその情景を思い浮かべられるはずです。
「大徳寺瑞峯院(ずいほういん)」にはもう1つ、珍しい庭があります。それが方丈北側の「閑眠庭(かんみんてい)」。このお寺を創建したのがキリシタン大名の“大友宗麟”ということで、石組みで十字架を表現しているそう。
「どこが?」と一瞬思うのですが、庭に向かって右隅から斜めに見ると縦4石、横3石で十字架を表現しているのがはっきり見えます。禅寺に十字架…。はじめは不思議に思いましたが、実際、目にすると、違和感なくしっくりしていました。
実は、どちらの庭も作庭は昭和の巨匠・重森三玲(しげもりみれい)。東福寺の小市松の庭園などでデザイン性が高いイメージもされがちな重森三玲の庭ですが、こちらの庭では斜線上に配石したり、遠近法を用いて広さを出すなど、室町時代の作庭法をしっかり踏襲しているのもポイント。だから違和感なく見ることができたのだと納得しました。さすが名匠です!
また、お寺の門前にある庭の名前を彫った石標、こちらは重森三玲直筆のものなのだとか。重森三玲作庭の庭があるお寺に設置されていることも多いそうですよ。目印にもなっているんですね。
■大徳寺瑞峯院
住所:京都市北区紫野大徳寺町81-1
アクセス:市バス「大徳寺前」下車徒歩約5分
TEL:075-491-1454
拝観時間:9時~16時30分(受付終了。拝観は17時まで)
拝観料:400円
珍しい!黒砂の石庭がみられる「妙心寺退蔵院」
数ある妙心寺の塔頭の中でも古刹の退蔵院。宮本武蔵が逗留したことや、大きなナマズを小さな瓢箪で捕まえるにはどうするか?という禅問答で有名な瓢鮎図(国宝)も所有する寺院です。
歴史ある古いお寺なのですが、広い境内をくまなく楽しめるように、無料の音声ガイドアプリを導入するなど、見どころの多い寺院ならではのアイデアも。
また、女子におすすめしたいのが、「ひと粒の禅」というあめ玉。何か1つのことに集中するのも禅修行の1つ。何もせずただ飴をなめることも修行になるのだとか。境内飲食NGなイメージのお寺で、方丈の縁側に座ってただひたすら飴を舐める…。なんかユニークですよね。
しかもこのあめがおいしい!境内でとれたゆずと薬草のゴツコラと水飴で作られているそう。なめ終わるころには、中に入っている杉のパウダーでふわっと木の香りが広がる。まさにお寺の飴。ここでしかできないオンリーワンな体験をぜひ。
さて、退蔵院の石庭は室町時代の画家、狩野元信が作庭した、枯山水庭園の「元信の庭」と、白と黒、色の異なる敷砂で人や物事の二面性を表した「陰陽の庭」の2つがあります。
「元信の庭」は緑が多く、モノトーンな枯山水のイメージを覆すような明るさが印象的でした。砂紋は引かれていないけれど、石の配置で水の流れを感じる。さすが、画家作庭の庭です。
逆に、「陰陽の庭」は砂紋が美しい、ザ・石庭。中央に大きな枝垂桜の木もあり、春も楽しみな庭です。
ほかではなかなか見られない黒砂が敷かれた陰の庭には地中の奥深くどこまでも続いていく下への広がり、陽の庭には横への広がりを感じましたが、みなさんはどんな印象をうけるでしょうか?
ほかにも境内には四季折々の美しさがみられる池泉回遊式庭園「余香苑(よこうえん)」もあるので、そちらもお見逃しなく!
■妙心寺退蔵院
住所:京都市右京区花園妙心寺町35
アクセス:JR嵯峨野線花園駅から徒歩約7分
TEL:075-463-2855
拝観時間:9~17時(閉門)
拝観料:600円
石庭めぐりにお得なプランも!
今回紹介した3つの寺院は、JR東海『そうだ 京都、行こう。』キャンペーン対象の寺院。
「京都 禅寺と石庭めぐり」旅行プランには、冬のお寺めぐりにうれしいあったか足袋や、ツアー限定の特別御朱印(7カ寺から1カ寺をセレクト)の引換券もいただけます。さらに『第54回「京の冬の旅」』非公開文化財特別公開1カ所を拝観できる入場整理券付きととってもお得なプラン。首都圏発で日帰りから1泊、2泊のプランがあります(静岡発、名古屋発プランもあり)。
さらに、現地での日帰りプランとして、今回紹介した「龍源院」、「瑞峯院」と大徳寺「大仙院」の3寺院の石庭を、重森三玲のお孫さんでご自身も作庭家の重森千靑さんの案内でめぐるプランや、「妙心寺退蔵院」では坐禅体験と『阿じろ』の朝がゆがいただけるプランなどもあるので、参加してみるのもおすすめです。
また、同時期に開催する京都市観光協会主催の『第54回「京の冬の旅」』では大徳寺本坊の法堂が「京の冬の旅」では初公開されるなど、普段見られない寺院も多数あるので、のんびりと2泊3日で京都めぐりを楽しんでみませんか?
京都の冬は「寒い」イメージですが、そんな時期だからこそ楽しめる特別なことがたくさん。しっかり防寒していつもとは違う京都の楽しさを体感してみませんか?また、今回紹介した石庭は写真撮影もOK(方丈など建物の内観は不可)なので、素敵な写真を撮って旅の思い出にしちゃいましょう!
●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更、消費税率変更に伴う金額の改定などが発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
Text:田島暁美