【北海道・小樽】「小樽運河クルーズ」で楽しむ〝船から目線〟の小樽運河って?
小樽観光で外せない定番のスポットといえば、小樽運河。運河沿いに整備された遊歩道を散策するのも素敵ですが、クルーズ船に乗って「船から目線」を楽んでみるのはいかがでしょう。 美しい観光スポットとして整備されている「南運河」と現役時代の面影を色濃く残す「北運河」の表情の違いを見比べ、船上で運河や小樽の歴史の説明に耳を傾ける体験は、小樽の旅の思い出をより深みあるものにしてくれますよ。
Summary
北海道開拓の玄関口として栄えた小樽に思いを馳せつつ、いざ出航!
小樽運河が誕生したのは今から約100年前の大正12年(1923)。当時の小樽港は北海道開拓の玄関口として非常に栄えていました。沖に停めた大きな船から荷物を効率的に降ろすため、より多くの艀(はしけ/小型の荷物運搬船)が接岸できるよう、海面を埋め立てて造られたのが小樽運河でした。一般的な運河が陸を掘って直線的に造られるのと違い、緩やかなカーブを描いているのが特徴です。
運河クルーズの受付・発着所があるのは、JR小樽駅の駅前通りをまっすぐに海に向かって進み、運河に架かる中央橋を渡り切った場所。平日でもチケット購入のための行列ができたり満員になることも多いので、事前のネット予約がおすすめです。
クルーズの所要時間は約40分。11~3月は船をホロで覆い、座席をシートヒーターで温めるなどの配慮がされ、冬も安心です。ほとんど揺れもないので船酔いをすることもまずありません。船上にトイレはないので、乗船前に済ませておきましょう。
乗り場には航路を示した案内板があるので、最初に頭に入れておくとクルーズをより楽しめそうです。ベルト型のライフジャケットを装着してクルーズ船に乗りこみ、出航の時刻を迎えると、船はまず観光スポットとしておなじみの「小樽運河」とは反対の方向へ…。
クルーズ船は運河と平行な月見橋をくぐり、まずは海、小樽港内へと漕ぎ出します。明治時代に日本初のコンクリート製で造られ今も現役で活躍する北海道遺産の一つ「北防波堤」や、海上保安庁の巡視艇や北海道警察の警備艇、タグボートについてなど、船長さんの解説はとても分かりやすくて興味深くグイグイと引き込まれます。
※天候状況などにより海に出ない場合もあります。
船上からはカモメやウミネコ、ウミウなどの姿を見ることもできます。季節によってはマガモなど渡り鳥の姿も。海鳥の見分け方は船長さんに聞いてみましょう。水が澄んでいるため、水中に目を凝らせば魚の群れを見られることもあります。秋にはサケが運河に入ってくることもあるんだとか。
100年前の面影を色濃く残す、小樽っ子の原風景「北運河」
海の見学が終わると、クルーズ船は再び運河へ。運河が造られた当時の雰囲気を色濃く残す「北運河エリア」へと向かいます。いつも見ている観光スポットの運河は、道路拡張のため昭和60年代に幅20メートルに埋め立てられてしまいましたが、北運河の運河幅は当初と同じ40メートルのまま。幅が広いため、多くの漁船などが停泊しています。
こちらは北海製罐小樽工場。大正10年(1921)に設立され、食品用缶や飲料用缶などの金属容器のほか、PETボトル、スプレー缶などさまざまな容器の製造を行っています。スーパーなどでよく手に取る缶詰なども同社製品は数多く使われていて、缶をよく見るとこの社名横に記されたのと同じ「四つ葉マーク」が刻まれているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
観光客の姿はまばらな北運河エリアですが、別記事で紹介した「PRESS CAFÉ」が入る旧渋澤倉庫や明治後期の代表的石造り建築として国指定重要文化財となっている旧日本郵船株式会社小樽支店(2024年6月まで保存修理中)など風情ある建物が並びます。
運河北端までたどり着くと船はここで180度方向転換をして、南運河の方向へと戻ります。左右が入れ替わるので、どこの座席に座ってもしっかりと両岸の風景が見学できるのもうれしいポイントですね。
南運河方向へと進み竜宮橋の手前で左側に見えてくるのは、大正13年(1924)築の北海製罐第三倉庫。この建物はかつて「仮面ライダー」のロケに使われたこともあるんだそう。老朽化のため数年前には取り壊しの危機もありましたが、市民の熱い要望などから存続が決まりました。100年前、当時の最先端の技術を取り入れて造られた建物で、よく見れば入出荷時に艀に向けて製品を滑り下ろすのに使った螺旋階段なども残っています。
クルーズではいくつもの橋をくぐるのも魅力の一つ。橋げたの高さが一番低い竜宮橋では「頭が橋にぶつかってしまうのでは?」とハラハラしますが、大丈夫。水位をしっかりと確認しながら運航しているため、スリルさえ安心して楽しむことができます。
竜宮橋を過ぎ、右側に見えるのは「旧小樽倉庫」。屋根のシャチホコが特徴的ですね。北海道ではめずらしい瓦屋根の和洋折衷建築で、北側部分は小樽市総合博物館運河館、中央部分は小樽近郊のユニークなおみやげや作家作品を展示・販売するアンテナショップ「小樽百貨UNGA↑(うんがぷらす) 」として活用されています。
船上から眺めるいつもとは違う目線の「小樽運河」。ロマンチックなナイトクルーズもおすすめ
クルーズ船発着所のある中央橋を通り過ぎると、船はいよいよ南運河。誰もがよく知る観光スポットのエリアへ。
左側には運河倉庫群が見えてきます。ゆったりと進むクルーズ船からは、各倉庫の屋根や入口の造り、色合いの違い、屋号の観察などもできます。陸から運河越しに見るのとはまた違う風景に惹きつけられ続けて目が離せません。
船長さんは周辺のみどころ情報の紹介などもしてくれるので「船を降りたら小樽ビールの醸造所を見学して、ビールを飲もう」「今春できたばかりだという小樽国際インフォメーションセンターでおみやげを買おう」など、ワクワク感の爆上がりが止まりません。
観光スポットの浅草橋手前で再び方向転換をすると、クルーズももう終盤。岸の遊歩道を歩く観光客やすれ違う別のクルーズ船に手を振ったりしながら、残り時間を楽しみましょう。
今回紹介したのは明るい時間帯の「デイクルーズ」でしたが、ガス灯や建物の灯が水面にきらめく「ナイトクルーズ」もおすすめです。昼間とはまた違う、ロマンチックな雰囲気が楽しめます。
発着所では乗船記念となる「御船印」やポストカードの販売もあり、旅のよい思い出としてもおすすめです。
陸から見学する「小樽運河」とは一味違う、船から目線の運河が見学できる小樽運河クルーズ。ライラック香る初夏、しんしんと雪が降る冬など、季節によって違う表情を見せてくれるので、季節、時間帯を変え何度でも訪れたくなりますね。
■小樽運河クルーズ(おたるうんがくるーず)
住所:北海道小樽市港町5-4
TEL:0134-31-1733
運航時間:季節によって異なるため、ホームページなどでご確認ください。
料金:デイクルーズ1800円、ナイトクルーズ2000円(中学生以上の料金)
https://otaru.cc
Text:石渡裕美
Photo:石渡裕美(一部、小樽運河クルーズ)
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