【おとなのソロ部】「市谷の杜 本と活字館」で活版印刷と本作りの魅力を体感するひとり時間
活版印刷をご存じですか? 金属の小さな棒に文字が刻まれた「活字」にインクを付けて印刷する、明治から昭和中期にかけて広く普及した印刷技術です。デジタル入稿が主流となった現在、昔ながらの機械と手仕事によるアナログ感や、レトロな文字の風合いが人気を集めています。そんな印刷の原点ともいえる活版印刷と、本作りをテーマにした文化施設「市谷の杜 本と活字館(いちがやのもり ほんとかつじかん)」が市ケ谷にあると聞き、訪れてみました。修復された大正期創建の建物も素敵で、本や文字、機械好きはもちろん、レトロ建築好きにもおすすめのスポットです。
Summary
ワークショップやイベント、企画展も気になる
2階の「展示室」では活字や本作り、印刷に関連する企画展を約4カ月ごとに開催しています。2024年10月14日(月・祝)までは、雑誌がどうやって作られているのか、イラストや写真、映像、クイズ形式などで解説する『発見!雑誌づくり工場(無線とじ編)』を開催。
「制作室」では無料のしおり印刷体験のほかに、予約制のワークショップを随時開催しています。そのひとつ、活版印刷とオリジナルスタンプでポチ袋を制作するワークショップは、印刷したい文字を10字以内で考えて、活字を文選したら卓上活版印刷機で印刷します。そのほか、文庫本のようなリングノート作り(所要1時間、参加費3000円)など、月によってさまざま。
本格的に活版印刷で本作りを学びたい人には、文選・植字・印刷・製本まですべての工程を自分の手で行う、4カ月(全11回)の本づくりのワークショップ(参加費2万円※2024年度は定員に達しているため参加不可)がおすすめ。どのワークショップも開催日時などの詳細は公式サイトでチェックしてください。
普段入ることができない、1階「印刷所」に潜入し、活版印刷機を使って印刷する作業を間近で見学できる「印刷所ツアー」も開催しています。所要時間50分、参加費は無料。開催日時・予約は公式サイトで確認を。ずらっと並ぶ活字棚(ウマ)、植字台、組版道具、印刷機など、印刷工場のすべてがここに集結する、貴重な現場は見ごたえあり。
大正期に建てられた歴史ある建物もみどころ
2016年まで工場の一部として利用された営業所棟(通称・時計台)は、整備計画の一環として、90年以上の時を経て竣工時の姿に修復・復元されました。建物はこれまでの建築から分離し、自由な意思や発想で作ることを掲げる“分離派(セセッション)”の作風で、建物の象徴でもある時計の文字盤や正面玄関の社名看板は、書体デザイナーによって忠実に再現するというこだわり。
館内には、遊び心のある案内表示がちらほら。例えば案内所、エレベーターの階数表示、さらにトイレマークは活字がモチーフ。
2階奥には活字ベンチもありました。1階の展示を見ていればこのユニークなフォルムが活字だということが分かりますね。すぐ隣には印刷や紙、デザインに関する本を集めた閲覧図書コーナーもあるので、読書をしたり、カフェ休憩をしたりもできます。
『広辞苑』など歴史に残る本や週刊誌など、多数の出版物を市谷工場で製造してきた大日本印刷。印刷の歴史が刻まれた場所で、印刷の原点となる活版印刷と本作りの楽しさを知るとても充実したソロ時間でした。
■市谷の杜 本と活字館(いちがやのもり ほんとかつじかん)
住所:東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
TEL:03-6386-0555
営業時間:10~18時
定休日:月・火曜(祝日の場合は開館)
料金:無料
■おすすめの利用シーン: 活版印刷や本作りを学びたいとき、気軽にワークショップを体験してみたいとき、レトロ建築を鑑賞したいとき
Text:木村秋子(editorial team Flone)
Photo:yoko
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