〝今だから〟出会える。歩みを続けるあたらしい能登へ【前編】

〝今だから〟出会える。歩みを続けるあたらしい能登へ【前編】

石川県 観光スポット おでかけ るるぶ情報版(国内)編集部
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2024年元日の能登半島地震からまもなく2年。復興への歩みを続ける能登の今を訪ねて、1泊2日で能登半島をめぐりました。前編、後編に分けてお送りします。

Summary

能登の旅はここから。人々が集う「のと里山空港」

のと里山空港
のと里山空港
のと里山空港からは要予約(電話・インターネット)、乗合制の「ふるさとタクシー」の利用が便利です。利用エリアごとの定額で、希望の場所で降ろしてもらえるのも便利。1人から利用可能。問合せは能登の旅情報センター(電話:0768-26-2555)へ
のと里山空港からは要予約(電話・インターネット)、乗合制の「ふるさとタクシー」の利用がおすすめ。利用エリアごとの定額で、希望の場所で降ろしてもらえるのも便利。1人から利用可能。問合せは能登の旅情報センター(電話:0768-26-2555)へ

今回の旅のアプローチは羽田空港(東京国際空港)から。羽田からのと里山空港の便は、2024年12月以降1日2便となり、震災前と同様に。
午前と午後に1便ずつ、飛行時間も1時間弱なので、首都圏からなら弾丸で日帰りも可能。
のと里山空港でレンタカーを借りれば、金沢からアプローチするよりぐっと効率的に半島中心のスポットを回れます。

もしくは、往路は北陸新幹線で金沢イン、能登を巡ってのと里山空港から帰路につけば、あっという間に羽田。金沢も能登も両方楽しみたい方には、このルートが一押しです。

白い建物に赤いロゴマークが目印
白い建物に赤いロゴマークが目印

そんなのと里山空港で、白い柱とガラス張りの姿がひときわ目を引くのが「NOTOMORI(のともり)」。震災のあった2024年11月にオープンした仮設の飲食店街です。

館内は柱のない開放的な空間。フードコートのように飲食店が並びます
館内は柱のない開放的な空間。フードコートのように飲食店が並ぶ
輪島塗モチーフのペンダントライトにも注目
輪島塗モチーフのペンダントライトにも注目

内部は仕切りのない開放的な空間で、カフェに和洋中と、6つの飲食店が営業。輪島や穴水など能登で被災した店舗が入り、地元の人も観光客も憩える地域のハブ的な機能を果たしています。

この施設、仮設と言って侮ることなかれ。能登牛の「てらおか堂」から輪島の名店「mebuki -芽吹-」の運営する「芽吹食堂」まで、味は折り紙付き。あの有名店の味が、今ならフードコート気分で楽しめます。Wi-Fiやコンセント完備で自由に使えるコワーキングスペースもあるので、旅の初めにも終わりにも、重宝すること請け合いです。

■NOTOMORI(のともり)
住所:石川県輪島市三井町洲衛10-11 のと里山空港第一駐車場内
TEL:店舗により異なる
営業時間:カフェ10~16時、ランチ11時30分~13時30分、夕食17~21時
定休日:日曜夜 ※店舗により異なる
※営業時間、休日は変更になる場合あり。事前に公式SNSなどで確認を

かたちは変わっても健在! 能登のシンボルたち

黒瓦の屋根が連なる輪島市の天領黒島地区。瓦が落ちた家屋にはビニールシートがかけられています
黒瓦の屋根が連なる輪島市の天領黒島地区。瓦が落ちた家屋にはビニールシートがかけられている

海岸線から山間部まで車を走らせていると、いたるところで震災によって地形が変わってしまった場所を見かけます。

半島西岸、輪島市の天領黒島地区は、北前船の拠点として繁栄した、黒瓦の屋根が連なる重要伝統的建造物群保存地区ですが、ここも震災によって大きな被害を受けました。

天領黒島地区の前の海岸。テトラポットの部分が震災前の海岸線でした
天領黒島地区の前の海岸。テトラポットの部分が震災前の海岸線だった
半島を縦断するのと里山海道。片側通行の場所もありますが、全線開通しており問題なく走行できます
半島を縦断するのと里山海道。片側通行の場所もあるが、全線開通しており問題なく走行できる

かつて目の前に広がっていた緩やかな弧を描く海岸線は、震災によって海底が4mも隆起したことにより、いまははるか前方に退いています。

軍艦の舳先の両側に崩れた土砂が積みあがった見附島
軍艦の舳先の両側に崩れた土砂が積みあがった見附島

能登を代表する景勝地、「見附島(みつけじま)」もそのひとつ。震災前は「軍艦島」の異名の通り、正面から見た姿がとがった船の舳先の形をしていましたが、現在はその両側が崩れ、軍艦というよりは山のよう。
島の後ろ側も大きく崩れ、ほぼ半分の大きさになったといいますが、前から見れば今なおその威容は健在です。

ハート形の「O」の文字の中に見附島を入れて、はいチーズ!
ハート形の「O」の文字の中に見附島を入れて、はいチーズ!

8月に設置された「LOVE」の文字をかたどったポケモンのモニュメントが、新しいシンボルの門出に花を添えています。

■見附島(みつけじま)
住所:石川県輪珠洲市宝立町鵜飼
TEL:0768-82-7776(珠洲市観光交流課)
営業時間・定休日:見学自由

「イカキング」は絶好の撮影スポット
「イカキング」は絶好の撮影スポット

一方で、震災にもびくともしなかったシンボルもあります。半島の東岸、能登町の九十九湾の入り江にある「イカの駅つくモール」は、この地域で盛んなイカ漁についての展示や、獲れたてのイカを活きたまま船上で1パイずつ急速凍結する、特産の「船凍イカ」の販売を行うとともに、それを使った料理が食べられるレストランも併設する、道の駅ならぬ“イカの駅”。
スタイリッシュな建物の前に鎮座する、巨大なスルメイカ「イカキング」が目印です。
震災の際には入り江の海面が上昇し、「イカの駅つくモール」も床上まで浸水。施設の前にある、遊覧船「イカす丸」が発着する堤防も被害を受けましたが、イカキングは無事でした。公式のXでは「津波が迎えに来ましたが、海には帰らず、いつもの場所に居ます。奥能登が好きだから。」とのメッセージが残ります。イカキングは、今日も変わらない姿で、観光客を迎えています。

スルメイカのリアルな質感を再現したイカキングの造形
スルメイカのリアルな質感を再現したイカキングの造形
「イカす丸」の船倉からは海中を望むことができます
「イカす丸」の船倉からは海中を望むことができる
「イカの駅つくモール」では、イカを使った商品をはじめ、「いしり」や能登の塩などの調味料、地酒や菓子など地域の産品が購入できます
「イカの駅つくモール」では、イカを使った商品をはじめ、「いしり」や能登の塩などの調味料、地酒や菓子など地域の産品が購入できる
船の上で1パイずつ急速冷凍した「船凍イカ」の販売も
船の上で1パイずつ急速冷凍した「船凍イカ」の販売も
手作り感あふれる「イカキング」のステッカーもありました
手作り感あふれる「イカキング」のステッカー

■イカの駅 つくモール(いかのえき つくもーる)
住所:石川県能登町越坂18-18-1
TEL:0768-74-1399
営業時間:9時30分~17時
定休日:水曜

再開が復興の活力に。能登の祭りを体感するなら

能登といえば、祭りの本場。能登固有の意匠に彩られた巨大な燈篭「キリコ」を担ぎ、練り歩くキリコ祭りが有名で、平成27年4月に「灯り舞う半島 能登~熱狂のキリコ祭り~」として、文化庁の「日本遺産」にも認定されました。毎年7月から9月にかけて、能登全域の180もの地区で祭が行われています。

大きなものでは高さ15m、4階建てのビルにも相当する巨大なキリコなので、震災では各地のキリコが被害を受けましたが、今年は規模を縮小しながらも、能登町の「あばれ祭り」をはじめ、いくつもの祭りが再開されました。

機会があれば、実際の祭りを体験するのが一番ですが、いつでもその迫力を体感できるのが能登各地にある祭り会館。輪島にある「輪島キリコ会館」は復旧作業のため閉館中ですが、和倉温泉の「和倉温泉お祭り会館」は、2025年7月に営業を再開。周辺では旅館の再建が進む和倉温泉の中で、元気に営業しています。

能登エリアの観光拠点でもある和倉温泉お祭り会館
能登エリアの観光拠点でもある和倉温泉お祭り会館

ここでは、「青柏祭」、「石崎奉燈祭」、「能登島向田の火祭」、「お熊甲祭」という、「七尾の四大祭り」の展示が行われています。展示室は天井まで吹き抜けの大空間。入って驚くのは、そのスケールの大きさ! 目の前に屹立する高さ13m、黒光りする漆を纏う絢爛豪華なキリコは石崎奉燈祭の主役。能登でも最大級のキリコは重さ約2トン、100人もの男衆によって担がれるといいます。その後ろに控えるのは、その名も「でか山」と呼ばれる巨大な山車。こちらは重さ20トン、直径2mの車輪ひとつが1トン、高さは3~4階建てのビルに匹敵。その大きさは日本一と言われています。上部に向かって広がる扇のような形は、かつて豊かな物資を積んで日本海を航行した北前船を模して造られたもの。大漁旗や各町の幟で華やかに飾り付けられています。とにかく大きい! このキリコとでか山を見るためだけにでも訪れる価値ありです。

館内には壁一面の巨大なシアターもあり、祭りの映像に包まれれば、まるで自分も参加しているような気分に。スクリーンに映し出される「能登島向田の火祭」は、やはり高さ30mという大松明を豪快に燃やす祭り。次に訪れた際には、どうして能登の祭りはこうもスケールが大きいのか、聞いてみたいと思います。

巨大なキリコ(左)とでか山(右)は、大きすぎて階上のステージからでなければ全体の撮影がむずかしいほどです
巨大なキリコ(左)とでか山(右)は、大きすぎて階上のステージからでなければ全体の撮影がむずかしいほど
でか山を後ろから見たところ。方向転換したり止まったりする際には、巨大な車輪に大きな梃子(てこ)のような木を差し込みます
でか山を後ろから見たところ。方向転換したり止まったりする際には、巨大な車輪に大きな梃子(てこ)のような木を差し込む
巨大なスクリーンに投影される「能登島向田の火祭」の様子
巨大なスクリーンに投影される「能登島向田の火祭」の様子
和倉温泉お祭り会館のエントランスには能登のさまざまな祭りの幟が掲げられています
和倉温泉お祭り会館のエントランスには能登のさまざまな祭りの幟が掲げられている

■和倉温泉 お祭り会館(わくらおんせん おまつりかいかん)
住所:石川県七尾市和倉町2-13-1
TEL:0767-62-4332
営業時間:9~17時(入館は閉館30分前まで)
料金:展示ホール入館800円
定休日:月~木曜(※当面の間)

また輪島では「輪島工房長屋」が再開しており、輪島漆器の職人の工房見学や箸作りの体験、ギャラリーでは漆器の展示・販売も行っています。輪島塗が施された小さなかわいい能登のキリコもチェックしてみてくださいね。

輪島工房長屋で見つけた小さなキリコたち
輪島工房長屋で見つけた小さなキリコたち
輪島工房長屋
輪島工房長屋
漆塗りの箸に自分で模様を彫る「My 箸づくり体験」は所要約30分、2000円
漆塗りの箸に自分で模様を彫る「My 箸づくり体験」は所要約30分、2000円
彫った部分にスタッフの方が金を入れて仕上げてくれます
彫った部分にスタッフの方が金を入れて仕上げてくれる

能登の玄関口であり、北陸地方有数の温泉地でもある和倉温泉では、震災前に営業していた旅館20軒のうち、2025年10月現在7軒が再開しています。今回宿泊した「日本の宿 のと楽(にっぽんのやど のとらく)」は、2024年11月にいち早く再開した宿。訪れた10月上旬には、地元の方を中心に、想像していた以上の賑わい。七尾湾が見渡せる大浴場で、海中から湧き出る、ミネラルたっぷりで塩分強めのまったりとした湯を楽しんでいました。

由緒ある和風温泉旅館の風格漂う「日本の宿 のと楽」のエントランス
由緒ある和風温泉旅館の風格漂う「日本の宿 のと楽」のエントランス
落ち着いた色調とあたたかい照明がくつろげるロビーではコーヒーなどのソフトドリンクのサービスも
落ち着いた色調とあたたかい照明がくつろげるロビーではコーヒーなどのソフトドリンクのサービスも
和倉湾を目の前に望む客室
和倉湾を目の前に望む客室
能登牛やノドグロなど、地元の素材が美しく調理された夕餉の膳
能登牛やノドグロなど、地元の素材が美しく調理された夕餉の膳
柔らかく、ひとくちで和牛の旨みが堪能できる能登牛はすき焼き風で
柔らかく、ひとくちで和牛の旨みが堪能できる能登牛はすき焼き風で

■日本の宿 のと楽(にほんのやど のとらく)
住所:石川県七尾市石崎町香島1-14
TEL:0767-62-3131
料金:1泊2食 平日1万9950円~
チェックイン:15時
チェックアウト:10時

〝今だから〟出会える。歩みを続けるあたらしい能登へ【後編】


Text:るるぶ情報版編集部(廣井友一)

●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。

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