〝今だから〟出会える。歩みを続けるあたらしい能登へ【後編】
2024年元日の能登半島地震からまもなく2年。復興への歩みを続ける能登の今を訪ねて、1泊2日で能登半島をめぐりました。今回は後編です。
〝今だから〟出会える。歩みを続けるあたらしい能登へ【前編】
震災を経て進化する「能登キュイジーヌ」
震災では多くの飲食店が被害をうけましたが、のと里山空港の「NOTOMORI」以外にも、各地で仮設の店舗や、新たな形態で営業を再開している様子が見られます。また、この地で料理人どうしの交流が生まれ、新しい食の体験が生まれているのも興味深いところです。珠洲市の「道の駅すずなり」の隣で営業している「すずなり食堂(すずなりしょくどう)」もそのひとつ。
お昼時に訪れると、工事関係の方に観光客も入り交じって、ひっきりなしに人が出入りする賑わいぶり。オープンで清潔な厨房も活気にあふれ、カウンターのお味噌汁からは湯気が上がります。こちらでいただいたのが店一押しの「福幸丼」。ブリやタイ、イカなど能登半島の魚介と、同じく震災からの復興が進む南三陸から届くサーモンをはじめとした素材がコラボした海鮮丼です。丁寧に仕事をされた、10種以上の素材が美しく盛り付けられた丼は、とても仮設食堂の一品とは思えない美しさ。ネタごとに素材の味と歯ごたえを満喫でき、本当においしい!
ここは震災後、避難所にお弁当を届ける活動をしていた地元珠洲の4つの飲食店が合同で出した店舗。もともと和食店などで腕を振るった料理人の皆さんが作る料理がおいしいのも納得。震災前からの人気メニューのタコカツ丼のほか、サバの塩焼きやハンバーグ、ミックスフライなど、食堂らしいメニューも充実。仮設のため、現時点では2026年12月までの営業予定ですが、その先は未定。訪れる際は最新情報を確認して。
■すずなり食堂(すずなりしょくどう)
住所:石川県珠洲市野々江町シ部15
TEL:0768-84-5100(合同会社すずキッチン)
営業時間:11時~14時30分(14時LO)、17時30分~21時
定休日:不定休
※営業時間、休日は変更になる場合あり。事前に公式SNSなどで確認を
休業中の輪島キリコ会館の隣に店を構える「mebuki -芽吹-(めぶき)」でいただいたのは、「能登牡蠣のまぜそば」。中華そばのイメージで注文したら、お盆の上にはなんとも上品に盛り付けられた白い器が。クリーミーなスープの上には、レモングラスやバーベナなど10種以上のハーブがこんもりと盛られています。その下の中華麺としっかりまぜてほおばると、爽やかな緑の香りの後に、ふくよかなカキのうまみが押し寄せました。七面鳥のダシをベースに、牡蠣のコンフィをオイルごと合わせたという乳白色のスープには、乳成分は一切加えていないというから驚きです。春先が旬の能登牡蠣を冷凍したものを使っているため、1年中食べられます。
カキはもちろん、ハーブも七面鳥も能登の素材を使った唯一無二のこのメニューは、震災の後に誕生した一品。考案した池端隼也さんは、輪島のフレンチの名店「ラトリエ・ドゥ・ノト」のオーナーシェフ。池端さんのレストランも震災で大きな被害を受け、現在は休業中です。震災後、同じく被災した飲食店の人たちと共同で炊き出しを行ううちに、今までは何となく顔見知りだった、ジャンルも様々な料理人たちともより深く知り合うことに。ラーメンに和食、中華まで、その時の仲間たちと出店したのがこの「mebuki -芽吹-」です。料理人の交流は、ジャンルを超えてこの店のメニューに結実。フレンチとラーメンのおいしいマリアージュが「能登牡蠣のまぜそば」を生み出しました。白ごはんが付くので、麺を食べ終わったらごはんを投入。能登牡蠣の旨みを最後まで味わいましょう。
この日もお店では、バーのマスターや海女さんなどさまざまなバックグランドの方が働いていました。次は夜訪れて、能登の素材とお酒をゆっくりと楽しみたいものです。
■mebuki -芽吹-(めぶき)
住所:石川県輪島市マリンタウン6-1
TEL:090-2102-4567
営業時間:11時30分~14時30分、18~22時(料理は21時LO)
定休日:土曜の昼、日曜
※営業時間、休日は変更になる場合あり。事前に公式SNSなどで確認を
地元の魅力を再発見・再発信
■大本山總持寺祖院(だいほんざんそうじじそいん)
住所:石川県輪島市門前町門前1-18-1
TEL:0768-42-0005
営業時間:8~17時
定休日:無休
料金:拝観500円
2度目の震災を機に、寺と門前町が一体となって、話し合いながら復興を進める動きが活性化しています。町歩きの起点となる「櫛比の庄 禅の里交流館(くしひのしょう ぜんのさとこうりゅうかん)」がその現場となり、總持寺と門前町の歴史の展示や、町の人が作った門前の商店街のマップなども配布しています。町の働きかけもあり、2024年12月には、寺の16棟の建物が国の重要文化財に指定。ここから10~14年かかるとも言われる寺院復興への長い道のりを、着実に歩み始めています。
■櫛比の庄 禅の里交流館(くしひのしょう ぜんのさとこうりゅうかん)
住所:石川県輪島市門前町走出6-10
TEL:0768-42-3550
営業時間:9~17時
定休日:月曜
料金:入館無料
日本三大朝市のひとつとされ、1200年もの歴史がある「輪島朝市(わじまあさいち)」。市が開かれていた朝市通りは震災で全焼し、現在は更地になっていますが、震災後間もない2024年3月に金沢・金石で開催された第一回「出張輪島朝市」には1万3千人もの人が訪れました。その後も出店のオファーは相次ぎ、これまでに全国240か所で開催。多くの人が各地でその素朴で温かい魅力にふれてきました。
そんな「出張輪島朝市」が、今年7月、地元輪島に「出張輪島朝市 in ワイプラザ輪島店(しゅっちょうわじまあさいち いん わいぷらざわじまてん)」として戻ってきました。地元でとれた野菜や果物に海産物、名産の輪島塗や珠洲焼の店まで、現在36店舗ほどがほぼ毎日出店。ここに行けば、朝市の雰囲気を楽しめ、市の人たちと話をすることができます。歴史ある朝市ですが、震災前は高齢化などの影響もあり、店舗も訪れる人も減っていたといいます。地元の若者や小さな子ども連れの家族など、様々な人が行きかうショッピングセンターへの出店は、今まで身近にありながら朝市のことをあまり知らなかった人たちにも新鮮なものとして歓迎されているようです。
■出張輪島朝市 in ワイプラザ輪島店(しゅっちょうわじまあさいち いん わいぷらざわじまてん)
住所:石川県輪島市宅田町41 ワイプラザ輪島店内
TEL:0768-22-8733
営業時間:9~14時
定休日:水曜
今回1泊2日で、多くの能登の人たちのお話を伺いました。まだまだ大変ななか、皆さん「ぜひ能登に来てください」と柔らかな笑顔で話してくれました。震災によって風景が変わったところはあっても、「能登はやさしや土までも」と言われた人々のあたたかさは少しも変わりません。復興の歩みとともに日々変わり続ける、“今だから出会える“能登へ。
Text:るるぶ情報版編集部(廣井友一)
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●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。




