【るるぶ取材班の旅の裏側】香港を愛するフォトグラファーに聞く! 動き回って、街を切り撮る3泊4日香港旅
「次の休み、どこ行こう?」週末の国内旅から憧れの海外旅まで、旅の計画は最高の癒やし。でも実際に考え始めると悩むことも…。そんな旅好きの背中を押す連載「るるぶ取材班の旅の裏側」。『るるぶ』『ララチッタ』などのガイドブック制作に携わる“旅のプロ”を直撃! 取材中のオフ日やプライベートの旅スタイルを聞きました。この記事を読めば、あなたの旅がちょっとアップデートされるかも!?
フォトグラファー・斉藤純平さんに聞く。旅のプロがハマった香港の魅力
前回のフランス・パリに続く第2回目のゲストは、フォトグラファーの斉藤純平さん。『るるぶ』をはじめ、数々の旅行誌やガイドブックの取材に携わってきた、まさに“旅のプロ”です。今回は、これまでに最も多く訪れている海外取材地・香港の魅力と、斉藤さんならではの旅の楽しみ方を聞きました。
さいとう じゅんぺい。フォトグラファー歴約25年。
撮影スタジオ勤務を経て独立。現在はフリーランスとして、『るるぶオランダ・ベルギー』『ララチッタ スイス』『るるぶギリシア』『るるぶカナダ』『せかたび香港』など、さまざまなガイドブック取材に参加。
JR東日本の販促ポスター「FUN!TOKYO!」などの広告ビジュアルから、料理のレシピ本まで幅広く活躍中。
編集部:まず、斉藤さんにとって香港ってどんな街ですか?
斉藤純平さん(以下、斉藤):一言でいうと、“すごく動きやすい街”ですね。これが香港の一番の魅力だと思っています。
編集部:動きやすい、とは? 具体的にはどういうことでしょう?
斉藤:例えばニューヨークみたいな都会的なエリアもあれば、タイやベトナムの地方都市みたいなローカルな雰囲気の場所もあって、それがすごく狭い範囲にギュッと詰まっているんですよ。ちょっと移動するだけで、全然違う景色に出合えるのがおもしろいですね。
編集部:確かに、香港は街の雰囲気がエリアごとにガラッと変わりますよね。
斉藤:しかも高低差もあるので、見える景色の変化も大きい。例えば街の中心から少し移動して「ピーク・トラム」に乗れば、10分くらいで一気に「ヴィクトリア・ピーク」という山の上まで行けて、まるで別の場所に来たような感覚になります。
編集部:都会と自然がすごく近い距離にあるんですね。
斉藤:街歩きもできるし、軽くトレッキングみたいなこともできるし、その切り替えがすごく気軽にできるのが香港の魅力だと思います。
編集部:移動のしやすさという意味ではどうですか?
斉藤:交通手段がとにかく豊富で便利ですね。MTR(地下鉄)もあるし、フェリーもあるし、トラムやタクシーも気軽に使える。現金払いが主流だったタクシーも、最近はICカードや二次元コード決済など電子決済に対応し、さらに利用しやすくなっています。
編集部:タクシーも気軽に乗れるんですね。
斉藤:日本だとちょっと気を使うような短距離でも、香港だと台数が多くて運転手さんも全然気にしないので、「ちょっと移動したいな」というときにすぐに拾えて乗れるんです。取材で動いていても、すごく効率がいい街だなと感じます。ただ、雨の日は捕まえにくかったり、九龍と香港島をまたぐ移動を断られることもあるので注意が必要です。配車アプリなども使い分けると便利ですね。
編集部:フォトグラファーとしても魅力的な街なんですね。
斉藤:街の中にいろんな要素が詰まっているので、被写体に困ることがないんです。キラキラした都会の風景もあれば、昔ながらの建物やローカルな街並みもあって、そのコントラストもおもしろいんですよね。
編集部:なるほど。
斉藤:コンパクトなエリアにいろんな表情が詰まっているので、短い日数でもすごく濃い体験ができる。そこが、香港最大の魅力です。
斉藤流「香港3泊4日」の旅プランを公開! 私的必訪スポットはココ
(写真提供:香港政府観光局)
チェックイン後はすぐ街へ。
ネイザン・ロード(彌敦道)を散策
ナイトマーケット(女人街、男人街)を散策
シンフォニー・オブ・ライツ(A Symphony of Lights)を鑑賞
編集部:到着した日は、まずどんなふうに過ごしますか?
斉藤:ホテルにチェックインしたら、すぐ街に出ますね。フライト時間もそれほど長くなく(目安:4~5時間)、香港はコンパクトなので、到着したその日から動けるのがいいところです。
編集部:最初はどのあたりを歩くのがおすすめですか?
斉藤:九龍側に泊まって、「ネイザン・ロード」とその周辺を歩くのがいいと思います。「ネイザン・ロード」に突き出した看板はめっきり減りましたが、九龍の目抜き通りらしいエネルギーは健在です。“香港に来たな”という感じでテンションが上がります。
編集部:九龍なら2大ナイトマーケットにも行けますね。
斉藤:「女人街」や「男人街」あたりをぶらぶら歩くだけでもおもしろいです。ローカルな空気感や人の流れを感じられるので、写真を撮るのにもいい場所ですね。
編集部:夜はやっぱり九龍の南端、「ヴィクトリア・ハーバー」へ?
斉藤:はい。「シンフォニー・オブ・ライツ」を見て、香港らしい夜景を楽しみたいですね。初日なので無理はせず、街の雰囲気をつかむくらいがおすすめです。
上環~中環(ションワン~セントラル)を散策
半路咖啡(バンロウカーフェイ)で休憩
蘭桂坊(ランカイフィン)でハッピーアワー
夜はテイクアウトで部屋ごはん。
編集部:2日目は香港島に移動するんですね。
斉藤:2泊目以降は香港島に泊まって、香港島をじっくり歩くのがおすすめです。九龍とはまた雰囲気が違っておもしろいですよ。3泊なら荷物も少ないでしょうし、MTRでもタクシーでも簡単に移動できますしね。ホテルに荷物を預けたら、すぐ街歩きへ。
編集部:具体的にはどのあたりを回りますか?
斉藤:「上環」や「中環」エリアが好きで、必ず立ち寄ります。坂道が多くて高低差があるので、歩いているだけで景色がどんどん変わっていくんです。
編集部:写真を撮るのにもよさそうですね。
斉藤:トラムが走っていたり、古い建物と新しいビルが混ざっていたりして、被写体がすごく豊富なんです。歩きながら気になったところで立ち止まって撮る、という感じで回るのがいいですね。
編集部:「上環」や「中環」は、おしゃれなカフェも多いですよね?
斉藤:「半路咖啡」のような話題のカフェで休憩するのもおすすめです。歩き回る旅なので、こういうポイントを挟むとちょうどいいんですよ。
編集部:バーも多いエリアなので、お酒休憩もできますね。
斉藤:日が傾き始めたらバーが集まる「蘭桂坊」エリアへ。ハッピーアワーでお得に、少しだけ飲んで、あとは麺でもご飯でも、飲茶でも、食べたいものをテイクアウトしてホテルでゆっくりします。2日目はしっかり動く日なので、夜は軽めに整えるイメージです。
蓮香樓(Lin Heung Lau)でブランチ
トラム(Tram)で写真散歩
船記(Ship Kee)で広東料理ディナー
バーでもう一杯飲んでホテルへ。
バー・レオーネ(Bar Leone)
コア(Coa)
バー・マインド念(Bar Mind念)
編集部:3日目は朝から動くんですね。
斉藤:この日は早起きして、タクシーで「ヴィクトリア・ピーク」へ。朝は人も少ないですし、空気も比較的クリアなので、景色をゆっくり楽しめます。ピークから、静かに日が昇り街が目覚める様子を撮影します。
編集部:朝の「ヴィクトリア・ピーク」は気持ちよさそうですね。
斉藤:週末の朝に行くと、地元の人たちが散歩したり、走ったりしていて、自分も香港在住者の気分を味わえます。
斉藤:約1時間で一周できる「ピーク・サークル・ウォーク」を歩いたり、「オールド・ピーク・ロード」を歩いて下山するのも、いい旅の思い出になると思います。街と自然が近くて、ヘルシーな暮らしができるのも香港らしい一面ですね。
編集部:そのあとはブランチへ?
斉藤:「蓮香樓」で飲茶をたくさん食べるために、「ヴィクトリア・ピーク」を歩いてお腹を減らす作戦です(笑)。店員さんがワゴンで点心を運んでくる、昔ながらのスタイルで、ローカルな雰囲気も味わえます。人気店で、店内は文字通り“カオス”(笑)。アトラクションに乗るような感覚で楽しんでみてください。ひとりやふたりなら、行列をスキップして相席で座らせてくれるのも、うれしいポイントです。
編集部:日中はまた街歩きですか?
斉藤:ホテルで少し休憩したら、街歩きを再開。トラムに乗りながら、のんびり香港島を巡ります。車窓からの眺めを撮ったり、下車してトラムと風景を撮ったり。移動そのものも楽しめるのが香港のいいところです。
編集部:今夜はしっかりレストランでディナーですね。
斉藤:ひと晩くらいは「船記」みたいな人気の広東料理店で、ちゃんと食事を楽しみたいですね。動き回る旅のなかで、こういう“ご褒美ごはん”を入れるとメリハリがつきます。「船記」のようにオンライン予約ができる店も増えているので、活用したいですね。
編集部:そのあとはバーへ。
斉藤:『Asia’s 50 Best Bars』常連の「バー・レオーネ」や「コア」、オープン間もなく注目を集める「Bar Mind念」など、素敵なバーも多いので、最後にもう一杯飲んでホテルへ。3日目はしっかり動いて、しっかり楽しむ一日にしたいですね。
ブックアジン(Bookazine)で雑貨探し
ウェルカム(Wellcome / 惠康)で食料品をチェック
編集部:最終日はおみやげ探しですね。
斉藤:フライトが午後発のことが多いので、午前中にホテル周辺でさっと買い物するイメージです。
編集部:どんなものを買うことが多いですか?
斉藤:香港らしい雑貨なら「ブックアジン」がおすすめです。英語書籍を扱うチェーン書店で、なかでも中環のショッピングセンター「ランドマーク」内の店舗は香港みやげが充実しています。トラムやタクシー、飲茶など香港モチーフの雑貨が揃います。
編集部:食べもの系のおみやげはどうですか?
斉藤:香港の定番スーパーマーケットの「ウェルカム」に行くことが多いですね。調味料やインスタント麺など、まとめ買いでお得に購入でき、ローカルの味を気軽に持ち帰れるのでおすすめです。
編集部:最後まで“香港らしさ”を楽しめますね。
斉藤:3泊で時間が限られていても、最後まで街を楽しめるのが香港の大きな魅力です。
街を「歩いて、食べて、撮る」のが私のスタイル
編集部:斉藤さんの旅って、すごくアクティブな印象があります。
斉藤:海外旅行に行き始めたのがだいぶ大人になってからなので、見たいものがまだまだたくさんある、という感じなんですよね。旅先もリゾート地より、街を選んでしまいがちです(笑)。基本的にプライベートの旅でもカメラを持って街を動き回るスタイルなので、「歩く→食べる→撮る」をずっと繰り返している感じです。
編集部:香港だと特に歩きたくなりそうですね。
斉藤:「上環」や「中環」あたりは坂道も多いですし、ちょっと歩くだけで景色がどんどん変わるので、自然と歩く距離も増えます。旅では1日2万歩の日も珍しくありません。日本でも運動はしているので、旅先でもその習慣を崩さずに、トレッキングしたり街歩きをしたり、運動も含めて楽しむようにしています。
編集部:食べることや飲むことも旅の大きな楽しみですよね。
斉藤:大好きですね(笑)。取材者としてはお店の開拓も大事なんですけど、スーパーに行って地元の食材やお酒を買うのも好きなんです。キッチン付きの宿に泊まって、自炊しながら旅するのが自分のスタイルですね。
編集部:いわゆる“自炊トラベラー”ですね。
斉藤:料理も好きなので、取材のときでも朝と夜は自炊することが多いです。昼は取材先でいろいろ食べるので、自炊で調整しながら体調管理もできるのがいいところです。
編集部:おみやげの選び方にも、そのスタイルが出ていそうです。
斉藤:まさにそうで、食料品とか器とか、酒器みたいなものを買うことが多いですね。骨董屋さんをのぞいて、気に入った器があるとつい買ってしまいます。
編集部:けっこう大きいものでも買うんですか?
斉藤:買います(笑)。大きなお皿でも、気に入ったら洋服でぐるぐる巻いて手荷物にしてでも持って帰ります。家に帰って、そういう戦利品が並んでいるのを見るのが楽しいんですよ。
編集部:そんな斉藤さんにとって、香港はどんな存在ですか?
斉藤:実は、初めて海外取材で訪れたのが香港なんです。そのときに一緒に行ったクライアントの方に言われた言葉が、ずっと印象に残っていて。
編集部:どんな言葉だったんですか?
斉藤:「海外は仕事で行くからおもしろい」って言われたんです。そのときはピンと来ていなかったんですけど、今はいろんな国に取材で行くたびに、その意味を実感しています。
編集部:具体的にはどんなところで感じますか?
斉藤:取材だからこそ出会える人がいて、聞ける話があって、見られる風景があるんですよね。ただ観光で行くだけでは見えないものに触れられるのが、取材旅の一番おもしろいところだと思っています。
カメラにさっと被せられる防水ポーチを用意
●機材:広角レンズ
高層ビルや看板、見上げる構図が多い香港に最適
街の密度や迫力をダイナミックに表現できる
●足元:トレランシューズ
雨や坂道でも滑りにくく、長時間歩ける
取材で街を動き回りながら、食べて、撮って、また歩く。そんなリズムで香港を楽しむ斉藤さん。仕事で訪れているからこそ出会える人や風景に触れながら、自分の興味のままに時間を使っていました。プロが語る旅の裏側には、そんな“動き続ける時間”が詰まっていました。
ガイドブックの“行間”にあるようなお話、いかがでしたか? さて、次はどの街のガイドブックの“中の人”に会いに行きましょうか。お楽しみに!
▼連載1回目、パリの旅はこちらから
★斉藤さんも参加! ガイドブック『せかたび香港・マカオ』が発売中!
Text:山田裕子(editorial team Flone)
Photo:斉藤純平




