江戸時代にタイムトリップした気分で、城下町をぶらり。世界遺産を巡る、山口・萩の“時をかけるレトロ旅”【エモい!×産業遺産】
幕末の偉人たちが生まれ育った町並みが今も残る山口県萩市。市街地には「萩城下町」や「松下村塾」、郊外には「萩反射炉」「恵美須ヶ鼻造船所跡」などがあり、それら世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産に登録されているスポットは、まるで江戸時代へ迷い込んだかのような当時のままの姿をとどめています。フォトグラファーの6151さんと一緒に、産業遺産を巡って萩の町でお散歩を楽しみましょう。
- 花崗岩の白い石垣が美しい「萩城跡指月公園」からレトロ旅スタート
- ★江戸時代のまま。維新の志士が育った「萩城下町」をお散歩
- 堀内鍵曲
- 菊屋横町
- 藩校跡地に開館。松陰先生のことばを受け継ぐ元小学校「萩・明倫学舎」
- レストラン 萩暦
- 萩城下の港町・浜崎に残る町屋「舸子176」の喫茶でティータイム
- 百茶一芯
- ★石積みの防波堤に守られた幕末の貴重な遺構「恵美須ヶ鼻造船所跡」
- ★安山岩と煉瓦積みの無骨な煙突が萩藩士の努力を物語る「萩反射炉」
- ★明治維新で活躍した逸材を多数輩出した小さな学び舎「松下村塾」
- もっとじっくり巡ろう! 萩市の世界遺産
- 【東京都】入館無料! 産業遺産を旅するなら、まずは「産業遺産情報センター」へ
START【東萩駅】
バスで約10分
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花崗岩の白い石垣が美しい「萩城跡指月公園」からレトロ旅スタート

慶長9年(1604)、毛利輝元によって指月山に築かれた萩城。ふもとには平城、山頂に山城があり、内堀に面した天守台には五層の天守が立っていたそうですが、明治7年(1874)に建物はすべて解体されました。

現在は、指月山から切り出した花崗岩を用いた石垣と堀の一部分が往時の姿を残し、「萩城跡指月公園(はぎじょうあとしづきこうえん)」として整備されています。この萩城を中心に築かれた「萩城下町」一帯が、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産に登録されています。
■萩城跡指月公園(はぎじょうあとしづきこうえん)
住所:山口県萩市堀内1-1
TEL:0838-25-1826(指月公園料金所)
営業時間:8時~18時30分(11~2月は8時30分~16時30分、3月は8時30分~18時)
定休日:無休
料金:入場料 大人220円、小・中学生100円
徒歩で約15分
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★江戸時代のまま。維新の志士が育った「萩城下町」をお散歩

✓堀内鍵曲
日本海に突き出た指月山ふもとの萩城を拠点に、橋本川と松本川に囲まれた三角州に築かれた「萩城下町(はぎじょうかまち)」。長州藩の政治の中心であった城跡、重臣屋敷が並ぶ旧上級武家地、商人たちが暮らした旧町人地と、当時の役割を伝える町割がそのままに残っていて、産業の近代化に挑戦した人材を育てた地域社会の様子をいまに伝える貴重な遺産として、世界遺産に登録されました。

旧上級武家地にある「堀内鍵曲(ほりうちかいまがり)」は、左右を高い土塀で囲み、鍵の手のように道が直角に曲がった独特な道筋の通りで、見通しがきかず行き止まりのように見え、城下に侵入した敵を迷わせるためにつくられたのだそう。
石垣と土塀が続く鍵曲の道沿いに、幕末以降、解体された武家屋敷跡地で盛んに栽培されるようになった夏みかんの木が茂り、萩らしい景観を生み出しています。

✓菊屋横町
外堀を越えた外側は、碁盤の目のように区画され、中・下級武士の武家屋敷や町屋が軒を連ねていました。御成道沿いには藩の御用商人だった菊屋、江戸屋、伊勢屋という商家が並んでおり、その商家の脇を通る横町にはそれぞれの名が付いています。
3本の横町のなかでも漆喰を盛り上げたなまこ壁が美しい「菊屋横町(きくやよこちょう)」は、「日本の道100選」にも選ばれている美観スポット。道幅3m、長さ500mほどの細い通りながら、幕末の風雲児とよばれた高杉晋作と第26代総理大臣を務めた田中義一の誕生地があり、歴史に名を残す偉人を二人も輩出した場所でもあります。
■萩城下町(はぎじょうかまち)
住所:山口県萩市堀内、呉服町、南古萩町
「堀内鍵曲」萩市堀内(口羽家住宅近く)、「菊屋横町」萩市呉服町1丁目付近
TEL:0838-25-3380(萩市世界文化遺産室)
営業時間:見学自由
定休日:見学自由
徒歩で約15分
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藩校跡地に開館。松陰先生のことばを受け継ぐ元小学校「萩・明倫学舎」

天保年間、萩藩の人材育成を目的に設立され、吉田松陰が教鞭を執っていたこともある藩校「明倫館(めいりんかん)」。その跡地に、明治18年(1885)に開校したのが「明倫小学校」です。
昭和10年(1935)に建てられ、平成26年(2014)まで使用されていた4棟からなる木造の旧小学校舎は、教室や廊下などの姿は従来のままに、レストランやショップ、「世界遺産ビジターセンター」、「幕末ミュージアム」などを備えた観光施設「萩・明倫学舎(はぎ めいりんがくしゃ)」として生まれ変わりました。

校舎内は天井が高く、「旧教室」内は大きな窓から太陽の光がたっぷりと差し込み室内を明るく照らします。小学校の児童は新校舎に変わった今でも変わらず、毎朝「松陰先生のことば」を朗唱しているそうで、この師の教えが学びの中心にあることで、この地から多くの優秀な人材が育っていったのだろうと思われます。

館内には「世界遺産ビジターセンター」もあり、映像やパネルで萩市にある5つの構成資産について紹介しています。吉田松陰主宰の「松下村塾」のセットに授業の様子を再現したアニメーションが流れる展示もあるので、ここを見学してから実際の「松下村塾」に行くとより理解が深まります。
■萩・明倫学舎(はぎ めいりんがくしゃ)
住所:山口県萩市江向602
TEL:0838-21-0304
営業時間:9~17時
定休日:2月第1火曜及びその翌日
料金:2号館「世界遺産ビジターセンター・幕末ミュージアム」入館料 大人300円、高校生200円、小・中学生100円
✓レストラン 萩暦
お昼は館内にある「レストラン 萩暦(れすとらん はぎごよみ)」へ。海の幸はもちろん、野菜や米、調味料まで萩の食材にこだわったまさに地産地消のお店で、「萩暦特選ランチセット」は丁寧に料理された6~7種類のおかずとその日に港に揚がった地魚のお刺身が味わえます。たくさんの小鉢を籠に盛り付けた見た目も美しく、萩の豊かな食文化が満喫できるランチタイムになります。
■レストラン 萩暦(れすとらん はぎごよみ)
住所:山口県萩市江向602 萩・明倫学舎内
TEL:0838-25-8543
営業時間:11~15時(ディナーは5名以上の予約のみ)
定休日:火曜、第3月曜
バスで約10分
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萩城下の港町・浜崎に残る町屋「舸子176」の喫茶でティータイム

江戸時代から昭和にかけて建てられた町屋や土蔵などが138棟も残る港町・浜崎。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されているこのエリアを訪れる大きな魅力のひとつとして、2022年にオープンしたのが「舸子176(かこいちななろく)」です。
海産物問屋として使われていた築200年以上の町屋をリノベーションした懐かしさと凛とした美しさが同居する空間に、萩の食材を使ったフレンチの「六気(りっき)」と、和菓子とお茶の「百茶一芯(ひゃくちゃいっしん)」、器のギャラリー「舸子の蔵(かしのくら)」が共存する複合施設です。

✓百茶一芯
「百茶一芯」は、お店で手作りした上生菓子や台湾カステラなどの菓子と一緒に、自然栽培の日本茶や台湾茶などが味わえるカフェ。素材やデザインにこだわって集められた器を丁寧に扱いながら、目の前でお茶をいれてくれる姿に思わず見入ってしまいます。窓からの柔らかな光が届く店内に、お茶の清々しい香りがただよい、ゆったりと穏やかな時間が流れていきます。
■舸子176(かこいちななろく)
住所:山口県萩市浜崎町176
TEL:0838-21-5210
営業時間:11時30分~16時(15時30分LO)
定休日:月・火曜
バスと徒歩で約20分
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★石積みの防波堤に守られた幕末の貴重な遺構「恵美須ヶ鼻造船所跡」

漁船が停泊する小畑浦の一角にある「恵美須ヶ鼻造船所跡(えびすがはなぞうせんじょあと)」。発掘調査の後、地中へと埋め戻されたため、現在はその遺構を実際に目にすることはできませんが、ここは幕末に萩藩が木造の西洋式帆船を建造した造船所の跡です。

嘉永6年(1853)のペリー来航後、海防強化のため幕府に大船の建造を命じられた萩藩は、ここでロシアの技術を用いた「丙辰丸(へいしんまる)」と、オランダの技術を用いた「庚申丸(こうしんまる)」の2隻の木造帆船を建造しました。ひとつの造船所で異なる国の技術を使って造船が行われた場所はほかになく、日本の洋式造船技術導入期の様子を伝える貴重な遺構として保存されています。
造船所を海から守るために築かれている安山岩を積んだ防波堤は、当時の資料に見られる「今浦波戸(いまうらはど)」ではないかと考えられていて、この地で唯一、造船所時代の姿を感じさせてくれます。
■恵美須ヶ鼻造船所跡(えびすがはなぞうせんじょあと)
住所:山口県萩市椿東5159-14
TEL: 0838-25-3380(萩市世界文化遺産室)
営業時間:見学自由 ※無料ガイドは9~17時
定休日:見学自由
徒歩で約10分
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★安山岩と煉瓦積みの無骨な煙突が萩藩士の努力を物語る「萩反射炉」

1860年代に起こった下関戦争で、欧米列強による砲撃の威力を思い知った萩藩。自藩での鉄製大砲鋳造のために試行錯誤して建造したのが「萩反射炉(はぎはんしゃろ)」です。
当時、すでに反射炉の操業に成功していた佐賀藩へ大工の棟梁を派遣しましたが、持ち帰ることができたのは反射炉のスケッチのみ。このスケッチをもとに建設されたのが「萩反射炉」だそうです。

手元にあるのはスケッチのみのため、煙突の高さや使われている材料などが不明瞭だったことから、近くの笠山から切り出した安山岩を積み漆喰で覆い、頭頂部だけ萩焼の煉瓦を積んで、高さ約10.5mの煙突をつくりました。
実際には技術、費用の両面から反射炉の建設は断念せざるを得ず、鋳造の成功には至らなかったそうですが、今も堂々とした姿でそびえる2本の煙突は、自分たちの力でなんとか西洋技術を実現しようと挑戦した萩藩士たちの努力の結晶といえます。
■萩反射炉(はぎはんしゃろ)
住所:山口県萩市椿東4897-7
TEL: 0838-25-3380(萩市世界文化遺産室)
営業時間:見学自由 ※無料ガイドは9~17時
定休日:見学自由
バスで約20分
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★明治維新で活躍した逸材を多数輩出した小さな学び舎「松下村塾」

明治維新の志士たちに大きな影響を与えた吉田松陰。25歳の時に伊豆下田でアメリカ艦船に乗り込み海外渡航を試みたことで投獄され、のちに幽囚された萩の実家で門人へ指導を行ったのが、「松下村塾(しょうかそんじゅく)」です。
この私塾は、身分や階級にとらわれず、志のある少年たちを塾生として受け入れていましたが、明治維新の原動力となる高杉晋作、伊藤博文、山縣有朋といった、多くの逸材を育てました。

安政4年(1857)に開かれたという木造平屋の学び舎は、当初8畳の一室のみで、翌年に門人の手で10畳半が増築されたそうですが、幕末から明治における志士たちを数多く輩出した場所であるとは信じ難いほど、小さく、簡素なたたずまいです。
さらに、この地で塾生を受け入れていたのはわずか1年余りの期間とのこと。のちの世に与えた影響を考えると、吉田松陰の偉大さを痛感せずにはいられません。

明治23年(1890)、「松下村塾」の西側に吉田松陰の御霊を祭る祠が建立され、これがのちの明治40年(1907)に松陰神社として創建されました。そのため、「松下村塾」と隣接する「吉田松陰幽囚ノ旧宅」は現在、松陰神社の境内で守られるように大切に保存されています。
■松下村塾(しょうかそんじゅく)
住所:山口県萩市椿東1537 松陰神社内
TEL:0838-22-4643(松陰神社社務所)
営業時間:外観のみ見学自由
定休日:外観のみ見学自由
バスで約35分
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GOAL【萩駅】
✓もっとじっくり巡ろう! 萩市の世界遺産

今回、6151さんが訪れた観光スポットのほかに、山口県萩市には、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産がもう1つ。江戸時代中期から幕末まで、日本古来の方法で鉄をつくっていた「大板山たたら製鉄遺跡」です。展示休憩施設「大板山たたら館」も併設していて、当時の製鉄方法を学ぶことができます。ぜひあわせて訪れてみてください!
\ 詳しくはこちらの記事を✓ /
✓【東京都】入館無料! 産業遺産を旅するなら、まずは「産業遺産情報センター」へ

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住所:東京都新宿区若松町19-1 総務省第二庁舎別館
TEL:0120-973-310
営業時間:10~17時(最終入館は16時30分)
定休日:土・日曜、祝日
料金:入館無料
※公式サイトから要予約
Photo:6151
Text:山下あつこ(アトリエshiRo)
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●掲載の内容は取材時点の情報に基づきます。変更される場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。
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