旧グラバー住宅から軍艦島まで! 幕末から昭和の世界遺産に出合える、フォトジェニックな長崎の“時をかけるレトロ旅”【エモい!×産業遺産】
日本の近代産業化に大きな影響を与えた人物トーマス・ブレーク・グラバーが暮らした洋館「旧グラバー住宅」から、ドラマの舞台にもなった「端島炭坑(軍艦島)」、そして今も働き続ける造船所の関連施設まで。長崎市には世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」に含まれる観光スポットがいっぱいです。物語性のある世界観で風景を切り取るフォトグラファーの6151さんが、長崎の産業遺産からエモい瞬間を写真に収めます。
START【長崎駅】
路面電車で約20分
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★現存する日本最古の木造洋風建築「旧グラバー住宅」から見渡す美しい長崎港の大パノラマ

長崎港の三方をぐるりと山が囲み、海と坂の織りなす景色が美しい長崎の街。南山手の高台に位置する「グラバー園(ぐらばーえん)」は、この地に建てられた「旧グラバー住宅(きゅうぐらばーじゅうたく)」と市内に点在していた洋風建築を移築した、長崎を代表する観光スポットのひとつです。
異国情緒が街のあちこちにただよう長崎市内ですが、この園内ではより深く西洋の香りを感じることができます。

「グラバー園」の中心施設で、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産になっている「旧グラバー住宅」は、スコットランド出身の貿易商人、トーマス・ブレーク・グラバーとその家族が暮らした場所。広いベランダを持つバンガロー様式に、日本瓦や漆喰など日本の建築技術で建てられた現存する国内最古の木造洋風建築です。
グラバーは日本茶、樟脳、材木など日本の特産品の輸出のほか、船や大砲、鉄砲などの輸入貿易を行い、幕末には諸藩と交流。明治維新後も、小菅修船場の建設や高島炭坑の開発に携わるなど、日本の近代産業の発展に大きく貢献しました。「旧グラバー住宅」内の食堂には、「長州ファイブ」の一人であり、初代内閣総理大臣でもある伊藤博文の写真も飾られています。

「旧グラバー住宅」は、アーチの連続するベランダや屋根に瓦を載せたその建物自体の美しさが魅力的ですが、高台から見渡す稲佐山と長崎港のパノラマもみごとです。グラバーもここから港を行き交う船を眺めていたのだろうと想像が膨らみます。
対岸に見える、薄緑色の大きなクレーンは、同じく世界遺産に含まれる「三菱長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン」。英国製の日本で最初に導入された電動クレーンで、日本の造船業の形成期を代表する建造物です。

園内には、「旧リンガー住宅」や「旧オルト住宅」などの洋館のほか、手入れの行き届いた花壇や薔薇の庭園、モザイクタイルなどのみどころが多く、園内を歩きながら長崎らしい異国のムードを満喫できます。
■グラバー園(ぐらばーえん)
住所:長崎県長崎市南山手町8-1
TEL:095-822-8223
営業時間:8~18時(最終入園は閉園の20分前まで)※夜間開園時は異なる
定休日:無休
料金:入園料 2026年3月31日まで一般620円、高校生310円、小・中学生180円/2026年4月1日より一般1300円、子ども(小・中・高生)650円
バスで約12分
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★海中へと続くレールと日本最古の煉瓦小屋が絵になる「小菅修船場跡」

南山手の南側に位置する小さな入江に設けられた「小菅修船場跡(こすげしゅうせんばあと)」。ここは薩摩藩とトーマス・グラバーが幕府に許可を得て建設に着手し、明治元年(1868)に完成した船の修理施設です。かつては幕府の領地=天領地で、グラバーの住まいからも近かったことから、この小菅に日本で最初の洋式船の修理施設が造られました。

この施設の大きな特徴は、蒸気動力による曳揚げ装置を備えていて、大型の洋式船をドックに曳揚げて修理を行うことができること。英国から輸入した曳揚げ機を収めた煉瓦造りの曳揚げ小屋は、日本で最も古い煉瓦建築だそうです。

海中へと続く約174mの3本のレールは、左右に2本と、真ん中に滑り止めの歯形がついたものが1本あり、かつてこのレールの上を通っていた船をのせる台の形状がそろばんのように見えたことから、”そろばんドック”とよばれていたとか。竣工から50年間で約1000隻もの修理が行われたそうですが、今は静かに波の打ち寄せる音だけが響きます。
■小菅修船場跡(こすげしゅうせんばあと)
住所:長崎県長崎市小菅町
TEL:095-829-1152(長崎市観光政策課)
営業時間:見学自由
定休日:見学自由
※曳揚げ小屋の見学と無料ガイドは、土・日曜、祝日の9~16時のみ
バスで約12分
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「ツル茶ん」のトルコライスと長崎風ミルクセーキでちょっとご馳走ランチ

長崎の繁華街・浜町アーケードを抜けてすぐの油屋町にある「ツル茶ん(つるちゃん)」は、大正14年(1925)に創業した老舗の喫茶店です。現オーナーの川村隆男さんは3代目。移りゆく時代にあわせながら、長崎の人々に親しまれてきたお店の味と空間を守っています。
気になる店名「ツル茶ん」は、初代が“港の形が鶴の形をした長崎の街に初めて生まれた喫茶店(きっちゃてん※)”から名付けたそうで、一度耳にしたら忘れられないユニークさ。3代目の川村さんも博識さとユーモアを持ち合わせた方で、多くの人に愛される独特のセンスは脈々と受け継がれているようです。
※きっちゃてん:「喫茶店」の過去の呼称
この店に来たら必ずオーダーして欲しいのが「昔懐かしトルコライス」と「元祖長崎風ミルクセーキ」。長崎のご当地メニューとして80年ほど前から市内の喫茶店で作られるようになったというトルコライスは「ツル茶ん」でも人気のメニュー。
川村さんが「みんなが大好きなものがたっぷりのった”ちょっとご馳走”なんですよ」と話すように、ピラフ、ナポリタン、ポークカツにカレーソースを盛り付けた一皿は、運ばれてきた瞬間に大きく目を見張るほどのボリュームがありながら、やさしい味わいでペロリと食べられてしまいます。

創業間もないころにこの店で誕生した「元祖長崎風ミルクセーキ」は、全卵、砂糖、練乳とかき氷を混ぜて練ったシャーベット状のミルクセーキで、暑い長崎で涼を得られるようにと考案されたそう。オーダーが入ってから撹拌するという作りたての長崎風ミルクセーキは、風味豊かで、時代を超えてもハイカラさを感じられる味です。
■ツル茶ん(つるちゃん)
住所:長崎県長崎市油屋町2-47
TEL:095-824-2679
営業時間:10~21時LO(15~17時は喫茶タイム)
定休日:水曜
路面電車で約20分
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上陸前に軍艦島のすみずみまで知り尽くせる「軍艦島デジタルミュージアム」

朽ちた建造物群が海にぽっかりと浮かぶ、その独特の姿が有名な軍艦島。軍艦島は通称で、正式には良質な石炭が採掘されたことから本格的な採炭事業が行われていた「端島炭坑」といい、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産になっています。
「軍艦島デジタルミュージアム(ぐんかんじまでじたるみゅーじあむ)」は、長崎港から船で約45分の海上に浮かぶ軍艦島を、写真や模型、VRや立体シアターなど、さまざまなコンテンツで紹介する施設。軍艦島の全容から、かつての島内での暮らし、現在は立ち入り禁止になっているエリアがどうなっているかまで、島のことがなんでもわかる充実した展示が魅力です。

徒歩で1周15~20分ほどの島に、最盛期には約5300もの人が住んでいたそうで、世界一の人口密度だったとか。まだ長崎の民家が木造だった時代に、島内には鉄筋コンクリートの高層アパートが立ち並び、限られた広さの住まいながら、当時”三種の神器”とよばれた家電はすべて手に入るほどの豊かな暮らしを送っていたそうです。
館内のガイドさんのなかには軍艦島出身の方がいて、当時の島での暮らしを懐かしく、楽しそうに聞かせてくれます。現在は建造物が壊れ、荒廃してしまった島に、賑やかで温かな人の営みがあったことを知ると、島に上陸した時に見えてくる景色が違ってきます。

デジタルミュージアムの名の通り、VRやプロジェクションマッピング、4Kパネル5面体の立体シアターなど、最新デジタル技術を使った展示が充実していて、体感しながら軍艦島を知ることができます。さまざまな角度から島を見られるので、上陸ツアーでは見ることができない立入禁止区域についても、まるでその場にいるかのような臨場感を味わうことができますよ!
この後に紹介する「軍艦島コンシェルジュ」のクルーズにはミュージアムの入館料が含まれています。ミュージアムのみの利用ももちろん可能です。
■軍艦島デジタルミュージアム
(ぐんかんじまでじたるみゅーじあむ)
住所:長崎県長崎市松が枝町5-6
TEL:095-895-5000
営業時間:9~17時(最終入館16時30分)
定休日:不定休
料金:入館料 大人1800円、中・高生1300円、小学生800円、幼児500円(3歳未満無料)
徒歩すぐ
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★世界遺産の島へいざ上陸! クルーズ船で「端島炭坑(軍艦島)」へ

今回は「軍艦島コンシェルジュ」のクルーズを利用して、軍艦島上陸ツアーへ参加します。「軍艦島デジタルミュージアム」を見学後、乗船時間になったら歩いてすぐの常盤桟橋へと案内されます。港から軍艦島までは片道45分ほど。天候によっては出航ができないこともありますし、出航ができたとしても条件が合わない場合は島への上陸ができないこともあるので、あらかじめ心構えをしておきましょう。

港を出てから30分ほどすると、軍艦島が見えてきました。船はまず陸からは見えない島の裏側へと回ってくれます。近くで見る島は、想像よりも小さく、そこに大きな鉄筋コンクリートの建物がいくつもそびえているのは特殊な景色です。
少し島から離れて島の全容を見渡せる位置から眺めると、まさに軍艦を思わせる姿。島の中央が岩礁になっていて、岩礁沿いやその周りを埋め立てて建物が建てられており、その姿が軍艦「土佐」に似ていることがその名の由来だそう。「端島炭坑」は3交代制で24時間稼働していたため、夜も電気が灯っていて、その様子はまるで未来都市のようだったといいます。

いよいよ軍艦島に上陸です。現在、島で上陸ができるのは、炭坑の竪坑や事務所などがあった島の南側のみ。北側にあった小・中学校や高層アパート群は、崩壊の恐れがあるため現在は立ち入りが禁止されています。

昭和49年(1974)で「端島炭坑」は閉山となり、住民は島との別れを惜しみながらこの地を去ったそうです。レンガ造りの第3竪坑巻座跡や、竪坑へと続く階段は、多くの坑夫がここで真っ黒になりながら石炭を採掘して暮らした日々を伝えてくれます。
現在は朽ち果てたこのアパートの間に続く道には、かつては多くの人通りがあり、映画館やパチンコホールなどの娯楽施設、地下にはデパートなどもあり、活気に満ちあふれた日常がここにはあったのだそうです。
■軍艦島コンシェルジュ(ぐんかんじまこんしぇるじゅ)
住所:長崎県長崎市松が枝町5-6
TEL: 095-895-9300
営業時間:10時30分発、13時40分発の1日2便※集合時間などは要確認
定休日: 悪天候時は欠航
料金: スタンダード(1階自由席)大人5500円、中高生4500円、小学生3000円、未就学児2000円ほか、席種・特定日により変動あり。※上陸料を別途支払い
バスで約1時間
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軍艦島を眺めながら、温泉も楽しめるリゾートホテル「Ocean Resort Nomon長崎」

長崎市街地から車で30分の半島、野母崎。ここにある「Ocean Resort Nomon長崎(おーしゃん りぞーと のもん ながさき)」はすべての客室から軍艦島を望むことができるリゾートホテルです。2001年に発見された炭酸濃度1000ppm以上の天然高濃度炭酸泉が楽しめる入浴施設&ホテルとしてオープンしましたが、軍艦島が世界遺産に登録されてからは、軍艦島が見える宿としても注目されています。

客室は靴を脱いで上がるタイプのツインルームがメイン。各部屋にテラスがあり、五島灘の沖合に浮かぶ軍艦島がいつでも眺められます。軍艦島のそばにはいくつかほかの島もあり、軍艦島の人工的な姿が特別であることが際立って見えます。
天然温泉が魅力的なこの宿を訪れる人のもうひとつのお楽しみは、目の前の海で獲れた魚介を使った料理です。ディナーは創作イタリアンのコース仕立てですが、メニューのなかにはお刺身の盛り合わせも組み込まれていて、獲れたての新鮮な海の幸を味わうことができます。

ホテルでは自転車のレンタルも行っているので海沿いの丘陵地を快適にサイクリングしたり、近くにある漁港で釣りを楽しんだりとアクティビティも揃っています。軍艦島観光で長崎を訪れた際に、ひと足伸ばして野母崎でのんびりと海辺のリゾートを楽しんでみませんか。

■Ocean Resort Nomon長崎
(おーしゃん りぞーと のもん ながさき)
住所:長崎県長崎市野母町692-1
TEL: 095-893-1133
料金: 1泊2食付1万5840円~(ツイン2名1室利用)
バスで約1時間10分
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GOAL【長崎駅】
✓もっとじっくり巡ろう! 長崎県の世界遺産

今回、6151さんが訪れた観光スポットのほかに、長崎県には、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産は5つ。「三菱長崎造船所 第三船渠」や「三菱長崎造船所 占勝閣」などの非公開施設もありますが、そのうちの「三菱長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン」は「旧グラバー住宅」や軍艦島上陸・周遊クルーズの船上などからも望むことができます。また「高島炭坑」は竪坑跡などの見学も可能。ぜひあわせて訪れてみて!
\ 詳しくはこちらの記事を✓ /
【東京都】入館無料! 産業遺産を旅するなら、まずは「産業遺産情報センター」へ

産業遺産に興味が出てきた、行ってみたいと思ったら、都営大江戸線若松河田駅から徒歩約5分にある、入館無料の「産業遺産情報センター」で情報収集するのがおすすめです。
「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の23の構成資産が、ここ1カ所で分かり、たくさんの写真パネルや映像、クイズコーナーなどで楽しく学べます。旅の計画や現地でも大活躍する、アクセスガイドマップも入手できますよ。
「産業遺産情報センター」は公式サイトから日時指定の予約制(2026年3月3日現在)。1日最大5枠ある時間帯と、ガイド付きorガイドなしを選んで予約してみて。
■産業遺産情報センター(さんぎょういさんじょうほうせんたー)
住所:東京都新宿区若松町19-1 総務省第二庁舎別館
TEL:0120-973-310
営業時間:10~17時(最終入館は16時30分)
定休日:土・日曜、祝日
料金:入館無料
※公式サイトから要予約

Photo:6151
Text:山下あつこ(アトリエshiRo)
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